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奄美大島・星空の下の小宇宙(シマ)
エピローグ ~星空の下の小宇宙~ 2016年8月25日から始まった奄美大島での彷徨は、26日に島の南部へたどり着き、27日は加計呂麻島に至り、28日は再び名瀬周辺を訪問して終わりました。奄美での最終日となった28日の行程は、名瀬市街地北方の大熊展望広場から改めて奄美の中心都市として成長を遂げた名瀬の街並みを俯瞰するところから始まり、龍郷町内の自然や歴史的景観や史跡を訪問しながら奄美空港へ向かい、島を離れるというものでした。龍郷町秋名集落では、サトウキビ栽培への特化や減反政策により、今日の奄美大島ではほとんど見られなくなったという水田風景を一瞥し、そこから奄美自然観察の森へと入って長雲峠周辺からの俯瞰風景を観察、その後西郷隆盛が明治維新で活躍する前に藩より奄美大島での潜居を命じられた際隠匿していたという住居(西郷南洲謫居跡)を見学し、安木屋場地区周辺ではソテツやバショウの群生地を、また今井崎灯台周辺では雄大な海と山の大パノラマを目に焼き付けました。 奄美大島や加計呂麻島での4日間は、小さな浦に開かれた小集落である「シマ」で育まれた文化を基底とし、亜熱帯のダイナミックな自然景観に包まれながら、近世から近代にかけて発達した様々な産業や都市(名瀬や古仁屋)の姿などが重層的に併存する、奄美の豊かな情景を存分に満喫できた時間でした。このような島に点在するシマがが鮮烈な山々の緑や宝石のようにきらびやかな海の明るさに抱かれる光景は、奄美でしかなしえない、唯一無二の抒情詩であるようにも思えてきます。その壮大な作品を構成するシマの日常や海岸での夕日、海峡のたおやかな入江、紺碧色の澄んだ海の青は、奄美大島という銀河に散りばめられた天体のようでもあるとも感じられました。奄美大島で見上げた夜空の素晴らしさは、こうした奄美の美しい姿をまさに投影していると。人生で初めて肉眼で確認した天の川のきらめきに、奄美で体現される小宇宙の崇高さを重ねました。
奄美空港を離陸するとき、相変わらず沖に停滞するようにあった台風の遠い影響により、刹那激しいスコールが滑走路を濡らしていました。空港周辺の大地は亜熱帯の雨水にかすみながらも、天より舞い降りる慈雨に感謝しているように静かな表情を見せているように感じられました。初日の名瀬の市街地を歩いていた時も、夏のような暑さに辟易しながらも、間欠的に町に降り注ぐ通り雨に亜熱帯を実感したことをふと思い出しました。俄雨が去った空に、微かに架かった虹の色は、どこまでも繊細に、この島とシマの多様性を象徴していたのかもしれません。 |
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