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#3 吉田口から山頂へ 〜早朝から日帰りでの登山〜 2019年8月2日、一昨年から登り続けて3年連続となる富士登山を目指し、深夜のJR新宿駅西口へとやってきました。週末の新宿駅前は真夏の暑さとともに多くの人々や車両で混雑していました。前年までの富士登山は御来光を拝むことが目的だったため山頂付近の山小屋へ宿泊したことから1日目の朝出発していましたが、今回は早朝に富士山に登りはじめ午前中のうちに登頂、その日の内に下山するプランのツアーに申し込んでいました。富士山近くの温泉施設に未明に到着して仮眠・支度を終え、翌3日の午前4時前、吉田口スバルライン五合目に到着しました。
吉田口スバルライン五合目には、休憩所や多くの土産物店・レストランなどが軒を連ねていますが、登山シーズンのこの時期でも、まだ薄暗い時間帯から空いているお店はありません。当然荷物も預けることができないため、不要な荷物はバスに残したまま、真っ暗な五合目を出発しました。五合目からしばらくはなだらかな下りの歩きやすい道であるため、ヘッドライトの明かりを頼りにゆっくりと歩を進めていきます。泉ヶ滝の分岐からは、いよいよ上り坂が始まります。しかしながら、六合目までは、針葉樹(ダケカンバやカラマツなどのようです)の森の中を進む、勾配の比較的きつくないルートを経由しますので、ウォーミングアップ的な歩行となります。森を抜け、シェルターのある部分を通過していきますと森林限界を抜け、六合目に到着します。登山安全指導センターもここにあります。五合目を出発してからは東の空が徐々に白み始め、地平線に生じたオレンジ色の帯が徐々に大きくなってきていました。山頂への見通しも利くようになっていました。午前4時50分過ぎ、雲海の彼方に上る日の出を見届けて、いよいよ本格的な登山へと進んでいきました。 眼下に雲海の広がる風景を見て、ジグザグに進む登山道を見据えますと、山頂は驚くほどクリアに眼前に見通せます。しかしながら、登山道は七合目、八合目、本八合目を経て続く長丁場の歩行となります。八合目以降は、八合五勺、九合とより細かく分けられていることも、道のりの険しさを物語っています。この日の富士山は雲一つ無い晴天で日射しがダイレクトに届くため、疲労感も増す印象です。七合目まではジグザグの山道がしばらく続いた後に、後半に岩場が現れるようになります。七合目の道中には複数の山小屋が存在しているため、適宜休息しながら、ゆっくりと歩を進めるようにします。七合目最初の山小屋の標高は2,700メートル、そして八合目は3,040メートルとなります。休憩する時間も息が整ってからもさらに長めに取るようにして、高所の環境に体を慣らすようにしていました。下界を見通すと、すっかり高く上った太陽の下、雲海の上に周囲の峰々がのぞく幻想的な風景が広がります。
前年は御来光を目指したため夕闇の中登った山道を、今回は自分のペースで歩んでいきます。本八合目より上は富士山本宮浅間神社奥宮の境内地となります。山道にはいくつかの鳥居があって、この道のりが信仰の対象としての富士山へと進むものであることを改めて実感させます。八合目元祖室には富士山天拝宮が隣接し、九合目の鳥居を過ぎた先には、迎久須志神社がこぢんまりとした祠を鎮座させていました。撮影した写真に記録された時間を辿りますと、七合目が5時34分、八合目が6時59分、八合五勺が8時45分、そして九合目が9時8分となっていました。やはり、「胸突八丁」と呼ばれる八合目の道のりに多くの時間を割いていたことになります。本八合目からは須走ルートが合流します。 九合から先は、さらに岩場を伴った急登が続いて、朝早くから登ってきた体力をさらに消耗させていきます。これまで登ってきた山道を振り返りますと、通り過ぎてきた山小屋と、そこを上がってくる人の波が本当に小さく望まれまして、富士山の圧倒的な大きさに息をのむような感覚になります。最後の岩場を含む上りを何とかくぐり抜け、山頂下の鳥居をくぐった時間は午前9時40分を回っていました。五合目からおよそ5時間ほどの山登りを経て、やっとのことで、人生三度目の富士登頂を果たすことができました。山頂の鳥居越しに眺望する雲海は、これまでの行程で見たどのそれよりも神々しく、日本で一番高い場所からの景色は格別な色彩に包まれていました。
山頂でしばし休息してからは、過去2回の登頂では果たせていなかった「御鉢めぐり」を実行しました。まずは久須志神社が祀られる吉田口山頂から時計回りに進んで富士宮口頂上へと進み、富士山浅間大社奥宮へ。山頂部を境内地とするお社は登頂を果たした多くの人々で溢れていまして、活気に満ちていました。参拝を済ませた後、大内院と呼ばれる、壮大な火口を仰ぎ見ました。日本一の山のてっぺんをまさにえぐり取っているその雄大な陥没は、筆舌に尽くしがたいほどの荒々しさを呈していまして、富士山が歴史上繰り返してきた火山活動のすさまじさを、この上ないほどリアルに表現しているように感じられます。そして、日本最高峰の剣ヶ峯へと進む、足場の悪い傾斜を登ります。剣ヶ峯は火口の脇に赤茶けた荒涼たる姿を青空にさらしていまして、この地を踏みしめたものにしか味わうことのできない、唯一無二の存在感でもって、訪れる者を見やっていたようでした。 御鉢めぐりを終えた後は、下山の集合時間を気にしながら下山を急ぎました。吉田ルートは上りと下りが別ルートになっており、また下山のルートはブルドーザ道を辿ることになるため、岩場のない道のりを進むことができます。とはいえ、かなりの時間を要して登ってきた帰路であることから、火山性の滑りやすい砂礫が続く下山道は足許を取られることも多くそれなりに体力を消耗しました。吉田口へ戻った時間は写真の記録がないため判然としませんが、集合時間よりは早めに下山できたように記憶しています。人生三度目の富士山登頂は、初秋の爽やかな晴天の下、素晴らしい風景に出会うことのできる行程となりました。 |
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