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私のとっての「地域」

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#1 等質地域と結節地域(1)

地域を見つめるためには、さまざまな視点があります。そして、その見方の1つとして、基本的に「間違った」ものはないと思っています。地域を見る人の視点、地域を分析するための指標、そして地域のスケールなどによって、そこにはさまざまな地域が現れるものです。基本的に、と書いたのは、そういった多様な視点の中には、誹謗中傷のニュアンスを含んだり、著しく客観性を欠いた判断であったりなどの、社会通念上ふさわしくないと思われるものも含まれ得るためです。ただし、そういった偏った条件下において創出される「地域」も、地域が包含する諸要素が重なり合って生み出されるものであるという考えに立てば、それはまさに多様な地域の肖像の1つであるとも言えるわけで、それらの蓄積の上に、地域に対する漠然としながらも、明確に人々の心に焼き付けられたイメージが存在しているということになるのだと思います。このことは、私たちが地域を見つめる上で、最も忘れてはならないことの1つではないかと思います。私たちが地域に接する姿勢1つによって、よいイメージ、悪いイメージ、さまざまな地域のイメージがつくられてしまうのです。ですから、私たちはより平かな心構えで、そして偏った目で地域を見るのではなく、たくさんの方向から、公平な感覚をもって地域を見つめて、その地域をより豊かに捉えていく努力が必要なのだと思います。このコラムでは、しばらくは地域を見つめるための手法を、ご紹介していこうと思います。そして、それらは私が地域に向かうにあたり大切にしている視点でもあります。

地域を分析するにあたり、地理学では「等質地域」と「結節地域」という概念がしばしば用いられます。結節地域は、「機能地域」と呼ばれることもあります。難しそうな言葉ですが、私たちが地域を見る際にも、無意識のうちにこの2つの観点による地域の判断をしていることも多いように思います。手許に地理用語辞典があるわけでもなく、正確なお話ができないかもしれませんが、ざっとご紹介いたします。

等質地域というのは、その言葉のとおり、地域を構成する要素の1つまたは関連した複数の要素に注目し、その要素が似通っていることを条件に確定した地域のことです。「地域」とは、一定の土地の広がりを指すもので、必ずしも一定の範域をもつものではありませんが、統計データなどを利用する場合は、おのずと行政区域によって画された一定の範囲が分析対象になります。例えば、耕地の作付け品目別データを都道府県ごとにまとめた場合、東北地方や新潟県を含む北陸地方の諸県では、稲の作付面積が卓越するといった結果が出る場合、その範囲をもって、稲作の卓越する等質地域を設定することが可能です。また、「人口密度5000人以上の地域」とか、「サービス業従業者が総従業者の半数以上を占める地域」とか、さまざまな等質地域を考えることが可能でしょう。ただ、1つの範囲に注目することから、飛び地的な等質地域、ということは通常ないようです。1つの閉じた範囲で、かつ一定の条件を満たす地域、それが等質地域である、ということになろうかと思います。私の住む両毛地域も、渡良瀬川の流域を中心とした範域で、かつ伝統的に製造業に従事する人の多い土地柄でして、そういった視点からしますと、製造業にやや特化した「等質地域」である、と括ることも可能なのかな、と思います。でも、忘れないでください。こうした分析も、地域を見つめる多様な視点の中の1つである、ということを。このことが、両毛地域のすべてではないのですね。

ということで、今回は等質地域のお話を中心にさせていただきました。長々と文章を続けても飽きるだけですので(汗)、本日はここでペンを置きたいと思います。もう1つの概念「結節地域」については、稿を改めたいと思います。                                                        
 (2004年4月14日執筆)

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