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仙境尾瀬・かがやきの時
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#5 初夏の尾瀬、花と緑が彩る大地(後編) 前半から続きます。 見晴〜白砂峠〜沼尻 初夏の尾瀬は、本当に極上の緑の輝きに溢れています。尾瀬ヶ原の爽快な湿原の風景は筆舌に尽くしがたい光に満ちていまして、その輝かしさをいっそう盛り上げるのが、周辺の山々や拠水林の木々のみずみずしい緑色なんですよね。見晴から尾瀬沼へ向かうルートは、燧ケ岳南麓を行く山道です。ルート上最高点となる白砂峠付近の上り坂(「段小屋坂」と呼ばれているようです)も、透き通るような緑に癒されながら、しっかりとした足取りで進んでいきましょう。見晴に近い部分では木道が整備されているものの、次第に土が剥き出しになったり、木の根が張り出したりした山道へと変化していきます。降雨の後などは、場所によって水溜りがあったり、ぬかるんだりしている場合もありますので、一歩一歩をしっかりと踏みしめ、着実に歩を進めていくようにしたいものです。ヴァーチャルツアー#1では美しい紅葉に彩られた道程は、初夏の季節、若々しい緑色によって漲るような躍動を感じさせました。見上げると、初夏の日光に照らされた樹冠がさわやかに視界に広がります。 標高が増すにつれて、樹相はやがて落葉広葉樹にトウヒやコメツガなどの針葉樹が混交していきます。随所にやわらかな色合いを見せるアカヤシオなどのつつじの花にも癒されます。この頃には、山道は木道部分が少なくなり、歩行に注意を要するようになります。前方から登山者とすれ違うこともありますので、互いの足場に気を遣いながら、適宜ゆずりあって歩いていきましょう。進行方向右側、南の方向から聞こえてくる沼尻川のせせらぎの音に勇気づけられながら、白砂峠前の急坂を登りきりますと、一転して石が多く露出した下り坂になります。山道沿いには残雪がわずかに残っている場所があることもあります。踏みしめるスペースに気をつけながら、ゆっくりと下っていきましょう。下りた先にはヤマザクラが穏やかな花を青空に輝かせていまして、晩春から初夏にかけての命が萌え出ずる季節の雰囲気を濃厚に感じさせました。タテヤマリンドウの愛らしい青がアクセントとなっていた白砂田代を経て、落葉広葉樹と針葉樹とが交じり合った穏やかな森林の中を進む木道を歩みますと、尾瀬沼のほとり、沼尻平と呼ばれる湿原地帯に到達します。沼を望む休憩所で小休止といたしましょう。 <参考> 見晴〜沼尻 約5.0km 見晴出発 10:04 沼尻到着 11:20 (私が当日実際に歩いた時間です。参考にしてください)
沼尻〜大江湿原〜三平下 尾瀬ヶ原からは山頂を最後まで望むことができなかった燧ケ岳も、沼尻に至ってようやくその姿を見せてくれました。針葉樹林が混交する山裾の上に複数のピークを持つ山容が穏やかに眺められました。燧ケ岳は標高2356メートルの柴安ー(ぐら)のほか、俎板ー(標高2346メートル)、赤ナグレ岳(同2249メートル)、ミノブチ岳(同2234メートル)、御池岳の5山の総称で、「燧ヶ岳」という単独の名前の山はありません。尾瀬沼は、約8000年前に、柴安ーと俎板ーが生成した土石流によって沼尻川が堰き止められて誕生しました。その時土砂が流れた跡が「ナデッ窪」と呼ばれる凹地で、沼尻から燧ケ岳への登山道ともなっています。山肌が緑色ベースに染まる中、わずかに残雪が認められました。 沼尻から大江湿原を経て尾瀬沼東岸のビジターセンターや山小屋が集積するエリアまでは、針葉樹と広葉樹とが混ざり合う穏やかな森の中を通過する起伏の少ないトレッキングルートとなります。浅湖湿原のような小湿原を横切ったり、木々の間から尾瀬沼の湖岸が眺められたりと、景観も変化に富んでいて、緑が輝きを増す季節には、たいへんさわやかなエリアです。木道も大半の箇所で十分に整備されていて、歩きやすいのも特徴です。尾瀬沼の湖面は鏡のようになめらかで、そよ風のようにわずかに波立つ水面には、青空をゆっくりと流れる雲のひとつひとつが映りこんでいました。空が青く、湖も青く、木々も湿原もどこまでもさみどり色に輝いて、光と水と空気とが最高の状態でもって織り成す造形美をまさに目の当たりにしたように感じられました。7月下旬にはニッコウキスゲの大群落が出現する大江湿原を見下ろす位置からは、相変わらず鮮やかに初夏の光と青空とを返す尾瀬沼の湖面を介して、きらめくような緑に囲まれたビジターセンターが見えていました。 大江湿原は、福島県側から尾瀬に入山する最も一般的なルートである沼山峠休憩所からの道が通過する一帯に広がります。7月下旬、湿原一面にニッコウキスゲが咲き乱れる季節に訪れたときは、そのえもいわれぬ美しさにたいへん感動したのを覚えています。初夏を迎えて命の躍動感に満ちた色彩へと変化しつつある、今目の前に広がる湿原が、盛夏に至り、この緑のキャンバスいっぱいに山吹色の輝きを宿らせる山上の楽園へと一変するわけです。自然の素晴らしさを感じずにはいられません。燧ケ岳も、その独特の山頂部を森の上にわずかにのぞかせています。 沼山峠から進んでくる旧沼田街道筋の木道に突き当たり、南へ進めば間もなくビジターセンターに到着となります。ビジターセンター周辺には休息をとる多くのハイカーで活気に満ちていました。尾瀬沼エリアでは山小屋等が最も集積するこの場所で、十分に休息を取るのもよいと思います。ビジターセンターから三平峠へ向かうルートも、尾瀬沼に寄り沿いながら、穏やかな林の中を進みます。季節の花々もたくさん咲いていました。三平峠への山道が始まる麓に位置する三平下の手前で、尾瀬沼と燧ケ岳が一望の下に見通せる場所があります。三平下からは尾瀬沼とも別れを告げることとなりますので、この場所でしばし足を止めて、沼や山の美しい風景を目に焼き付けておきましょう。 <参考> 沼尻〜尾瀬沼ビジターセンター 約3.3km 沼尻出発 11:34 尾瀬沼ビジターセンター到着 12:18 尾瀬沼ビジターセンター〜三平下 約1.0km 尾瀬沼ビジターセンター出発 12:20 三平下到着 12:42 (私が当日実際に歩いた時間です。参考にしてください)
三平下〜三平峠〜大清水 三平下からは、尾瀬の入口のひとつ、大清水まで下山するルートを進みます。日帰りで尾瀬に入った私は、自家用車を駐車した戸倉まで、大清水から路線バスを使って戻らなければなりません。大清水から戸倉までは約9キロメートルの道のりで、尾瀬散策の後にとても歩ける距離ではありません。大清水を出発し戸倉を経由しながら沼田駅方面へ進むバスの最終便は午後3時50分発で、このバスの発車時刻前までに大清水に達していなければなりません。三平下を出発したのはこのちょうど3時間前の午後12時50分。三平下から大清水まで、約6.5キロメートルの踏破に出発します。三平下からも尾瀬沼を介して燧ケ岳がきれいに眺められます。しっかりと見届けました。コースの概況は、三平峠までの約1キロメートルは比較的ゆるやかな上りで、以降は急激な下りの山道が一ノ瀬休憩所まで約2キロメートル続き、最後は未舗装の約3.5キロメートルの車道(一般車は通行できません)を大清水までひたすら進むというものです。 三平峠までの上りは木道や木の階段が設置されて、見晴から沼尻へ進む段小屋坂に比べますとはるかになだらかで歩きやすい道です。三平峠には13時04分には到着していました。ここが太平洋側と日本海側とを分かつ中央分水嶺で、ここからは利根川の水系となります(群馬県と福島県の県境は尾瀬沼ビジターセンターのすぐ南あたりで、尾瀬沼が県境にまたがることからも分かるとおり、ここでも群馬県の範囲が日本海側の水系に張り出す恰好になっています)。峠からの下り道は一般のハイカーからしますとかなりの急勾配かつ足場の悪い下り坂となります。木道はごく一部に整備されているだけで、歩きやすい部分はほとんどないといってもよい状態です。ごつごつした石が葺かれた場所や、土や岩が剥き出しになった場所などがたいへんに多くて、急坂でもあることも手伝って歩行には相当の注意を要する山道が続いていきます。 道中では視界が開けて周辺の山々を大パノラマで眺望できる場所があったり、新緑の美しい林を目の前に穏やかに歩くことのできる場所があったり、湧き水があって喉を潤しながら休憩ができる場所があったりと、休息にはもってこいのスポットもありますので、無理をせず、一歩一歩を着実に踏みしめながら歩いていきましょう。道幅も十分に確保されていない場所が多いですので、他のハイカーとすれ違うときなどのゆずりあいの精神も大切にしたいものです。13時47分、一ノ瀬休憩所近くの三平橋を越え、未舗装の県道へと入ります。一ノ瀬休憩所で小休止後、大清水までの道のりは前述のとおり約3.5キロメートルです。道自体は平坦であるものの、まとまった距離があることに加え、山道をずっと歩き続けてきた疲労も重なりますから、かなり過酷な歩行となります。周辺は豊かな木々に覆われていますので、日陰を選びながら、鮮やかな緑の木々を眺めながら、穏やかな気持ちで進んでいきましょう。 長い長い未舗装道路を歩いて、大清水に到着したのは14時36分で、予定よりかなり早く辿り着くことができました。最終の一本前の15時発のバスを待ちながら、見晴でのカップラーメンとともにやはり尾瀬では定番にしている、名物の「花豆ジェラート」を食べました。下山後の陽射しはたいへん強くて、本格的な夏の到来を感じさせました。 <参考> 三平下〜大清水 約6.5km 三平下出発 12:50 大清水到着 14:36(私が当日実際に歩いた時間です。参考にしてください)
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