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関東の諸都市・地域を歩く
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#57 古河を歩く 〜関東平野の只中を行く〜 2009年2月1日、北西の季節風が強く吹き付ける中、古河市役所古河庁舎(かつての古河市役所)に自動車を置いて、古河の町歩きをスタートさせました。2005(平成17)年9月に旧古河市と総和町と三和町が対等合併し新しい「古河市」が誕生したことに伴い、市役所本庁舎は旧総和町役場となったため、これまでの古河市役所はこう呼ばれるようになりました。3月には桃が一斉に咲き誇り「古河桃祭りが盛大に開催される古河総合公園へ向かいました。吹きすさぶ空っ風の中、桃の木はやがて訪れる春をただひたすらに待ち続けていました。
古河市は、しばしば地理的な位置づけが問題にされることがあります。茨城県に属しながら、県庁のある水戸市へは相対的に距離があり、東北本線や国道4号などで直接結び付きのある埼玉県や東京方面、そして栃木県との関わりが日常生活面ではより強いことが知られます。歴史的にも古河一帯は複数の国の境界線が収束している地域であることも特筆されます。古河自体は下総国の所属ですが、武蔵、下野、常陸、上野の国境が迫っており、渡良瀬川に架かる「三国橋」にその名残を見ることができます。利根川や渡良瀬川が合流する土地柄と、関東平野のほぼ中央であることなどの要素が微妙に影響して、行政的な境界線が交錯する状況を生んだと言えるのかもしれません。 しかしながら、このことは古河の地がだだっ広い関東平野のまさに「ど真ん中」であり、水運の上でも重要な要衝であったことを示すものでもあるということで、室町期には古河公方の存立により中世において一定の存在感を示したのをはじめ、近世以降は古河藩のもと日光街道の宿駅として栄え、古来万葉集にも地名が見えるなど、結節性においても、拠点性においても、卓越した地域性を維持し続けたことは見逃すことができません。総合公園内には県指定史跡である五代古河公方足利義氏墓所である徳源院跡や、初代古河公方成氏が築いた鴻之巣墓所である古河公方館跡(県指定史跡)が残り、往時をしのばせています。
古河総合公園から渡良瀬川の堤防の上に出て、身を刺す強烈な寒風が吹き抜ける中、男体山をはじめとした日光連山や筑波山を遠くに望みながら現代の古河の街並みを眺めました。三国橋の南の堤上には「古河城本丸跡」と記された簡素な標柱が設置されていました。近代の渡良瀬川の河川改修により、古河公方以来古河藩政の拠点であった古河城の大半は、現在は河川敷へと移り変わっています。三国橋の東詰から北に入り古河市街地へと向かう県道沿いに佇む頼政神社(前述の河川改修に伴い現在地に移転)は、わずかに残されたかつての古河城の土塁上に建てられています。 県道沿いは近世から現代に至るまでの町の移り変わりを濃厚に感じさせる落ち着いた佇まいが印象的で、土蔵や町屋造の建物も多く残されていました。中高層マンションも屹立する古河駅前を一瞥しながら、旧国道4号でもある県道261号を北へ進みます。この道路は旧日光街道のルートの一部をなすもので、古河市街地のメインストリートと目される通りです。本町二丁目交差点付近には高札場跡や本陣跡が残り、古河の町の中心的な位置づけにあるエリアであったようです。旧日光街道筋はそのまま北へ向かい、駅前へ進む道路の信号の次の信号のある交差点で左へ折れ、最初の辻で再び北へ曲がって進んでいました。街道筋はカラータイルやガイド表示により見た目にそれと識別できるように工夫され、また近代からの道標も残されています。旧街道筋には歴史を感じさせる町屋や土蔵、茅葺の建物などを認めることができ、市街地に近い地域では商店街が形成されていました。
街道筋から西へ閑静な住宅地を進み、雀神社へ至る頃には夕闇が迫って、再び渡良瀬川を間近に見る頃には、広大な河川敷の彼方に美しいオレンジの夕日を眺める時刻となっていました。冬の澄んだ空気を通り抜けて目に飛び込んでくる橙色の空の片隅には富士山のシルエットも添えられていました。 薄暗くなった市街地を南へ、古河庁舎へ戻る道程にも、明治の初期から昭和の初めまで存在した梅の名所をはじめ、古河の町の礎となった事物を目にすることができました。河川改修によりその多くが失われた古河城址の以降も、城門が移築されるなど現在でも市街地の中にその名残を留めており、歩けば歩くほど、もう一度しっかりと辿ってみたい、懐のある街並みであるように感じられました。それは関東平野のまさにど真ん中に位置する古河の町が有する、とめどないポテンシャルであるのかもしれません。 |
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