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霊峰富士、信仰と恩寵の道


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#1 初めての富士登山 〜「山の日」に吉田口からの登頂〜

 2017年8月11日、早朝の新宿駅前をツアーバスで出発し、中央高速を西へ進み、富士スバルライン五合目へと向かいました。この日は新宿駅前にいた時点からどんよりとした曇り空で、富士スバルラインを進んでいる間に一時的に晴天が覗いた時間もありましたが、五合目駐車場の売店が建ち並ぶエリアに到着した時には再びガスが立ちこめる陽気となっていました。時刻は午後1時前。山の日ということもあって、富士登山を目的としたたくさんの人々で溢れていました。売店内にあるコインロッカーに不要な荷物を預け、事前にレンタルしていた装備等を整え、午後2時過ぎ、いよいよ初めての富士登山の一歩を踏みしめました。この五合目での小休止の間にも、青空が見えたり、再び雲に包まれたりと、めまぐるしく変化していました。富士スバルライン五合目の標高は2305メートル。ここから日本最高峰を目指します。

富士スバルライン五合目

富士スバルライン五合目
(2017.8.11撮影)
六合目までの山道

六合目までの山道
(2017.8.11撮影)

吉田口登山道へ向かう道と分岐

吉田口登山道へ向かう道と分岐する
(2017.8.11撮影)
森の中を進む

森の中を進む
(2017.8.11撮影)
六合目

六合目・富士山安全指導センター
(2017.8.11撮影)
六合目付近

六合目付近の登山道
(2017.8.11撮影)

 五合目からは道幅の広い、比較的ゆるやかな山道を辿る形となります。ここから六合目までは富士吉田市乗馬組合が馬による移動サービスを提供していまして、歩いていますとしばしば馬とすれ違います。富士山には、この日利用する吉田ルートのほか、静岡県側からの富士宮ルート、御殿場ルート、須走ルートの4つの登山ルートがあります。富士登山では、これらのルートがそれぞれ別々の色で統一された標識によって案内されていることを教えられます。吉田ルートと須走ルートは本八合目以降は登山道を共用するため、下山口を間違えないよう注意喚起もされます。なお、吉田ルートは黄色、須走ルートは赤がサインに使用されています。

 五合目付近は富士山の森林限界と重なっていまして、登山道はその森の中を進んでいきます。木々は根元で大きく曲がっていまして、冬季における厳しい自然環境を想起させます。およそ30分ほど歩き、泉ヶ滝のポイントで吉田口五合目方面へ進む道と分かれて、六合目への登山道へと入っていきます。初めのうちは森の中ですが、次第に視界が開けるようになり、シェルターの中を進む箇所もありました。だんだんと登山道の勾配がつき始めて、日本一の山へと向かう気分が高まってきますと、富士山安全指導センターの建物へとたどり着きました。ここが六合目で、北口本宮富士浅間神社から続く吉田口登山道とはここで接続します。センターの入口に掲出されていた天気予報は、曇り時々雨、気温9度。周辺は相変わらず濃い霧が立ちこめていました。時刻は午後3時を回っていました。


七合目

七合目・花小屋付近
(2017.8.11撮影)
登山道

多くの山小屋がある登山道を進む
(2017.8.11撮影)

七合目救護所付近

七合目救護所付近
(2017.8.11撮影)
青空が見えていました

青空が見えていました
(2017.8.11撮影)
岩場を進む

岩場を進む
(2017.8.11撮影)
鳥居荘付近

鳥居荘付近
(2017.8.11撮影)

 六合目からは森林限界を完全に越えて、本格的な登山ルートとなります。最初のうちは背の低い木々や土留めなどがあるエリアを過ぎますが、程なくして噴石や軽石が卓越した、ジグザグの登山道を進む形となります。霧は依然として深く視界を覆っていまして、頂を目指す登山者の目線を遮っていました。吉田ルートは六合目から先は登りと下りが別ルートとなっているため、下山する人の流れと行き違うことがありません。七合目の最初の山小屋「花小屋」の手前あたりからは岩場となり、慎重に足を運びながら上を目指します。山小屋の周りは多くの登山客が休憩をしていまして、活況を呈していました。七合目(標高2700メートル)到着は午後4時30分。天候や健康への配慮から、山小屋へ到着する度に休息をとりながら進んでいきます。七合目から先には多くの山小屋があって、登山者を迎えています。混雑している山小屋前では敢えて小休止せず、まとまったスペースを確保できる場所へ進んで立ち止まるといったこともしばしば行われました。

 標高が増につれて、雲のわずかな間からかすかに青空が見えるようになり、七合目救護所付近では一時雲が晴れて、青空が広がりました。眼下への視界は利きませんでしたが、ゆるやかに続く山のラインが確認できて、日本一の山の偉容を実感することができました。その後も雲が晴れたり、霧に包まれたりといっためまぐるしい天候の変動の下、岩場が連続する山道の急登が続きます。鳥居が登山者を迎える鳥居荘や東洋館などを過ぎ、途中で比較的長いインターバルを挟みながら、本八合目(3370メートル)先の御来光館には午後7時に入ることになりました。辺りはすっかり暗くなっており、この頃までには雨が降り始めていました。ここで食事と仮眠をとり、いよいよ明日の登頂を目指すこととなります。

山頂

山頂の景観
(2017.8.12撮影)
富士山頂の朝焼け

富士山頂の朝焼け
(2017.8.12撮影)

八ヶ岳を望む

八ヶ岳を望む
(2017.8.12撮影)
下山造

下山道の風景
(2017.8.12撮影)
富士山の山肌

富士山の山肌
(2017.8.12撮影)
河口湖

晴天の下の河口湖
(2017.8.12撮影)

 翌12日午前2時、山小屋周辺はかなりの雨がたたきつけていました。眼下には雷鳴が轟いていまして、時々まばゆい閃光が走ります。暗闇の中、御来光登山を目指すおびただしい数の登山者の列が一条のドットとなって連なっているのがはっきりと見えていました。揺れるヘッドランプのまたたきからは、人々の息づかいを感じることができるようでした。麓の山梨県河口湖の過去の天候データベースを参照しますと、11日夜から12日朝にかけては雨が降っていたようで、登山には生憎の天候となっていたようでした。雨が降り止まないまま、山頂を目指し登山を再開しました。登山道はかなり渋滞していまして、自然とゆっくりとしたペースとなりました。火山性の山肌を岩がごろごろする殺伐とした風景と、暗闇の中、共通の目的を持つ多くのハイカーとともに一歩一歩日本一の山の大地を踏みしめ、山道をただひたすらに登っていきました。

 手元に残っている写真の状況などから、山頂にたどり着いたのは午前4時過ぎであったと推測されます。人生初の富士登山は、雨模様の中での達成となりました。吉田口は河口の北側にあたるため、富士山最高峰、すなわち日本最高地点である標高3776メートルの剣ヶ峰へはさらに河口に沿って進む必要がありましたが、同行したガイドの判断によりお鉢めぐりとともに中止となりました。日の出の時刻が近づくにつれて空は茜色に染まって、御来光を望むことはできなかったものの、日本で最も高い場所からの朝焼けを、雲海がつくる壮大なグラデーションの元で目にすることができました。頂上で日の出を観た後は、吉田口までの下山ルートを進みました。天候は相変わらず曇りベースで推移しましたが、下るにつれてゆっくりと快方に向かい、往路では十分に観察のできなかった、火山としての富士山の地形を十分に確認することができました。下山ルートはつづら折れの軽石の多い、長い長い道のりです。上りの急登の連続もたいへんな体力を要しましたが、下りは足の疲労が半端なく蓄積する感覚で、五合目に到着後はすっかり体力を消耗してしまい、しばらく動くことができませんでした。休息を経て午前11時過ぎに帰路に就く頃には青空が広がっていまして、変わりやすい山の天気を実感することとなりました。



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