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日高見の大地へ
~2010年、北上市街地・展勝地の春~

 2010年5月4日、晴天に恵まれた岩手県北上市を訪れました。県内有数の流通・工業集積地として成長するまちはまた、みちのく三大名所のひとつ・展勝地公園など多くの魅力を持ち合わせた場所でもあります。1日だけの駆け足での訪問でしたが、それは地域の自然と文化とを満喫できる行程となりました。

 



展勝地公園桜並木・馬車が行く
(北上市立花、2010.5.4撮影)
スミレ

みちのく民俗村でみつけたスミレ
(北上市立花、2010.5.4撮影)

訪問者カウンタ
ページ設置:2015年2月22日

 北上市街地を歩く

 なだらかな稜線が彼方までつづているような北上高地と、脊梁として列島を分かつ奥羽山脈の間、幾世相の時間を旅してきたかのような北上川の流れが大地を潤しています。滝のようだと形容される我が国の川にあって、傾斜が緩やかな部類に入るこの川の流れはどこまでものびやかで、雄大な地域の原風景を構成する土台となっています。2010年5月4日、早朝に地元を出発して午前10時30分にようやく到着した北上市内は、雲ひとつない春空のもとにありました。北上川とその支流和賀川が合流する位置にある北上市街地周辺を歩きながら、北上川が象徴する地域の姿を確認しました。

さくら野百貨店

さくら野百貨店前(現在アーケードは撤去)
(北上市本通り一丁目、2010.5.4撮影)
本通り

本通り商店街(現在アーケードは撤去)
(北上市本通り二丁目、2010.5.4撮影)
諏訪町

PIAすわちょうのアーケード(現在は撤去)
(北上市本通り二丁目、2010.5.4撮影)
諏訪町

PIAすわちょうのアーケード(現在は撤去)
(北上市諏訪町二丁目、2010.5.4撮影)

 散策をスタートさせた市役所は、かつて馬の体や衛生などを検査した馬検場が設けられており、わが国でも有数の馬市が立つ場所でした。農耕に欠かせない馬は東北北海道方面と関東関西方面との中継的な地の利も得て発展したと言います。高度経済成長期以降馬の需要は激減し馬検場は整理統合されて移転、1973(昭和48)年からは市庁舎が建つ場所になっています。

 市役所に隣接する数本の南北の通りは旧奥州街道とその沿線に発達した町場で、正式な宿駅ではなかったものの(間の宿)、北上川の舟運との関係で本陣や脇本陣が置かれる準宿場町として栄えました。この町の名前は黒沢尻(くろさわじり)といい、1954(昭和29)年に合併により初めて北上市が成立する前は、黒沢尻町という名称でした。市街地には学校名などに黒沢尻の名前が見まして、現在でも北上市街地を指して黒沢尻と呼ぶことも少なくないようです。さくら野百貨店周辺は黒沢尻の中心商店街で、訪問時は規模の大きいアーケード(PIAすわちょう・本町通り)のあるまとまった商店街が形成されていたのが印象的でした(2013年から14年にかけて順次アーケードは撤去されています)。

諏訪神社

諏訪神社
(北上市諏訪町一丁目、2010.5.4撮影)
諏訪神社・ベニシダレザクラ

諏訪神社境内に見つけたベニシダレザクラ
(北上市諏訪町一丁目、2010.5.4撮影)
おでんせプラザぐろーぶ

北上駅前の複合ビル
(北上市大通り一丁目、2010.5.4撮影)
大通りの景観

駅前大通りの景観
(北上市大通り一丁目、2010.5.4撮影)

 諏訪町のアーケード(当時)を抜けて、地域の総鎮守として崇敬を受ける諏訪神社へ。境内の桜はソメイヨシノ・ベニシダレともに見頃を迎えていて、黒沢尻の町を見つめた社殿を晴れやかに彩っていました。商店街から続く道路は都市計画道路として境内を貫通して整えられた新しいもののようで、そのまま北上駅前へと導かれていました。駅前には複合ビル「おでんせプラザぐろーぶ」やホテルの建物(現在は飲食店ビル「クレヨンタワー」に改装)があって、街の玄関口としての機能が集約されている印象でした。駅前の大通りは西へ江釣子地域や和賀地域まで延伸し、市の東西軸とされていることが想起されます。

 北上駅は東北新幹線の停車駅であるとともに、秋田県内陸の主要都市の一つである横手に連絡する北上線の分岐駅でもあり、また高速道路においても秋田道の起点となるなど、北上は交通上の重要な結節点です。このことから製造・流通に関連した事業所が集積し、岩手県下でも有数の産業エリア・人口増の続く地域が形成されていることも特徴です。

北上駅

JR北上駅舎(西口・在来線)
(北上市大通り一丁目、2010.5.4撮影)
北上駅東口

JR北上駅東口
(北上市川岸一丁目、2010.5.4撮影)
北上川

渡船上からの北上川の流れ
(北上市、2010.5.4撮影)
北上川越しの市街地遠景

北上川越しに見た市街地
(北上市立花、2010.5.4撮影)

 コンクリート造2階建てのシンプルな駅舎が運用される西口から、新幹線に併設された現代的なファサードの東口へ移動し、北上川方面へと歩を進めます。対岸にある展勝地公園へはさくらまつり期間中は渡船が運行されており、それを利用して向かうことができます。河川敷に建つと視界が一気に開けて、ゆるやかに流れる川と背景のしなやかな山並み、そしてそれらをやさしく包み込む新緑がどこまでもみずみずしくて、快晴の春空と陽光に照らされて輝きを見せていました。

後半へ続きます。



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