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関東の諸都市・地域を歩く
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#91 白岡市の森と町と村落景観 〜ベッドタウンとして成長した街並み〜 2014年9月28日、見沼田んぼの秋を訪問した帰路、武蔵野の原風景を構成する「森」の風景を、立ち寄った白岡市内にて確認しました。白岡市の東を縦断する県道65号(旧日光御成道)に程近い「彦兵衛下小笠原遺跡ふるさとの森」は、秋を迎えて濃い緑の葉を徐々に薄くし始めているところでした。樹齢100年近いと思われるケヤキの木をはじめ、雑木林を形づくるクヌギやコナラといった落葉樹が大切に保存される森は、周囲の田園風景と程よく隣り合いながら、四季折々、みずみずしい色彩を輝かせているようでした。周辺にはそば畑が広がっていまして、白と緑とが織りなす仲秋のさわやかなグラデーションを完成させていました。
白岡市は埼玉県の東部の中ほど、JR宇都宮線(東北本線)沿線に存在する人口約5万2千人のまちです。都心へのアクセスが比較的容易であることから高度経済成長期以降順調に人口が増えて、2011(平成23)年4月に単独で市制施行し現在に至ります。湘南新宿ラインや上野東京ラインといった、都内の主な都心や副都心を連絡する路線系統を利用できることもあって、近年まで人口の増加傾向は継続しています。2017年9月30日、穏やかなニュータウンとして開発が進むJR新白岡駅より、白岡市の街並みを訪ねる彷徨を始めました。同駅は1987(昭和62)年に、周辺地域の人口増に伴い新規開業した駅です。整然と区画された戸建ての住宅街の中に中高層のマンションが点在する東口駅前を進み、白岡東小学校まで至りますと、東側には畑地と住宅が混在する農村的な景観へと移り変わります。付近には高岩地区の鎮守・高岩天満神社。創建は1424(応永31)年というその古社は、周囲ののびやかな田園風景に包まれながら、地域を見守っていました。 市指定文化財の朱塗りの山門が堂々たる威容を見せる忠恩寺を拝観しながら、そば畑や秋を彩る草花が清閑なたたずまいを見せる中を歩き、旧日光御成道を承継する県道さいたま幸手線へ。黄金色に色づく稲穂が残っていたり、借り入れが終わっていたりと、秋の香りに包まれる水田が爽快に目に入ります。白岡市名産の梨畑も随所に存在しています。道路に面して、江戸時代に設けられた一里塚が残っています。榎が植えられたその土の高まりは、江戸から十一番目にあたると、現地の説明版で解説されていました。将軍が日光東照宮参拝のために利用した道筋にあった一里塚は、粗放的な農村集落を進んだ街道筋にあってはかなり目立つ存在であったことが想像されます。
その後も、のびやかな畑地やそば畑、梨畑が住宅の間に広がる風景を跡付けながら、それぞれの集落に鎮座し信仰を集めてきた寺社を訪ねる散策を続けました。市東部に、菁莪(せいが)という、地名とは関連のない校名を持つ小学校と中学校が隣り合っています。この菁莪という言葉は、漢詩「詩経」に見える表現で、多彩な人材を育成することを意味します。町場から離れた村落にあっても、子息の教育に情熱を持った人物が活躍していたのではないかということを想像させました。菁莪小学校の西をゆるやかに流下する小河川は黒沼用水路。地域を灌漑するために掘削された用水路の一つです。一見して自然河川のように見える小川でも実は先人が地域を豊かにするために尽力した賜物であるわけです。白岡市をはじめとした埼玉県内には多くの人為的な用水路が構築されていまして、地域の発達史を今に伝えています。 黒沼用水路に沿って取り付けられた散策路「水と緑のふれあいロード」を辿り、白岡市役所付近まで進みます。歩道には「農耕車も通ります」の表示があり、この水路周辺の本来の用途への配慮もなされています。東北道をくぐって、JR白岡駅周辺の閑静な住宅街へと歩を進めました。東北道に近い場所には跨道橋の橋脚が立ち上がりつつありまして、JR白岡駅の東口から東へ延びて東北道をまたいで進む都市計画道路の建設や土地区画整理事業が進捗中であることを伺わせました。西口側は昔ながらの町場といった表現がぴったりの旧市街地然としたエリアです。JR白岡駅が信号所として開設される際、その名前の由来となった白岡八幡宮も近隣に所在しています。
都心に直結する大動脈たる宇都宮線からの血流により活性化された地域は、元来農村的な景観が卓越していた原風景に新たな一面を加えて、町と自然と農地とがバランスよく配された、豊かな生活環境をこの白岡の町にもたらしました。秋が徐々に深まる中地域に息づくさわやかな事物を訪ねるフィールドワークは、そうした地域のみずみずしい姿を濃厚に感じさせるものとなりました。 ※2017年9月30日分は、JR東日本主催の「駅からハイキング」に参加したものです。 |
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