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関東の諸都市・地域を歩く


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#170 真鶴半島の風景 ~岩礁と潮騒、海を望む町並み~

 2020年2月11日、初春の穏やかな日射しに包まれた神奈川県・真鶴を訪れました。神奈川県の最南部、小田原市の西部から真鶴町、湯河原町にかけては、隣接する静岡県の熱海市も含め、急峻な山並みが海に迫る地形が連続し、道路や市街地は河川のつくるわずかな低地や、緩斜面を選んでつくられています。JR真鶴駅の周辺も、海に突き出す真鶴半島の付け根のなだらかな場所に立地しています。国道を渡って、中世の城柵跡を公園に整備した荒井城趾公園へとまずは進みました。

真鶴駅前

真鶴駅前の風景
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
荒井城趾公園

荒井城趾公園
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
真鶴俯瞰

県道より真鶴の町並みを見下ろす
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
熱海方面の眺望

県道より熱海方面を眺望
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
真鶴港

真鶴港の風景
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
貴船神社

貴船神社
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)

 駅周辺の市街地より高台にある公園は、椿など暖地性の照葉樹が中心の植生に覆われていて、植えられていた白梅や河津桜も花を開き、春へと進む季節感を感じさせます。豊かな竹林もさわやかな公園を出た後は、真鶴半島により沿うように張り付く住宅地の中を進む道路を東へと歩を進めます。眼下には真鶴港に向かって開けた傾斜面に発達した市街地が見て取れるようになり、そして鮮やかな濃紺の海が眼前に広がってきました。目を凝らすと、水平線ではなく相模湾岸の山並みや市街地のアウトラインが続いている様子が見え、ここが相模湾に着き出した半島であることを実感します。半島の脊梁を縫うように進む部分の県道739を歩いて行きますと、半島の南側の海への視界も利くようになっていきます。湯河原から熱海、伊豆半島へと続く稜線の先には、初島と大島、遠景には利島と思われる島影も見えます。穏やかな海原は、静かな冬の空そのままのきらめきを波間に秘めて、ゆっくりと揺らめいていました。

 県道から北側の海岸へ下りる道を進み、日本三船祭のひとつとされる例祭が著名な貴船神社の境内へと入っていきます。海岸からは急勾配の石段を上った中腹に境内があって、社殿は豊かな社叢を背に佇んでいました。その急な石段を下りますと、半島の中央付近を曲がって海岸沿いにとって返す形となる、先ほどまで歩いていた県道739号へとたどり着くこととなります。ここからは、琴ヶ浜と呼ばれる海岸に沿って設置されたテトラポットに守られるような歩道を歩き、岬方面へと軽やかな散策を進めていきます。そこは間近の海と、嵯峨差見湾を挟んだ対岸の遠景、そして右手に真鶴半島の豊かな照葉樹の森を見ながら、とても快い散歩が楽しめる園路となっていました。海岸沿いを進む部分が終わると、県道は急カーブを描きながら高度を上げて、木々の中へと続いていきます。真鶴岬の先端の三ツ石へは県道を逸れて町道へと針路を採ります。半島を包む木々の中には樹勢の大きい木本もあって、手つかずの暖地性の森が織りなす、鮮やかな森の緑を、木々の間から差し込む木漏れ日によっていっぱいに感じることができました。

琴ヶ浜

琴ヶ浜の風景
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
真鶴岬

真鶴岬から大島、利島、初島を望む
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
真鶴岬

真鶴岬、三ツ石
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
真鶴岬付近の森

真鶴岬付近の森
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
鵐の窟

鵐の窟
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
真鶴港の風景

真鶴港の風景
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)

 真鶴岬からは、トンボロによって岬と接続する三ツ石と、冬の日差しをたっぷりと浴びた大海原とを、美しく展望することができました。岬を通る県道から見えていた、初島や大島などの伊豆諸島の島々、熱海付近の伊豆半島へと連なる山並みなどもより間近になって、海と山とが豊かに作り出す自然の風景を堪能することができました。海岸まで下りていくこともできまして、岩がごろごろと転がる岩礁海岸となった海辺からは、三ツ石にしめ縄が架けられていることも見通せました。岬の近くの森の道路を戻り、真鶴港まで戻り、海岸沿いの道路を散策します。魚市場の近くには、鵐(しとど)の窟(いわや)の旧跡があります。岩壁に穿たれた自然の洞穴は、源頼朝が1180(治承4)年、石橋の戦いで主従7騎でここに落ち延びたという伝説があることで知られます。港に向かって開けた斜面には、漁港とその後背地らしい、家々や信仰を集める寺社が細い路地や石段を介して連なる家並みが穏やかに広がっていました。

 緩傾斜が連続する住宅地域を縫って、2つの小学校が統合された「まなづる小学校」の辺りを経て、真鶴町の北半分を占める岩地区へ。地区が面する小さな湾からは、真鶴道路の高架が海上を横切り様子を見て取ることができます。真鶴道路は海岸沿いをトンネルや高架で町域を貫通していまして、それは低地の少ないこの地域の地勢を象徴する風景であるように思われました。地区の鎮守である兒子神社を経て、裏手を登る石段や坂道を経て高台の集落へ進みますと、江戸城築城にも功のあった石工を顕彰する「石工先祖の碑」がありました。

小社のある風景

小さなお社(津島神社)のある風景
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
石段のある町並み

石段のある町並み
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)
真鶴港遠景

真鶴港遠景
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)


岩地区を貫通する真鶴道路
(真鶴町岩、2020.2.11撮影)
兒子神社

岩地区・兒子神社
(真鶴町岩、2020.2.11撮影)
石工先祖の碑

石工先祖の碑
(真鶴町真鶴、2020.2.11撮影)

 碑の前から階段を下りて出た町道を南へ進んで、真鶴駅へと戻りました。海と山とが間近に接することによって生み出される真鶴の風光は、空と海と大地とがそれぞれに輝き、響きあう風韻に満ちていました。


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