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関東の諸都市・地域を歩く


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#168 武州寄居十二支守り本尊参り ~真冬の宿場町の古刹を巡る~
 
 2019年12月21日、真冬の埼玉県寄居を訪れました。熊谷から秩父鉄道線で寄居駅へ、駅前における昔ながらの小ぢんまりとした町場の中心地然とした雰囲気が、冬の鈍色の空の冷たさに調和しているように感じられました。この日は寄居市街地周辺に点在する、十二支守り本尊を祀る寺院をめぐりながら、荒川の谷口に発達した寄居の地域を巡るウォーキングを行うこととしていました。寄居駅の南側に広がる中心市街地の東側、天沼陸橋の下をくぐった先にある西念寺へと進みました。浄土宗西念寺は、戌年・亥年の守り本尊とされる阿弥陀如来を祀ります。境内の北を東武東上線が通じてからは市街地の中に取り込まれ。現在は市街地近傍の静かな巷の中に佇む寺院となっています。

寄居

寄居駅
(寄居町寄居、2019.12.21撮影)
西念寺

西念寺
(寄居町寄居、2019.12.21撮影)
正樹院

正樹院
(寄居町寄居、2019.12.21撮影)
寄居中心市街地の町並み

寄居中心市街地の町並み
(寄居町寄居、2019.12.21撮影)
浄心寺

浄心寺
(寄居町寄居、2019.12.21撮影)
放光院

放光院
(寄居町寄居、2019.12.21撮影)

 元来た道を戻り、申年と未年の守り本尊である大日如来を祀る正樹院へ。瓦屋根の乗った冠木門をくぐりますと、小さな向拝がある寺院の建物が正面に目に入ります。明治期の地勢図にも「正樹寺」の名で見えていまして、ゆかりの古い寺院であることが見て取れます。正樹院の門から出て、南へ下りますと、寄居町の中心市街地を構成する県道296号へと出ます。秩父へ向かう往還が通る、昔ながらの要衝である寄居の地域性を象徴する、歴史を経た美しい町並みが残ります。少し西へ道なりに進んだ後、自動車もすれ違えないような路地を南に入りますと、浄心寺の小さなお堂へ。そこには酉年の守り本尊である不動明王の立像が威厳を持って安置されていました。商店が軒を連ねる寄居の町ですが、一部は道路が拡幅されて中規模のスーパーマーケットも立地して、時代の変化にも対応していました。荒川対岸の鉢形城跡方向へ向かう県道の丁字路を越えますと、市街地を北へ入った場所に放光院(午年:勢至菩薩)。市街地にこのような多様な寺院を要する寄居の、在郷における中心地としての凄みを感じました。

 中心市街地の県道をそのまま西へ進み、バイパスとなっている国道254号の現道、末野陸橋下をくぐって、さらに国道の歩道を歩いて行きます。多くの車両が通過する国道沿いには穏やかな住宅地と畑地が交錯し、北側にはのびやかな丘陵地も迫ります。冬ざれた葉の落ちた森は乳白色の冬空に静かに向かい合って、冷たい季節の空気感をいっそう際立たせて十二支守り本尊参りの後半は、この山並みに佇む四ヶ寺を訪ねていきます。末野交差点を右折し、羅漢山へ向かって徐々に傾斜を増す町道を、集落と畑の続く中歩いて行きますと、森に包まれた少林寺の境内へと導かれます。背後の山の路傍に五百羅漢がひっそりと時を重ねた古刹は、葉の落ちた山懐に覆われる様子がいっそう厳かな風致をたたえていました。少林寺の十二支守り本尊は卯年の文殊菩薩で、諸仏の智慧を司ります。

荒川を望む

荒川を望む
(寄居町寄居、2019.12.21撮影)
少林寺

少林寺
(寄居町末野、2019.12.21撮影)
善導寺

善導寺
(寄居町末野、2019.12.21撮影)
正龍寺

正龍寺
(寄居町藤田、2019.12.21撮影)
天正寺

天正寺
(寄居町桜沢、2019.12.21撮影)
天正寺境内からの眺望

天正寺境内から寄居の町並みを望む
(寄居町桜沢、2019.12.21撮影)

 少林寺からは下り坂を戻り、秩父鉄道線と平行する道路を歩いて、善導寺の門前へと進みます。秩父往還をたどる国道254号へとつながる参道を線路が横切る形になっています。北に山並みを背にした寺院はとても穏やかな表情をしていまして、乳白色に沈む冬の寒々しい空をたおやかに見上げているようでした。善導寺は子年の本尊・千手観音菩薩を祀ります。末野地区から東隣の藤田地区へ、閑静な住宅地となった風景に溶け込む生活道路を歩きます。正龍寺(辰年・巳年:普賢菩薩)から天正寺(丑年・寅年:虚空蔵菩薩)へ、北にゆるやかな稜線を見せる丘陵の木々に癒やされながらの散策となります。正龍寺は石段の上の山門が見事な結構、天正寺は坂を挙がった高台にあって、境内からは寄居の町並みを俯瞰で見通すことができます。

 天正寺で十二支守り本尊参りはすべての参詣が終わり、その後は郊外の住宅地域から国道沿いのロードサイド型の商業集積地域を経て、寄居駅北口側へと進み、この日の彷徨を終えました。寄居駅の北口には町役場が隣接していまして、体育館などの公共施設が集まるエリアとなっています。昔ながらの町並みと周囲の山々に抱かれる穏やかな風景を訪ねる今回の訪問は、冬の静かで清浄な気候も相まって、より心が研ぎ澄まされるような散策となったように思います。



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