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とうほくディスカバリー


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#12 いわき市の地域をゆく 〜勿来から平市街地へ〜

 2015年11月7日、福島県沿岸・浜通り地域南部の中心都市・いわき市を訪れました。いわき市は面積約1,232平方キロメートル、人口約34万6千人を持つ広域的な中核都市です。基盤産業であった石炭産業や水産業の斜陽化を受けて、全国総合開発計画における新産業都市の指定を受ける受け皿とするため、1966(昭和41)年に14市町村による大合併が行われ、いわき市が誕生しました。いわゆる平成の大合併により、いわき市を超える面積の自治体が多く発足していますが、いわき市の成立はそのひらがなの市名とともに、自治体の広域化を象徴するような存在であったように思います。茨城県北茨城市側から国道6号を進んで県境を越え、いわき市内へと入りました。

勿来地区の海岸風景

勿来地区の海岸風景
(いわき市勿来町、2015.11.7撮影)
勿来切通

勿来切通
(いわき市勿来町、2015.11.7撮影)
勿来の関公園

勿来の関公園
(いわき市勿来町、2015.11.7撮影)
勿来の関公園から望む太平洋

勿来の関公園から望む太平洋
(いわき市勿来町、2015.11.7撮影)

 初に訪問した勿来(なこそ)地区は、白河関、念珠関とともに奥州三関のひとつに数えられる勿来関の比定地のひとつとされることから、近代以降この地名で呼ばれるようになったという来歴があるようです。勿来とは「な来そ」つまり古語では「来るな」の意味で、蝦夷との対峙した歴史を踏まえた命名との説も認められます。この勿来関についてはその存在も含め、比定される場所も含め不明な点が多いようですが、古代より歌枕として多くの歌人の創作の対象となった風雅や土地の風光から、勿来の関公園が整備されるなど、古代史に思いを馳せる観光地として存立する地域となっていました。

 海岸には鳥居のある祠があり、国道を渡って勿来の関公園へと進む手前には切通(1600年代に通行の難所解消のために建設されたもの)もあって、勿来の地が常陸と陸奥との国境地帯という交通の要衝性も感じさせます。公園内には勿来の関を思わせる散策路が整えられていまして、深い森の向こうに太平洋を望むことができました。その輝きは、都から遠く離れた辺境における奇観に思いを寄せた都人の憧憬そのままの穏やかさを秘めているように感じられました。

平市街地の景観

平市街地の景観
(いわき市平、2015.11.7撮影)
JRいわき駅前

JRいわき駅前
(いわき市平、2015.11.7撮影)
磐城平城跡の石垣

磐城平城跡付近の石垣
(いわき市平、2015.11.7撮影)
平市街地俯瞰

磐城平城跡周辺から望む平市街地
(いわき市平、2015.11.7撮影)

 勿来の関公園訪問の後は、国道6号を再び北へ進んで、いわき市の中心市街地として商業集積のある平(たいら)地区へと向かいました、平地区にある市役所に自家用車を止めて、その北側一帯に広がる市街地とその周辺を巡ることとしました。平は江戸時代には磐城平藩の城下町として栄え、その後も福島県浜通り南部の中核として中心性を維持してきました。JRいわき駅も1994(平成6)年12月に改称されるまでは平駅と称していました。JRいわき駅の北側の丘陵地一帯がかつての城跡で、丹後沢公園に残る堀はその名残です。駅前に掲げられていた旧城下図によりますと、城を囲むように複数の堀が巡らされていたようで、城の周辺には武家地が配され、現在の字一町目から六町目へと至る直線的な町並みが町人地であったようです。

 旧城下町から続く平の中心市街地を抜けて、ペデストリアンデッキが整備されて多くの人々で賑わうJRいわき駅周辺の町並みを確認しながら、駅北側の城跡へと進みました。急な坂道を上りますと、閑静な住宅地となった城跡の中心部には石垣があって、わずかに藩政期の雰囲気を残していました。本丸跡は南側の城下に向かっては切り立った断崖上にありまして、防御に重きを置いた城郭としての特徴を今に伝えていました(本丸跡はイベント開催時以外は立ち入りはできないようです)。城跡の西方にあり、移転前は本丸跡に鎮座していた飯野八幡宮を参拝し、戊辰戦争時の弾痕跡が残る良善寺などを訪ねながら市役所へ戻り、平市街地の散策を終えました。



飯野八幡宮
(いわき市平、2015.11.7撮影)
良善寺山門

良善寺山門
(いわき市平、2015.11.7撮影)
白水阿弥陀堂

白水阿弥陀堂の景観
(いわき市内郷白水町、2015.11.7撮影)
白水阿弥陀堂

白水阿弥陀堂
(いわき市内郷白水町、2015.11.7撮影)

 夕闇が迫る中、いわき市最後の訪問地として、内郷地区にある白水(しらみず)阿弥陀堂に立ち寄りました。建立は1160(永暦元)年という古刹は、平安後期の浄土庭園の典型を構成していることから境内は国指定史跡に、阿弥陀堂は国宝に、それぞれ指定を受けています。紅葉が見頃を迎えていた阿弥陀堂はライトアップが施されまして、闇夜の中に美しく浮かび上がっていました。今回の訪問は広大ないわき市のごく一部をフォローできただけでしたが、多様な地域性を包含するいわき市の風景に触れて、それ以外の地域も含めて一層この地域を知りたいとの思いが強くなりました。

 
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