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関東の諸都市・地域を歩く


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#37 下館の町を歩く 〜商家建築も残る県西の中心都市〜

 小山市から東へ向かい、結城市を過ぎるあたりまではバイパスが整備されて中心市街地を迂回する国道50号は、下館の市街地が近づくにつれて中心市街地へと入るようになり、車線も片側一車線へと減少します。小貝川を渡り、JR水戸線の線路を越えますと、下館の市街地は間もなくです。下館駅から分岐する真岡鐡道を越え到達する市街地は、馬の背のような台地が南北に張り出す格好になっている場所に展開しているのが特徴です。その高台は大町交差点で国道50号と交差する道路にほぼ並行しています。国道50号を西から東へ進みますと、大町交差点をピークに、両側が結構な勾配の坂となっていることが自動車で通過していても明瞭に分かります。東に勤行(五行)川が流れるこの台地は天然の要害として、中世城郭が形成される基盤となりました。城は藩政期を経て明治維新まで下館のランドマークとして存在していたのだそうです。城跡は現在の下館小学校及び八幡神社境内等となっています。

 下館も結城と同様、国道50号を通過するのみでした。その中で上述の坂道を下ったあたりに集積する町屋建築の存在が気になっていました。そこで、国道を南へ曲がり市役所にて自家用車を下車し、下館の町を散策してみることといたしました。下館市は、2005(平成17)年3月28日に、真壁郡の関城町、明野町、協和町とともに合併し、現在は筑西市(ちくせいし)という名前の自治体となっています。彼方にうっすらと筑波山の双耳峰を望む勤行川の穏やかな流れに接する筑西市役所を後にして、JR下館駅方面へとまずは向かいます。

五行川

五行(勤行)川と筑波山
(筑西市下中山、2007.9.8撮影)
スピカ

JR下館駅前・スピカ
(筑西市丙、2007.9.8撮影)


駅前通りの景観
(筑西市丙、2007.9.8撮影)
アルテリオ

アルテリオ(しもだて美術館)
(筑西市丙、2007.9.8撮影)

 住所地名で「甲」「乙」「丙」となっているエリアが下館城下町と符合するのでしょうか。そのうちの「丙」のエリアの大半はエリアを南北に貫く歩道も確保された大通りを中心に区画整理が進んでおりまして、駅前の商業施設「スピカ」等と連接した新しい市街地として整えられています。寄棟造りのシンプルなJR駅舎とは対照的に、駅前の商業地域は明るい現代の町並みの中にありました。この大通りを北へ進みますと、左手にガラス張りのファサードが現代的な印象の「しもだて地域交流センター・アルテリオ」の建物が一際目を引きます。下館祇園祭で使用される大神輿と山車が展示されているスペースや各種研修室、ギャラリーのほか、「しもだて美術館」が入る文化施設です。通りを挟んだ東側には県の合同庁舎があり、茨城県西部における行政的な中心都市である下館の地勢を感じさせます。

 駅前通りをさらに北へ進み、国道50号との田町交差点へと至ります。周辺の交差点名に「金井町」や「大町」、「泉町」などが見られることから、これらの町名が字名あるいは自治会名等として息づいていることが理解されます。田町交差点から東の金井町交差点までの区間及び金井町交差点から北へ入った道路沿線が下館における伝統的な町屋建築が集積するエリアであるようです。黒塗りの重厚な雰囲気を醸す商家や、町屋造りの建物に洋風なモルタル塗りの塔屋のような建物が隣接する建物があるなど、モダンな雰囲気も感じさせる町並みは、下館の町が明治期以降も引き続き隆盛が続いたことを示しているように感じられます。

板谷波山記念公園

板谷波山記念公園(田町交差点角付近)
(筑西市甲、2007.9.8撮影)
田町〜金井町

国道50号、田町〜金井町の景観
(筑西市甲、2007.9.8撮影)
金井町

金井町交差点
(筑西市甲、2007.9.8撮影)
大町

国道50号線、大町交差点東付近
(筑西市甲、2007.9.8撮影)
大町

大町の通りの景観
(筑西市甲、2007.9.8撮影)
たつみ坂通り

たつみ坂通り
(筑西市乙付近、2007.9.8撮影)

 金井町交差点から国道50号を西へ戻り、郷土出身の陶芸家・板谷波山記念公園などを一瞥しながら、大町交差点への坂を上ります。この坂は住所地名で言うところの「甲」地区と「丙」地区の境界線上に沿っていまして、市街地内では10メートル近い比高の崖を形成している部分もあります。この高まりの一帯が「甲」地区のエリアと一致しているようで、下館城下町における重要な立地であることをうかがわせています。50号沿線は坂道となっているものの、両側は建物で概ね充填されています。

 坂上の大町交差点から南へ折れて、再びJR下館駅方面へと進みます。大町の通りは両側に商店街が形成されているようで、金井町周辺ほどではないものの昔ながらの町屋造りの商家もあって、この通りが下館における伝統的な中心商店街のひとつであることが十分に理解されました。駅前に近づくにつれて焦点の密度が増していきます。通りは緩やかに東方向へカーブを描きながら、「たつみ坂通り」と名づけられた坂道を下って、駅前のロータリーへと連接していきます。下館の町は区画整理により現代的に整備された駅前周辺から田町交差点までのエリアと、金井町付近や大町の通り沿いに見られるような昔ながらの町屋や商店街の景観が対照的な姿を見せる町であるように思われました。

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