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関東の諸都市・地域を歩く


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#89 奥日光、秋と夏の自然 〜小田代ヶ原と戦場ヶ原、千手ヶ浜を歩く〜 

 奥日光は、一般的には日光市のうち、いろは坂を越えた西側、群馬県境に至る一帯を指します。古来より山岳信仰の場所として開かれ、その流れで開かれた日光山内と総称される二荒山神社、輪王寺、日光東照宮は世界文化遺産に指定される霊場となっています。近代以降はその豊かな自然とヨーロッパに似た気候が外国人に注目されると避暑地として開発されることとなり、今日多くの人々が訪れる観光地となっています。修験の場であった歴史と厳しい自然環境もあって豊かな自然が残されている奥日光をめぐります。
 
小田代ヶ原の森と秋空

小田代ヶ原の森と秋空
(日光市中宮祠、2013.10.13撮影)
小田代ヶ原

小田代ヶ原の景観(右は男体山)
(日光市中宮祠、2013.10.13撮影)
小田代ヶ原

小田代ヶ原と日光連山
(日光市中宮祠、2013.10.13撮影)
小田代ヶ原・貴婦人

小田代ヶ原・「貴婦人」と呼ばれるシラカバの木
(日光市中宮祠、2013.10.13撮影)

 高地にある奥日光は秋が早くやってきます。いろは坂から中禅寺湖畔までの高低差は約400メートル。さらに龍頭の滝付近における段差を経て戦場ヶ原付近までに120メートル上がり、湯元までにさらに100メートル標高を重ねます。2013年10月13日は、戦場ヶ原の南、赤沼駐車場から低公害バスに乗り、戦場ヶ原の西に広がる草原・小田代ヶ原へ向かいました(小田代ヶ原から千手ヶ浜への車道は一般車両の立ち入りは制限されています)。男体山をはじめ、大真名子山、小真名子山などの日光連山に囲まれた草原は草紅葉で彩られていまして、クリアな秋空の下、雲が行き過ぎるごとに日が射したり翳ったりして、その表情を変えていました。シラカバが輝くような白い幹を見せて美しいアクセントとなっていまして、色づきが進むカラマツや周囲の山々の森とともに極上の秋の風景を構成していました。

 小田代ヶ原を代表する事物として、草原に凛として佇む一本のシラカバの木があります。その瀟洒な立ち姿から、「貴婦人」の名で呼ばれていまして、朝霧や雪景色の中に浮かび上がる貴婦人の光景は、多くの写真家の羨望の的となっています。草原を周回する遊歩道を歩きながら、穏やかに静かな季節へ向かう小田代ヶ原の風景に浸りました。小田代ヶ原は戦場ヶ原や湯ノ湖、湯川にまたがる地域とともに、「奥日光の湿原」として2005年11月、ラムサール条約の登録湿地となりました。現在の小田代ヶ原は湿原から草原への移行過程にあるようで、草原と湿原の双方の生育域とする植物が認められています。

竜頭の滝

竜頭の滝
(日光市中宮祠、2016.10.16撮影)
竜頭の滝

国道120号の橋梁から竜頭の滝・中禅寺湖を望む
(日光市中宮祠、2016.10.16撮影)
湯川と遊歩道

湯川と遊歩道(竜頭の滝〜戦場ヶ原)
(日光市中宮祠、2016.10.16撮影)
戦場ヶ原

戦場ヶ原
(日光市中宮祠、2016.10.16撮影)

 2016年10月16日に訪れた竜頭の滝は、紅葉が鮮やかに色づいて、紅葉が見ごろを迎えていました。中禅寺湖の奥、男体山の火山活動によって形成された岩盤を削って流れ下る滝は、戦場ヶ原をゆったりと流れてきた湯川の最下部に形成されています。岩盤を豪快に滑りながら二手に分かれて滝壺に一気に落ちる姿は奥日光の雄大な自然を象徴する事物の一つとなっています。竜頭の滝に沿って取り付けられた遊歩道を戦場ヶ原方面へ進み、国道がに架かる橋の上から竜頭の滝の向こうにわずかに中禅寺湖の湖面を望みました。国道を横断し、湯川に寄り添うように遊歩道を歩きました。木々は緑色から徐々に黄色やオレンジに色づき始める季節を迎えていまして、山道を穏やかにうずめる落ち葉を踏みしめながら、わずかに木々から漏れる秋の日を受けながら、快い散策を楽しむことができました。

 潤沢な水をのびやかに湛えるように行き過ぎる湯川の流れに癒されながら戦場ヶ原の南端に行き着きます。秋の変わりやすい空の下、男体山はその頂を雲に隠していましたが、戦場ヶ原は本当に美しく秋の色彩に身をゆだねていました。黄金色に染まる草紅葉とみずみずしい色彩の森や山々の間に、わずかに湯滝の姿を確認することもできました。

千手ヶ浜周辺の森

千手ヶ浜周辺の森
(日光市中宮祠、2014.6.14撮影)
クリンソウ群落

千手ヶ浜・クリンソウ群落
(日光市中宮祠、2014.6.14撮影)
中禅寺湖と男体山

千手ヶ浜・中禅寺湖と男体山
(日光市中宮祠、2014.6.14撮影)
千手ヶ浜

千手ヶ浜
(日光市中宮祠、2014.6.14撮影)

 最後に、初夏の奥日光の風景もご紹介します。2014年6月14日、早朝から昼過ぎまで尾瀬ヶ原を散策していた私は、その後金精峠を越えて奥日光に入り、中禅寺湖の西のほとりにある千手ヶ浜へと向かいました。こちらも上述のとおり一般の車両は侵入が規制されていまして、千手ヶ浜へのアクセスは、赤沼からの低公害バスを利用するか、中禅寺湖を航行する遊覧船を利用、または徒歩のいずれかの選択となります。樹齢200年ほどのミズナラやハルニレ、シラカバの純林もある天然の森に囲まれた千手ヶ浜は、おだやかに湖面のさざなみを受け止めていまして、まさに高原の静かな湖畔の風情を見せていました。湖の向こうには男体山の山容も美しく見通すことができます。千手ヶ浜はまたクリンソウの群生地としても知られています。サクラソウの仲間のクリンソウは訪れたこの日はその麗しい花をいっぱいに咲かせていまして、初夏の森の木陰を飾っていました。

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