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都道府県花暦

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8.桐の花(岩手県)

春も深まり初夏の声を聞く頃、家々の合間や集落のはずれなどに植えられた桐の木の高いこずえに、鮮やかな紫の花がつきます。早春の梅やスイセンから始まった春は(私は寒風に吹かれながら青い小さな花をつけるオオイヌノフグリにいち早く春を感じるのですが、こんなに可愛い花なのに、なんてひどい名前がついているのでしょうね・・・)、ソメイヨシノの満開に及んでひとつの高まりを迎えるのですが、桐の花はその時期が過ぎて、いよいよ日差しが強くなり、初夏のさわやかな暑さが加わってくる時期に、地上の爽快さ、空の屈託のない青さに負けないくらいのインパクトと、シャープさを迎えた気候に一定の「やさしさ」とを与えてくれる花のように思います。

さて、岩手県の桐の木は、県のホームページによる解説を引用しますと、材の光沢が強く淡紫色をおびて美しいので「南部の紫桐」として知られておりまして、足利時代に遠野南部家が大和から苗を移したのが始まりと伝えられているのだそうです。


桐の花

桐の花(YSK画)

東北地方で桐の花と言えば、山里の春というイメージですね。昔(ってほど前でもないですが・・・)、私が学生時分に、福島県会津地方に、1週間ほど地理学に関する巡検に出かけたことがありました。その中で、只見川上流の河成段丘の調査を行ったのですが、三島町とか金山町あたりの山村地域には多くの桐の木が植えられていたのを覚えております。当地では伝統的に桐細工が産業として成立していたようで、その歴史が地域に多くの桐の木を繁茂させているということだったと記憶しています。以上は福島県でのお話ですが、岩手県においてもおそらく、同様に山里に多く植栽され、晩春にはあの鮮やかな蒼い花を咲かせているのではないでしょうか。

桐と言えば、桐たんすの材料でもあります。防腐性にすぐれ、材木に水分を多く含みやすいことから燃焼しにくいなどの利点を備えた桐たんすは、高級家具としていわゆる「嫁入り道具」として珍重されたといい、よく女子が生まれると、庭に桐の木を植えて、嫁入りの時にその木を使ってたんすをつくり、持たせたなんて逸話も耳にします。この話に現れておりますように、桐の木は昔から人々の生活に密着したところにあって、あの蒼い花はそんな生活に根ざした季節感の1つとして鮮烈に存在してきたといえるのかもしれません。


石飛ばす遥かに上の桐の花

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