Japan Regional Explorerトップ > 地域文・その他 > 仙境尾瀬・かがやきの時

尾瀬ヴァーチャルツアー #1

 2006年10月13日、秋の尾瀬を歩いてきました。秋の青空の下、冬を目前に控えた彩りの中、たおやかなかがやきを見せる尾瀬。
今回実際に歩いた順番に写真をご紹介する「尾瀬ヴァーチャルツアー」を掲載いたします。

前半から続きます。

見晴〜白砂峠〜沼尻

 見晴を出発し、尾瀬沼方面へ向かいます。ここから尾瀬沼湖畔の沼尻までは湿原ではなく、燧ケ岳南麓の山道を進んでいきます。白砂峠を越える段小屋坂と呼ばれる上りです。鳩待峠から見晴まではほぼ一貫して下り道か平坦な木道でしたので、ここからはじっくりと歩いていくこととします。山道は見晴を過ぎてしばらくは木道あるいは木製の階段が設置されたゆるやかな上りです(写真23)。付近は紅葉している木々も多くて(写真22)、さまざまに色づいた森の中を気持ちよく歩いていけます。樹相は落葉広葉樹にトウヒやコメツガなどの針葉樹が混交していまして、標高が増していることを示しています。

 やがて、南(進行方向右)側から快いせせらぎの音が聞こえてくるようになります。沼尻川の流れです。山道は流れからはかなり上につけられており、また木々がうっそうとしているために川そのものは見ることができません。ごうごうと流れる涼やかな水の音を聞きながら、道はだんだんとその傾斜を増していきます。道も次第に岩石や土や木々の根などが剥き出しの表層に変わっていきます(写真24)。山道としては初歩的な部類に入るこの道でも、普段こういった道を歩きなれていない場合は注意が必要ですね。ぬかるみも多いですから、私自身も慎重に進んでいきました。白砂峠のピークに到着したのは午前11時30分。見晴からは約40分の行程でした(写真25)。峠を過ぎますと、滑りやすい急な下り坂となり、白砂田代と呼ばれる小湿原へと至ります(写真26)。ここからは道は再び平坦になります。落葉広葉樹と針葉樹とが交じり合った穏やかな森林の中を進む木道を歩みますと、尾瀬沼のほとり、沼尻平と呼ばれる湿原地帯に到達します(写真27)。沼を望む休憩所で小休止です(写真28)。

見晴

(21)見晴の山小屋前のテラスからの眺め(10:31)
紅葉した木々

(22)見晴付近、紅葉した木々(10:42)
見晴〜沼尻

(23)見晴〜沼尻、はじめのうちは木道もある(11:00)


(24)見晴〜沼尻、足場の悪い部分も(11:02)


(25)白砂峠付近、針葉樹と紅葉(11:27)
白砂田代

(26)白砂田代を横断(11:37)
沼尻休憩所

(27)沼尻休憩所(11:49)
沼尻から眺める尾瀬沼

(28)沼尻休憩所から眺める尾瀬沼(11:51)

沼尻〜大江湿原〜三平下

 

 沼尻平からは、燧ケ岳が本当に間近に迫ります(写真29)。尾瀬ヶ原から眺めた燧ケ岳に比してやや穏やかなその容貌が、少々意外にも感じられます。水草に岸を覆われた尾瀬沼の様子は大江湿原へ進む木道からもしばしば眺めることができます(写真30)。沼の沿岸を行く木道は沼を見ながら、小さな湿原を通過しながら、森の中を突っ切りながら、軽やかに進んでいきます。峠を越えてきた足はこのあたりから疲れが出てきているようで、なだらかな木道でもだんだんとペースが鈍ってきているのが実感されます。沼尻を出て、沼がおだやかに入り江状に入り込んだ浅湖湿原を経て(写真31)、沼の東北に広く展開する大江湿原までのおよそ2.7キロメートルを踏破するのに約40分を要しました。

 大江湿原は、福島県側から尾瀬に入山する最も一般的なルートである沼山峠休憩所からの道が通過する一帯に広がります。7月下旬は湿原一面にニッコウキスゲが咲き乱れる名所として知られています。目の前の広大な湿原−たおやかな草紅葉が光り輝く大地−が(写真32・33)、3ヶ月前には山吹色の花々で埋め尽くされていたとはすぐには信じられないほどです。尾瀬沼へ比較的大きな沢が流れ込む川口を形成している大江湿原は、まとまった平坦地を沼のほとりに提供していることもあって、付近は尾瀬沼ビジターセンター(写真35)や数軒の山小屋が集まる、賑やかなエリアです。ごつごつしたスカイラインの燧ケ岳も、大江湿原から眺めますと左右の均整のとれたバランスの良い形に見えるようで、けっこう味わいがあります(写真34)。ビジターセンター周辺には休息をとる多くのハイカーで活気に満ちておりました。ビジターセンターでは午後1時から12分程度の尾瀬の四季を紹介するスライド上映会を観ることができるとのことで、休憩も兼ねてそれを拝見させていただきました。

 ビジターセンターから三平峠へ向かうルートも、沼のほとりに沿いながら、林の中を軽やかにつながっていきます。木道も整備されていまして、たいへん歩きやすいルートです(写真36)。ビジターセンター南からは再び群馬県の範域となっています。三平峠への山道が始まるふもと(三平下、写真38)の手前で、尾瀬沼と燧ケ岳が一望の下に見通せる場所があります(写真37)。三平下からは尾瀬沼へも別れを告げることとなりますので、この場所でしばし足を止めて、沼や山の美しい風景を目に焼き付けておきましょう。

燧ケ岳

(29)沼尻平から見た燧ケ岳(12:01)
尾瀬沼の眺望

(30)沼尻〜大江湿原、尾瀬沼の眺望(12:09)
浅湖湿原

(31)浅湖(あざみ)湿原・尾瀬沼方向(12:33)
大江湿原

(32)大江湿原遠景(12:40)


(33)尾瀬沼ビジターセンターを望む(12:40)
大江湿原からの燧ケ岳

(34)大江湿原から眺める燧ケ岳(12:52)


(35)尾瀬沼ビジターセンター(12:55)


(36)大江湿原〜三平下の木道(13:30)


(37)大江湿原〜三平下から眺める尾瀬沼・燧ケ岳(13:30)
三平下

(38)三平下からの景観(13:35)


三平下〜三平峠〜大清水

 三平下からは、尾瀬を下山するルートをひたすら進みます。日帰りで尾瀬に入った私は、自家用車を置いた戸倉まで戻らなければなりません。三平峠を通過するルートの入山・下山口は大清水です。大清水を出発し戸倉を経由しながら沼田駅方面へ進むバスの最終便は午後3時50分ですので、このバスを乗り過ごすことができません。三平下〜大清水の約5.5キロメートルを約2時間かけて踏破します。三平峠までの上りは木道や木の階段が設置された緩やかなルートですので、段小屋坂に比べますとはるかになだらかで歩きやすい道です。三平峠には13時54分に到着しています。しかしながら、峠からの下り道は一般のハイカーからしますとかなりの急勾配に感じる下り坂となります。しかも木道などの歩きやすい表面の部分はかなり少なくて、ごつごつした石が葺かれた場所や、土や岩が剥き出しになった場所などがたいへんに多い、歩行には注意を要する山道が続いていきます(写真40)。なるべくであればゆったりとしたスケジュールで進むのが賢明です。途中紅葉が美しい眺めの場所(写真39)などもありますので、休憩を取ることも必要ですね。急な山道は休憩所のある一ノ瀬と呼ばれる場所まで続きます(一ノ瀬到着は14時34分です)。ここは尾瀬を縦貫しようと自動車用道路の建設が進められていた動きがようやく止まった場所であるようです。1970(昭和45)年9月に完成した「三平橋」は例外を除けば一切の車両を通過させない橋となっています。一ノ瀬ではしっかりと休息をとりましょう。大清水へは未舗装の県道を3.5キロメートル進まなければなりません。道自体は平坦なのですが、距離がありますのでけっこう過酷な道のりとなります。周辺の紅葉などを眺めながら、穏やかな気持ちで進んでいきましょう。
 
 長い長い未舗装道路を歩いて、15時21分、ようやく大清水に到着しました。足はもうくたくたでした。バスが出発するまでの時間は、ベンチにかけながら名物の「花豆ジェラート」を食べていました。付近の山小屋では秋の味覚もキノコやアケビなど、実に色とりどりでしたね。

三平峠〜大清水

(39)三平峠〜大清水の景観(14:04)
三平峠〜大清水

(40)三平下〜大清水の山道(14:15)
未舗装の県道

(41)未舗装の県道をひたすら行く(14:47)
大清水

(42)大清水に到着(15:21)

尾瀬ヴァーチャルツアー#1 −完−


<注意>
 掲載した踏破時刻は、あくまで目安とお考えください。尾瀬は自らの足であるかなければなりませんので、けがなどされますとたいへんなことになります。事前に天気情報や地元の発表する情報等を十分に収集し、無理のない散策計画を立てた上で入山されますよう、重ねてお願い申し上げます。




このページの最初にもどる   仙境尾瀬・かがやきの時にもどる

地域文・その他の目次のページにもどる     トップページにもどる

Copyright(C) YSK(Y.Takada)2006 Ryomo Region,JAPAN