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シリーズ・クローズアップ仙台

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#62 シリーズ・地下鉄東西線を行く(1) 〜(仮称)新寺駅の近傍〜
 

 五橋一丁目交差点から新幹線の高架下を、在来線の下をアンダーパスして進む新寺通は、仙台駅の西口と東口とをつなぎながら東へ仙台バイパス・六丁の目交差点へと抜ける幹線道路であるため、一日を通して自動車の往来が絶えない一帯となっています。新寺通りの北、中央四丁目交差点から鉄路の下を抜ける「北目町ガード」のあたりは仙台城下町では変則的な六差路となっており、「六道の辻(りくどうのつじ)」と通称されていました。

 新寺・連坊の項(#22「連坊と新寺を歩く」)でも概観しましたとおり、新寺界隈は城下町の拡張に従って、1636〜37(寛永13〜14)年ころに元寺小路(現在の本町二丁目、広瀬通の北を西北西から東南東に方向に並走する街路。愛宕上杉通からJR線までの区間は広瀬通に吸収され、駅東の鉄砲町の通りへと続いていた)から集団で寺院が移転し集まったエリアでした。また、近代から戦前にかけては仙台駅が建設されたこともあって鉄道関連の用地や製糸工場などが立地し、産業的な土地利用が集積することとなり、仙台の玄関口として繁華を極めていった西口とは対照的な様相を呈していました。その一方において、工場等の立地点として比較的広大な用地が画されたことが、高度経済成長期を経て大規模な土地区画整理事業の進捗の素地となり、さらには近年の超高層マンション群の足場を提供することへとつながったことは仙台都心のリストラクチャリングを考える上でたいへん興味深い史実であるとも言えると思います。

ミッドプレイス仙台

ミッドプレイス仙台前
(若林区新寺一丁目、2008.12.27撮影)


新寺通、ミッドプレイス仙台前付近
(若林区新寺一丁目、2008.12.27撮影)
新寺一丁目交差点

新寺一丁目交差点(新寺通、左方向は東八番丁)
(若林区新寺一丁目、2008.12.27撮影)
東八番丁

東八番丁の景観(新寺一丁目交差点北付近)
(若林区新寺一丁目、2008.12.27撮影)

 五橋一丁目交差点から鉄路をくぐって、東口の新寺エリアへと進んでいきます。新寺通の南にはミッドプレイス仙台の超高層マンションが屹立し、鉄路西側の五橋エリアと一体的な土地利用への転換が着実に進んでいる様子が見て取れます。元来産業関連のストックが卓越していたエリアであるため、スーパーマーケットや商店街等の小売業の立地がほどんとなかったようです。マンション群の建設ラッシュに合わせ、ミッドプレイス仙台内に生協の店舗が開店するなど、居住エリアとしての機能集積が少しずつ進展しているようです。

 五橋から新寺にかけての地域がこうした再開発のターゲットとなった要因は、前述した産業エリアとしてもともと開発に必要な土地が確保しやすかったことや、仙台駅に至近であるという条件のほかに、地下鉄東西線がこの地域に開通し、仮称「新寺駅」が開業する見込みであることも大きいと考えられます。現在仙台市には市営の地下鉄である南北線が、仙台駅を基軸に、北の泉中央駅から南の富沢駅までの区間で運行されており(1987(昭和62)年開業)、都市計画上仙台市の副都心のひとつとして位置づけられる泉中央駅周辺の拠点地域化に寄与するなど、開発主導型の交通機関たる役割を担ってきました。地下鉄東西線は仙台駅を中心に東西方向の基軸となる路線で、2015(平成27)年の開通を目指し、2007(平成19)年に着工、2012年1月現在では、駅構造物の構築を中心に工事が進んでいます。

仮称新寺駅建設現場

地下鉄東西線(仮称)新寺駅建設現場
(宮城野区榴岡一丁目/同四丁目、2008.12.27撮影)
仮称新寺駅建設現場

地下鉄東西線(仮称)新寺駅建設現場
(宮城野区榴岡一丁目/同四丁目、2008.12.27撮影)
宮城野大通り

宮城野大通り(奥はJR仙台駅)
(宮城野区榴岡一丁目、2008.12.27撮影)
中央左のビルはアゼリアヒルズ

拡幅が進む東八番丁(二十人町付近から南方向)
(宮城野区二十人町付近、2008.12.27撮影)

 新寺エリアに近接して開業する「(仮称)新寺駅」は、新寺一丁目交差点から北へ、東進する新寺通から分岐する形の東八番丁通り(都市計画道路「東八番丁中江線」)の真下、宮城野区と若林区の区境となっている北目町通りの北あたりに設置されます(仮称は「新寺」ですが、駅の位置は宮城野区榴岡一丁目と同四丁目の境目となります)。自動車がひっきりなしに往来する新寺通から東八番丁に入り、ほどなくして(仮称)新寺駅の建設現場へと到達しました。杭打ち機が設置され、中央分離帯に重機が並び、道路上には養生のための敷き鉄板が敷き詰められて、まさにこのすぐ下で、地下鉄駅の諸施設が建設されているという雰囲気に包まれていました。東西線は、西は宮城野大通りに出て西に折れてロフト南あたりの仙台駅予定地まで、東は連坊通りに入って(仮称)連坊駅まで、それぞれ進んできます。

 仙台駅からほど近い位置にありながら、流通関連を中心とした第二次産業の事業所が集まっていたこのエリアは、市代表駅へのアクセス性に比して相対的に目立たない印象があったように思います。仙台駅を経て一番町に直通する地下鉄東西線の開業を見据えて、都心志向型の新たなライフスタイルに誘導されためまぐるしい変化の只中にあるように見えます。宮城野大通りを挟んで北側の二十人町・鉄砲町エリアでは区画整理事業がまさに最終段階という状況にまで進んでいますし、仙台駅の東口ではJRがホテルと業務ビルを柱とする大規模な再開発を2018年までに完成させるプロジェクトを実行に移そうとしています。新寺エリアは、現代的な街並みに寺院の甍が立ち並ぶ歴史的な生い立ちも相まってどのような地域へと変遷していくか、今後を見守っていければと思います。


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