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シリーズさいたま市の風景

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#9 大宮と浦和 (中) 〜旧中山道を行く〜


自治医科大学前から、ちょっと疲れたこともあり、大宮駅東口までの帰路はバスを使って戻りました。都市化により今では目立たなくなっていますが、低地から台地への傾斜は明瞭に認められました。まだ都市化が進んでいなかったころは、見沼のほとりからは、氷川神社の社殿や大宮の宿場町などは燦然とした一大ランドマークとして見上げることができたのだろうな、バスの車中でふとこんな妄想が頭の中をよぎりました。通りの彼方には現在のランドマークであるソニックシティの威容が眺められます。

大宮市街地、旧中山道
大宮市街地(大栄橋交差点付近)
2002.11.20撮影

大宮駅東口は、脇本陣を9つも抱えたという宿場町を基礎としており、高層建築物が林立する現在にあっても、東光寺の佇まいや、路地裏に時折垣間見られる瓦屋根の商店の存在などに、かつての宿駅の名残のようなものを感じることができます。とはいえ、北関東へ向かって伸びる諸動脈の収束するターミナルとしての賑わいは鮮烈で、このような市街地と氷川神社、さらには見沼の自然が至近に存在する大宮の町は、首都圏内にあっては最も暮らしやすい町の1つなのではないか、そう思えるほどの包容力のようなものを、この町は持っているような気がいたします。

高島屋のある交差点を南に折れ、旧中山道を南へ、浦和へ向けて進みます。大宮仲町、下町、浅間町吉敷町と進むにつれて次第に町は中小商店と雑居ビルとが混交した町並みへと変化していきます。そして、大宮宿の南の入口である、氷川参道入口に到達します。ここには「武蔵国一ノ宮 氷川神社」という石碑が建てられ、巨大な一の鳥居が威容を見せています。このあたりになると、さいたま新都心も間近になり、スーパーアリーナや明治生命ビル、NTTドコモの電波塔などの高層建築物が線路越しに見えるようになってきます。やがて、イトーヨーカドーのあるJRさいたま新都心駅の東側あたりまで来ると、街路が急に整備され、ケヤキ並木の美しい景観へと変貌します。付近はまだ再開発事業の只中で、広大な空き地に、不釣合いな広幅員道路とがただ並ぶ一角でした。この辺りの再開発が完成をみた暁には、北の大宮の市街地と南の浦和の市街地と、西の与野の市街地を結びつける、さいたま市の新たな中核としての歴史がスタートするのだろうという感慨も持ちつつ、一方で、このような開発の波が襲う前は、このあたりも大宮と浦和の間の比較的静かな住宅地であったのだろうなとも想像しました。現に、三菱マテリアル総研の前から、旧浦和市の上木崎、針ヶ谷あたりまでには、一部に瓦屋根の家々や、宮原辺りのような壮年期の町並みが基本の都市景観が広がっており、人口100万余の政令市の中心業務地区近傍の地区といった猛々しさとはおおよそ程遠い、素朴な色彩さえ感じさせる穏やかな住宅地なのでした。

さいたま新都心駅東側から見た新都心
さいたま新都心の景観
(中央はJRさいたま新都心駅)
2002.11.20撮影

そのような景観は、JR与野駅前、JR北浦和駅付近に至っても基本的には変わらず、落ち着いた住宅地がJR線をまたいで連続します。JR与野駅前には、桜の古木がひっそりと立っており、付近の落ち着いた町並みと町の刻んだ歴史と、それと市街地の只中に立たされた古木の若干の痛々しさとを感じました。私はさいたま市役所に行こうと思っていたのと、このまま旧中山道を進むと北浦和駅南で高架でJR線を越えねばならないこととを考慮して、針ヶ谷3丁目付近の歩道橋を歩いて線路の西側に移動し、線路伝いに南に進んで、北浦和駅の西口へ到達しました。線路の上の歩道橋からは、北にさいたま新都心のビル群と大宮市街地の俯瞰を、南に浦和市街地方向の様子を、それぞれ眺めることができました。

JR北浦和駅西口は、駅前の広場から放射状に街路の伸びたちょっとした商店街として整備されており、国道17号線が北西から南にゆるやかに曲がるRの内側には、北浦和公園の豊かな緑が配されています。このあたり(常盤地区)から南、浦和仲町、高砂と続く一角がかつての浦和宿の範囲で、埼玉県庁やさいたま市役所、さいたま地裁などを擁する市の行政の中心地域を形成しています。

さいたま市針ヶ谷
さいたま市針ヶ谷の跨線歩道橋から見た
さいたま新都心の方向
(2002.11.20撮影)

大宮の中心市街地から旧中山道を進む行程は、かつての宿場町と街道の持つ地域性を濃厚に残しながらも、新都心として急速に転換しつつある現在のさいたま市の趨勢をも感じることのできる道のりでした。これらのエッセンスがどのように融合し、新たなまちが作られていくのか、今後も注目していきたいと思いますね。

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