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都道府県花暦

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30.カキツバタ(愛知県)

萌えるような春のうららかな調べが終わり、風薫る5月を経て、雨が大地にやわらかく迎えられる季節へと移り変わっていきます。花の色も、春の滾るような命の生まれる喜びを感じさせる暖かい風合いの色彩から、命の重みや深さ、素晴らしさを内包させた味わいを滲ませながら、大地を潤す水色をたおやかに受け継いでいるかのような色のものが心なしか目立つようになってくるように思いますね。

愛知県の花、カキツバタ(杜若)も、そんな豊かな色彩を慎ましさと、爽やかさとをかもし出す花の1つだと思っています。水分を軽やかにまとった、涼やかな空気と、かすかに鈍色に佇む空の下、極上の濃紺色をなびかせるカキツバタの花には、筆舌に尽くし難い気品が溢れているかのようです。

カキツバタが愛知県花に制定されたのは、伊勢物語の有名な一節に基づくものであることは、よく知られていることと思います。在原業平と伝えられる男が、三河の八橋(現在の知立市)を訪れたとき、カキツバタの5字を詠み込んだ和歌は、あまりにも著名ですね。

ら衣/
つつなれにし/ましあれば/るばるきぬる/びをしぞ思ふ

カキツバタ

カキツバタ(YSK画)

さて、カキツバタと言いますと、「いずれがアヤメかカキツバタ」という言葉があるように、アヤメやハナショウブとの区別が難しいことがしばしば話題になりますね。実は、このことは、本「都道府県花暦」とも無関係ではありません。この後三重県花として、ハナショウブを取り上げなければならないのです。この三種類の植物の見分け方につきましては、ハナショウブの項でお話ししたいと思います。果たして、ハナショウブとカキツバタとを描き分けることができるか、本企画が始まって最も困難な(大げさ?)課題に、次回、取り組みたいと思います。乞うご期待です・・・。

鈍色の風は空へと杜若

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