Japan Regional Explorerトップ > 地域文・近畿地方 > シリーズ京都を歩く・目次

シリーズ京都を歩く

第三段のページへ
第五段のページへ
1.東山散策
第四段 平安神宮、南禅寺から銀閣へ

冬の日は、午後2時を過ぎると、急速にか細くなっていきます。青蓮院を出た午後2時過ぎには、北から徐々に灰白色の雲が近づきつつあり、朱塗りの鳥居や社殿が一際鮮やかな平安神宮も、活気溢れる人の波とは対照的に、寒さが徐々に加わってきているような気がしました。

地下鉄東西線が潜る三条通の手前、粟田口になにやら黒で統一された立派な門があると思い、よくよく見ると、なんと京都市立粟田小学校の校門でした。ここから、三条を越え、まるで城のお堀のような琵琶湖疎水を越え、国立近代美術館や京都市美術館のある、岡崎界隈へ。鳥居、応天門とくぐると、一段高い(龍尾壇というそうですね)所に鎮座する大極殿のスケールは、圧巻ですね。手許のガイドブックによると、これでも日清戦争などの理由で大幅に規模が縮小された結果とのこと。ここを中心に開催されるのが、時代祭。ぜひ、観てみたいですね。

平安神宮

平安神宮
(2003.1.4撮影)
琵琶湖疎水インクライン

琵琶湖疎水インクライン
(2003.1.4撮影)

再び仁王門通に戻り、比叡の山をかすかに望む琵琶湖疎水に沿って、東へ。南禅寺前の交差点からは、かつて疎水を大津方面から遡上する船を引き上げた台車が走った軌道“インクライン”が望めました。南禅寺橋で疎水を渡り、ほどなくして、南禅寺の三門に至ります。2001年12月に紅葉の古都を訪れた時以来の訪問です。三門は、入母屋造りの茶色に落ち着いた色合いが奥ゆかしい、私も好きな造形の1つですね。紅葉とのコントラストの美が絶賛される三門ですが、冬枯れた空気の中にあっても松並木との調和もまたすばらしいと思いました。

南禅寺を過ぎ、白壁の美しい街路を歩きながら、北となりの永観堂へ。北から張り出した雲はこの頃までには空を覆い尽くし、永観堂の拝観時には、はらはらと雪が舞い始めていました。ここも鹿ケ谷に食い込むようにつくられた山麓の名刹で、山の緑との調和がうまくとられた、細やかな美しさの滲む庭園を眺めることができます。また、このお寺で著名なみどころが、本尊の「見返りの阿弥陀」です。正面からではなく、右横から阿弥陀様のお顔を拝観します。一緒に拝観していた女性グループは、口々に慈悲に満ちた、たおやかな表情であるとの感想を漏らしていましたね。

哲学の道入口付近の丘陵

哲学の道入口付近の丘陵
(かすかに雪が舞う、2003.1.4撮影)
法然院付近の小経

法然院付近の小経
(2003.1.4撮影)

時折雪が舞い降りる中、琵琶湖疎水の分流沿いに付けられた遊歩道「哲学の道」を進みました。このあたりの丘陵地には、杉などの常緑樹に混じり、わずかながら真っ赤な色彩のうつくしい紅葉の姿も見られ、新年を迎えたいまでも鮮やかな光彩を見せていました。哲学の道には、桜並木が整備されていますが、もちろん冬の今、桜たちは枯れ枝を寒風にさらしているのみで、付近に目をやっても、楠や笹などを除けば緑を見つけることはできません。茫漠とした冬の遊歩道の風景に、意外にも清冽な印象の疎水の流れが、ゆるやかにつながっていきます。観光用に整備されたであろうと思しき歩道ではありますが、周辺はやはりごく普通の住宅地です。何度も申し上げるようですが、古都の静寂と、現代の日常とが、全く境界線を持たずにグラデイションを描く姿は、まさに京都の妙といえます。

住宅地の背後にたおやかに連なる丘陵は、吉田山の山なみでしょうか。その稜線の向こうに、どこかの寺院の五輪が顔を出し、風景をより味のあるものにしてくれています。手前にも、住宅と住宅のあわいに、寺院の甍が点在します。山茶花の色とりどり、雪は降り方を強めたり、弱めたり、曇天の下は、冬ならではの豊かな色彩に埋め尽くされます。道に面した家々も、面するほうに趣向を凝らしたエントランスを向けたり、南天や山茶花を配したり、きれいに整えられた生垣を配したりと、景観に然り気なく配慮しているのがうれしいですね。
哲学の道付近には、魅力的な寺社も多く存在します。哲学の道南の入口付近の若王子神社や、法然院などです。疎水の位置からは一段高台の場所は、緑もいっそう濃く、それらに包まれた京の遠景もまた、実に美しく、魅力的に思いました。

慈照寺書院

慈照寺(銀閣寺)書院
(2003.1.4撮影)
慈照寺から西方を望む

銀閣寺庭園の高台から西方を望む
(2003.1.4撮影)

最後に、この界隈の人気スポット、銀閣寺へ。拝観受付終了(午後4時30分)の5分前にぎりぎり滑り込み、5時までの拝観時間いっぱいに、書院や庭園の美しさを堪能しました。東山は、どこに行っても、丘陵の緑と、人々の叡知と自然への憧憬とに支えられた、穏やかな魅力に溢れているようでした。今出川を西へ、吉田山の北、京大のキャンパス、百万遍を通過し、賀茂大橋のたもと、出町柳へ。この頃には午後5時30分近くになり、あたりは夕闇に包まれていました。高野川と賀茂川とが合流するここから、鴨川ははじまります。暗くなりながらも、2つの川の間に続く、下鴨神社の杜の様子が見て取れました。

第三段のページへ

第五段のページへ

このページのトップへもどる

シリーズ京都を歩く目次のページへもどる           ホームページのトップへもどる

(C)YSK(Y.Takada)2003-2004 Ryomo Region,JAPAN