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とうほくディスカバリー


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#14 冬の山形蔵王を訪ねる 〜樹氷と極寒、白銀の世界へ〜

 2016年12月24日、仙台駅から仙山線に乗り、山形を目指しました。年の瀬となり例年であれば積雪の多い奥羽山脈の只中でも雪はかなり少ない印象で、県境付近を除きほとんど雪の積もっている場所はありませんでした。まだまったくといっていいほど雪に覆われていない立石寺を車窓から眺めながら、冬枯れの田園風景の広がる山形盆地へと列車は進み、山形市中心部へと導かれました。

霞城セントラル

霞城セントラル
(山形市城南町一丁目、2016.12.24撮影)
霞城セントラルから蔵王を望む

霞城セントラルから蔵王を望む
(山形市城南町一丁目、2016.12.24撮影)
霞城セントラルからの眺望

霞城セントラルから西方向の山並みを望む
(山形市城南町一丁目、2016.12.24撮影)
霞城セントラルから月山を望む

霞城セントラルから月山を望む
(山形市城南町一丁目、2016.12.24撮影)

 到着した山形駅前も、積雪が皆無の冬の市街地が広がっていました。ここ数年における山形の気象データを閲覧したところ、12月下旬でも積雪がない年は近年では珍しくないようで、多い年でも20センチメートル前後の積雪であることが多いようで、この地域における本格的な雪のシーズンは年明けからということを、この日の訪問で実感しました。この日は山形蔵王に向かって、有名な樹氷の様子を観に行く予定にしていました。正午過ぎに到着し、午後6時過ぎに出発する新幹線で帰路に就こうとしていましたので、その間に1時間に1本あるシャトルバスを利用して蔵王山麓へ。そして二本のロープウェイを乗り継いで蔵王山頂に向かうというややハードな日程での訪問に望みました。

 バスが出発する前に、駅西口にある複合型高層ビルである「霞城セントラル」最上階の展望ロビーから、市街地周辺を俯瞰しました。山形盆地に形成された馬見ヶ崎川の扇状地を中心として広がる市街地は、奥羽山脈の山並みに寄り添うように広がって、その中心に霞城公園が歴史的な風光を添えていました。北は最上川がつくりだす豊饒の大地へと連接して、葉山から月山へと連なる峰峰の裾へとその広がりを伸ばしていました。そして、東は本州の脊梁たる奥羽山脈が穏やかな山肌をずっしりとした容貌で存在していまして、その直上には寒々しい乳白色の雲に頂を覆われた蔵王山が、うっすらと雪化粧した姿を見せていました。

蔵王温泉・樹氷通り

蔵王温泉・樹氷通りの景観
(山形市蔵王温泉、2016.12.24撮影)
蔵王ロープウェイ

蔵王ロープウェイからの風景
(山形市蔵王温泉、2016.12.24撮影)
山形市街地遠望

蔵王ロープウェイから山形市街地を遠望
(山形市蔵王温泉、2016.12.24撮影)
蔵王山頂駅付近の樹氷

蔵王山頂駅付近の樹氷
(山形市蔵王温泉、2016.12.24撮影)

 バスは市街地を抜けて山並みへと続く道路へと進み、徐々に勾配を加えながら蔵王の山懐へと向かいます。蔵王ラインと呼ばれる県道を辿って、蔵王温泉のバスターミナルへは午後2時30分過ぎに入ることができました。温泉街と日本最大のゲレンデを持つスキー場からなるこのエリアは、標高約800メートルと盆地よりもかなり高い場所であるのですが、雪の量はかなり少なめでした。樹氷通りと命名された通りを南へ、蔵王ロープウェイの山麓駅へと歩を進めました。沿道は民宿やペンションが多く、有数のスキーリゾート地としての景観が連続していました。温泉街に近いゲレンデはまだ雪も少なく地面の色も見えていまして、滑走はまだ難しいように見えました。

 山麓駅からロープウェイに乗り込み、中継点である樹氷高原駅へと向かいます。高度を上げるにつれて、周辺の山々に降り積もった雪の量も増えていきまして、山形盆地から出羽山地へと続く眼下のパノラマも広がるようになっていきます。木々は薄く雪を纏って、極上の絹のヴェールで包み込んだような風景が展開されていきます。山の上は雲に覆われていまして、空気も風も鈍色に包まれるような色彩を呈していましたが、彼方に見通す盆地や標高の低い山の部分はスポット的に陽光に覆われている様子も見て取れまして、冬の鮮やかな陰影を存分に観賞することができました。

蔵王ロープウェイ

蔵王ロープウェイから見た風景
(山形市蔵王温泉、2016.12.24撮影)
蔵王ロープウェイ

蔵王ロープウェイから見た風景
(山形市蔵王温泉、2016.12.24撮影)
蔵王ロープウェイ

蔵王ロープウェイから見た風景
(山形市蔵王温泉、2016.12.24撮影)
山形駅前

山形駅前の風景
(山形市香澄町一丁目、2016.12.24撮影)

 樹氷高原駅でロープウェイを乗り換えて、さらに極寒の蔵王の空中を突き進みます。樹氷高原駅の標高は1331メートルで、ホワイトボードに「気温マイナス7℃」と表記されていました。さらに上の蔵王山頂駅の標高は1661メートルで、気温は氷点下10℃となっていまして、関東地方の平野部ではまず経験できない厳冬の世界へと向かうこととなりました。このあたりまで来ますとゲレンデは十分な雪の量を蓄えていまして、多くのスキーヤーやスノーボーダーが滑っている風景を見下ろしました。木々もたっぷりと雪を羽織って、まさに銀世界の様相でした。山上の休憩施設から外へ出てみましたが、あまりの寒さにほとんどその場にとどまることができず、すぐさま室内へ退散して、暖かい場所から樹氷の様子を観察しました。本格的な雪の季節が始まったばかりの樹氷は、まだ枝を数十センチほどくるんだほどのものでしたが、「スノーモンスター」とも評される、冬の造形はどこまでも厳しく、また気高い自然の有様をリアルに表現しているように感じられました。

 帰りのバスに間に合うようにロープウェイに再び乗り込み、山麓へと引き返しました。夕刻が近づくにつれて山頂駅付近はガスが巻くようになり、雪が張り付いた鉄柱の寒々しさとともに、極寒の当地の気候をまざまざと見せつけていました。そのような身も凍るような風景をやわらかく溶かすように時折日射しが指して、雪の山肌に日が射したときの光景は、筆舌につきしがたい神々しさに満ちていました。

 
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