Japan Regional Explorerトップ > 地域文・関東甲信越地方 > 東京優景・目次

東京優景 〜TOKYO “YUKEI”〜

#83(渋谷・神宮外苑編)のページ
#85(西新宿編)のページへ→
#84 九段坂周辺の風景 〜九段から外濠へ、春空の下を歩く〜 (千代田区・新宿区)

 2020年3月21日、穏やかな青空の下、半蔵門駅から地上へと出ました。人通りの少ない一番町の町並みを進み、外堀通りへ。木蓮の花が輝かしい花をつける公園の先の交差点を横断し、千鳥ヶ淵緑道へと歩を進めました。一部のソメイヨシノは開花が進んでいましたが、多くの木々は2,3分咲きといった感じで、穏やかな水面のの千鳥ヶ淵に、少しずつ春本番が間近であることを伝えていました。

一番町交差点

半蔵門駅前・一番町交差点
(千代田区一番町、2020.3.21撮影)
内堀通り

内堀通り、墓苑入口交差点
(千代田区北の丸公園、2020.3.21撮影)
千鳥ヶ淵緑道のソメイヨシノ

千鳥ヶ淵緑道のソメイヨシノ
(千代田区北の丸公園、2020.3.21撮影)
千鳥ヶ淵緑道

千鳥ヶ淵緑道
(千代田区北の丸公園、2020.3.21撮影)

 桜の並木が続く緑道を北へ歩きますと、靖国通りへとたどり着きます。通りを挟んだ反対側は靖国神社の境内です。大通となっている靖国通りは、九段坂を颯爽と東西方向に伸びています。現在でこそ比較的ゆるやかな傾斜で多くの車両や人々を受け入れているこの坂も、藩政期までは上るのもやっとのたいへんな急坂であったといいます。明治以降道路を拡幅・掘削するなどの工事を経てかつての「見上げるような」坂から変貌を遂げたものであるようです。東京におけるソメイヨシノの開花標準木となっている境内の桜は、枝によっては多くの花をつけていまして、やわらかに差し込む朝の日の光を受け止めていました。

 九段坂上から西の靖国通り沿いは、南側の番町エリアから続くオフィス街・商業ビル街となっていまして、早朝の時間帯は十分に日光が届かずやや薄暗い印象です。通りの両側の高い建物によって上空への視界も遮られるため、少し圧迫感のある町並みであるように感じます。そんな通り沿いにもソメイヨシノを中心とした桜が植栽されていまして、こちらもかなり花が咲きそろいつつありました。ソメイヨシノに混じって、オオシマザクラ系など別品種の桜の木もありまして、歩道に一定のアクセントを与えていました。九段坂上という呼び名が示すとおり、番町から麹町にかけての一帯は西から延びる武蔵野台地の東端にあたる、低地からは一段高い台地の上に位置しています。靖国通りの北には、「一口坂」と書かれた標柱があり、北へと下るその坂の由来を記していました。藩政期は大名屋敷が軒を連ねていた場所でした。


靖国通り

靖国通り
(千代田区九段南二丁目付近、2020.3.21撮影)
桜開花標準木

靖国神社境内・桜開花標準木
(千代田区九段北三丁目、2020.3.21撮影)
靖国通り沿いの景観

靖国通りの景観
(千代田区九段北三丁目、2020.3.21撮影)
靖国通り沿い

靖国通り沿いのソメイヨシノ
(千代田区九段北三丁目、2020.3.21撮影)

 靖国通りは、市ヶ谷駅近くに来ますと、外濠を市ヶ谷橋で渡り外堀通りと交差して西へと進んでいきます。この場所にはかつて江戸城の市ヶ谷門があって、見附と呼ばれる番所が置かれていました(市谷見附)。市ヶ谷橋は北に向かって下る形状になっていまして、外濠が周辺の台地より低い場所(谷地形)を利用して作られたことを物語っています。市ヶ谷橋周辺は江戸時代にはすでに桜が多かったようで、市谷見附に設けられた門は「桜門」とも呼ばれていたようです。現在では外濠に沿ってJR中央線が通り、外堀通りと靖国通りが交差する交通の主要なノードとなっている市ヶ谷は、交通量も人通りも多くて、江戸城を守る関門であった往時の姿は壕とそこを渡る橋の景観によって止められているといえるのかもしれません。

 市ヶ谷橋を渡った後は、外堀通りを通り、四ッ谷方面へと歩を進めました。四ッ谷付近では外濠は埋められていて、野球場となっている場所もあります。通り沿いのソメイヨシノはちらほらと花を開いていまして、市街地内での桜の開花が進んでいたのとは対照的で、水面に近い影響を感じさせました。四ッ谷駅付近にもかつて見附が設置されていて(四谷見附)、ここから南北に延びる谷地形を挟む分水嶺の頂点だったところを掘削し外濠とした位置にそれはありました。新宿通りとの交差点でもある四ッ谷一帯は視界も一気に開けて、コモレ四谷の颯爽としたビルも春空の青によく映えていました。新宿通りの東方面には、上智大のキャンパスや麹町の高層ビル群が鮮やかに目に入ります。

市ヶ谷駅前

JR市ヶ谷駅前
(千代田区九段北四丁目、2020.3.21撮影)
市ヶ谷駅付近の外濠

市ヶ谷駅付近の外濠
(新宿区市谷田町一丁目付近、2020.3.21撮影)
外堀通りの風景

外堀通りの風景
(新宿区市谷本村町付近、2020.3.21撮影)
四ツ谷駅前

JR四ツ谷駅前
(新宿区四谷一丁目、2020.3.21撮影)

 春の花々を売る花屋の店先に目を楽しませながら、新宿通りを西に歩いて、新宿駅方向へと歩いていきます。新宿通りはかつての甲州街道の道筋にあたっており、江戸時代から通りに沿って家並みが連続していました。四谷四丁目交差点付近には、玉川上水の水番所があって、江戸市中への給水を管理していました。この場所には江戸城の出入口として大木戸が設けられていました。この名前に因む新宿御苑の「大木戸門」から、苑内へと進みました。

#83(渋谷・神宮外苑編)のページ

#85(西新宿編)のページへ→
このページのトップへ          東京優景目次ページへ        ホームページのトップへ

Copyright(C) YSK(Y.Takada) 2022 Ryomo Region,JAPAN