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関東の諸都市・地域を歩く


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#161 東秩父村、のびやかな山間を歩く ~“天空のポピー”に出会う~
 
 2019年5月26日、地元を出発し電車を乗り継いで寄居駅へ、そこから小川町駅へと移動して、路線バスに乗り換え、埼玉県では唯一の村となった東秩父村へと降り立ちました。秩父郡に属し、秩父盆地を中心とした秩父地方とは山を隔てた東麓に位置することからその名がある村です。隣接する小川町とともに和紙の里として知られる同村の中心部に近い場所にある道の駅からこの日の散策をスタートさせます。5月中旬ながら最高気温が35度に迫る季節外れの酷暑となったこの日は、この穏やかな山村も輝く青空の下、強烈な日差しが山々の木々や瀬を照らしていました。

道の駅和紙の里ひがしちちぶ

道の駅和紙の里ひがしちちぶ
(東秩父村御堂、2019.5.26撮影)
東秩父村の風景

東秩父村の風景
(東秩父村奥沢、2019.5.26撮影)
杉の木立の中をゆく

杉の木立の中をゆく
(東秩父村御堂、2019.5.26撮影)
槻川の風景

槻川の風景
(東秩父村御堂、2019.5.26撮影)


東秩父村、外秩父山地の山並み
(東秩父村御堂、2019.5.26撮影)
東秩父村役場

東秩父村役場
(東秩父村御堂、2019.5.26撮影)

 なめらかな稜線を描く外秩父山地外縁の山々はどこまでも清爽で、成熟しつつある新緑のしなやかさが曇りないクリアな青空に映えています。槻川のつくる谷底平野に寄り添うように集落や農地が開かれていまして、澄んだ川には小魚がたくさん泳いでいます。埼玉県西部の丘陵地域は実に多様な自然景観を包含していまして、首都圏近傍における貴重な癒しの場となっていることを、訪れるたびに実感します。役場のある集落を抜けて、槻川に沿った村道を歩みながら、先人の努力により整えられた石垣で区画された畑地の横を進んでいきます。木立の下をくぐり、さらに歩を進めた集落のはずれには、槻川に歩行者のみが渡れるような小さな木橋が架けられていました。その橋で清冽な流れを渡河して県道の歩道へ。しばらく県道を歩いて、落合橋の交差点から西に、さらに山間へと向かっていきました。

 槻川の上流部にあたる地域は、たおやかな山並みが間近に迫り、わずかな低地に水田が開かれていたり、家々が山の斜面により沿うように建つ風景が連続していきます。そうした山里らしい景観がみずみずしい印象を与える一方、既に廃校となっていると思われる建造物もあって、一定の人口規模を擁した山村が徐々に過疎化してきた経緯をも感じ取ることができることができました。真夏とほぼ同じ日射しが降り注ぐ中にあって、木々はいっそう輝き、川面は極上のきらめきを返して、新鮮な若葉が織りなすこの上のない美しい景色が作り出されていました。

東秩父村の集落風景

東秩父村の集落風景
(東秩父村御堂付近、2019.5.26撮影)
歩行者用の橋

槻川に架かる歩行者用の橋
(東秩父村御堂、2019.5.26撮影)
槻川

槻川、県道11号沿い
(東秩父村奥沢、2019.5.26撮影)
落合橋付近

落合橋付近の風景
(東秩父村坂本、2019.5.26撮影)
旧小学校の建物

旧小学校の建物
(東秩父村坂本、2019.5.26撮影)
槻川沿いの集落風景

槻川沿いの集落風景
(東秩父村坂本、2019.5.26撮影)

 橋場交差点から西へ進む県道に沿って、いよいよ山間へと分け入っていきます。この日は車道をショートカットするように林の中を進む遊歩道を一部経由して進んでいきました。槻川の本流を離れた地域であっても、比較的傾斜が緩やかな場所を中心に昔ながらの集落が開かれていまして、この場所が古くから人々の生活の舞台となってきたことを窺わせます。東秩父村は隣接する小川町と共に和紙の産地であることは冒頭で触れましたが、その和紙の原料であるコウゾが古くから商われた歴史があるようで、伝統的な産業と結びつきながら、このような山上の村落が存立してきた経緯が偲ばれました。そうした歴史のある集落を過ぎてさらに山道を辿って、木立の下を歩いて行きます。外秩父と呼ばれる秩父山地東側のエリアには、このようなハイキングコースが多く存在していまして、四季折々にしなやかな自然の中を歩くことができることが魅力です。この日は季節外れの暑さとなっていましたが、標高が増すにつれて気温が高いながらも時折さわやかな風が吹いて、幾ばくか体感的な熱を緩和させてくれていました。

 秩父盆地側との分水嶺に進んで、峠を越えますと、視界が徐々に開けてきまして、高原のような風景が広がっていました。西側の皆野町にまたがる一帯は「秩父高原牧場」として整備されていまして、そこは県の施設として優良な乳牛及び肉用牛の育成を行うと共に、一部が「彩の国ふれあい牧場」として解放され、動物とふれあうなどの体験を行うことができるようになっているようです。その施設の一角には、「天空のポピー」と呼ばれるポピー畑が毎年開設されていまして、この日も鮮やかなポピーが一面に鮮烈な赤橙色をなだらかな斜面に展開させていました。快い空色の夏空の下、秩父山系の雄大な山並みのあわいにぽっかりと空いたような空間を埋め尽くすポピーの花弁の色彩は、圧巻の迫力で、太陽から降り注ぐ熱量にも引けを取らない光量でもって、夏の大空に応えているように感じられました。

槻川

狭い低地を伴う槻川
(東秩父村坂本、2019.5.26撮影)
山間部の集落風景

山間部の集落風景(栗和田地区)
(東秩父村坂本、2019.5.26撮影)
給料内のハイキングコースをゆく

丘陵内のハイキングコースを行く
(東秩父村坂本、2019.5.26撮影)
天空のポピー畑

天空のポピー畑
(皆野町三沢、2019.5.26撮影)
青空の下のポピー畑

青空の下のポピー畑
(皆野町三沢、2019.5.26撮影)
田植えの始まった水田

東秩父村、田植えの始まった水田
(東秩父村坂本、2019.5.26撮影)

 天空のポピー畑でしばし休息した後は、元来たルートを辿って東秩父村の美しい風景の中を歩き、路線バスのターミナルとなっている道の駅と戻りました。帰路は槻川に沿って開かれた水田に寄り道して田植えが始まりつつある風景を一瞥するなどして、山村の日常を目に焼き付けました。相変わらずの猛暑でたいへんなウォーキングとなりましたが、道の駅では和紙でつくられたさまざまな工芸品を見ることができまして、地域の自然と産業、そして生い立ちを存分に探勝できる彷徨となったように思われました。


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