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9.フキノトウ(秋田県) 早春の野辺に、そっと顔を出すふきのとうは、そのほろ苦い味もあいまって、春の訪れを告げる風物詩として、多くの日本人から親しまれていますね。あの独特の風味は好みが分かれるところかもしれませんが、てんぷらにしたり、蕗味噌にしたりと、長い冬が息を潜めて、いよいよ暖かい季節へ移り変わっていくのだという、春の喜びとともに味わうものなのではないかと思います。 いきなり食い気に走った文章になってしまい恐縮ですが・・・、あの土の中から“ひょこっと”現れた姿もまた、愛らしいと思いませんか?土筆とか、福寿草などにも共通する感覚かもしれませんが、ついこの間まで何もなかった地面に彼らが慎ましくも、元気よく地面に這い出た姿を目にしますと、冬の間もこの日に備えて必死にエネルギーを蓄えていたのかななどの思いも重なって、本当に温かい気持ちになれるような気がいたします。そのようなフキノトウのささやかな“体温”が、春のうららかな日差しの下で、季節感をいっそう盛り上げるとともに、人々の心に温もりと癒しの心とを与えてくれているのかもしれませんね。
また、蕗と秋田と言えば、「秋田蕗」のこともお話しなければなりません。秋田蕗は、フキ属(キク科)の亜種でして、茎の長さ約1.5m 、茎の直径が5cm 、葉の直径が約1.3mほどもあるという、大型の蕗です。地元の民謡である「秋田音頭」では、『秋田の国では 雨が降ってもカラ傘などいらぬ 手ごろの蕗の葉サラリとさしかけ さっさと出て行がえ』と唄われているほどなのだそうです。昔は、北海道や東北各地で自生していた記録があるのだそうですが、今は栽培以外は、見ることができないのだそうです。あまりの大きさに肉厚で繊維質なために砂糖漬けにする以外に食用に向かず、栽培する農家も少ないということのようです。現在、秋田蕗は、秋田市で契約栽培農家が観光用に数軒栽培しているほか、鹿角市でわずかに栽培されているのみなのだそうです。 雪国の春、土がぬるみ、表面が融けはじめて少しざらざらし始めた雪が覆う湿った地面からひょっこりと顔を出したフキノトウが、春の緩やかな日の光をを受けてきらりと輝く。そんな光景が頭に浮かびます。 フキノトウ晴れのよき日に出発す |
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