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都道府県花暦

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7.りんごの花(青森県)

北国に遅い春が訪れる4月下旬から5月はじめにかけて、津軽平野一帯は、やさしい花の色に包まれます。青森県名産の「りんご」が、いっせいに花を咲かせるのですが、岩木山を背景とした、りんご畑の花が広がる風景は、青森県の春を象徴する風物として、全国的に知られるようになりましたね。私はまだこの目でそのたおやかな花を見たことがないのですが、ぜひとも、確かめてみたいな、とも思いますね。

りんごの花と言うと、どことなく青春の香りが漂います。島崎藤村の有名な詩「まだあげそめし前髪のりんごのもとに見えしとき・・・」(初恋、『若菜集』より)が想起されますが、これはまさに、初々しい恋のさまと、春先に淡い花を咲かせるりんごの花のイメージとが、絶妙に重なる、甘ずっぱさに溢れた詩ですよね。りんごの花には、このような、慎ましやかでありながら、また同時に内には熱い思いを秘めたような、ささやかながらも芯のとおった純情のごとき、色彩を感じます。


りんごの花

りんごの花(YSK画)

また、りんごの花の淡い色彩には、青森県の地にりんご栽培を根づかせ、全国一の規模にまで押し上げた農家や品種改良などに携わった人々の労苦や、受粉作業や剪定作業など、複雑にわたる農作業の苦労など、りんご栽培にかかる多くの汗と涙も滲んでいるようにも感じます。北国の厳しい自然環境や、その中で真摯にりんご栽培に取り組んだ人々のひたむきな努力。そういった思いも内包させながら、りんごは長い冬を越し、穏やかな春、いっせいに花を咲かせている、地元の皆さんの感覚からすれば、そのような思いもあるのではないでしょうか。そういった思いがあるからこそ、あの淡い色の花は、多くの人々の心をうつのかもしれませんね・・・。

今、りんごは収穫の時を迎えています。早生種の流通が本格的にはじまるなかで、いよいよ主力品種の1つである「ふじ」の出荷も11月にピークを迎えることでしょう。実を申し上げますと、私はフルーツの中ではりんごが一番すきなのです。今年も、ゆたかな実りと農家の皆さんのご尽力に感謝をしながら、おいしくいただいております。


歩みゆく轍かくあり林檎咲く

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