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都道府県花暦

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17.ゲンゲ(岐阜県)

一般的には、レンゲとかレンゲソウなどと呼ばれるこの花ですが、標準和名としては「ゲンゲ」というのだそうです。そこで、今回は「ゲンゲ」という名前で文章を書きたいと思います。一般的な呼び名である「レンゲ(レンゲソウ)」は、10 個ほどの紅紫色の花が車輪状に並んでいる姿が、ハスの花(蓮華)に似ていることから、そういう名前になったのだそうです。

ゲンゲといいますと、早春の、田植えの前の水田に一面に咲いている、という印象が強いのではないかと思います。これは、ゲンゲの生態に起因するものではなく、人間の手によってゲンゲの種が蒔かれるためです。ゲンゲはマメ科の植物です。マメ科植物は、「空中の窒素を固定する根粒菌」の働きにより、土壌中に植物にとって栄養分となる窒素を蓄えます。したがって、春先に成長したゲンゲを、そのまま水田にすきこむことにより、緑肥として活用することができる、というわけです。戦後でも、機械化によって稲作が効率化される前までは、各地でこうしたゲンゲの植付けが行われていたのではないでしょうか。そうなんですよね、最近ではゲンゲが水田いっぱいに咲く光景を見ることが少なくなってしまったようにも思います。

ゲンゲ(レンゲソウ)

ゲンゲ(YSK画)

ゲンゲが岐阜県花に選定された理由を、同県のホームページから拾います。

昭和29年3月、NHKなどの主催で県民のみなさんに意見を聞き、「郷土の花」として選ばれました。春のやさしい風景によくにあう花として知られています。
稲刈りの終わった田にれんげ草の種をまくと、春にはたくさんの花がじゅうたんのように咲きます。昔の子どもたちは、このれんげ草で首飾りを作ったりして遊んだものです。
(岐阜県ホームページより引用)

つまり、多くの都道府県のように、その花の典型的な繁殖地域があるというわけではないようなのです。春のやさしい風景に似合う花として、選定したとあります。実にのどかで、土地の自然な美しさに着目した理由なのかな、と思えてしまいます。制定されたのが1954(昭和29)年とありますから、当時の岐阜県内でも、ゲンゲは広く各地であのたおやかなピンク色をほころばせていたのでしょうか。

こうした、あたりまえの日常の中で、しっとりと私たちを見守ってくれる花をあまり目にすることがなくなった、ということはどことなく寂しい気もいたしますね。そういったことを思い起こしますと、水田の畔などでひっそりと咲くゲンゲに出会うと、心が温かくなります。

ひかり降る野辺に紅さす蓮華草

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