Japan Regional Explorerトップ > 地域文・その他 > 仙境尾瀬・かがやきの時
仙境尾瀬・かがやきの時
←#3のページへ |
#5のページへ→ |
||||||||||||||||||||
#4 初夏の尾瀬、花と緑が彩る大地(前編) 尾瀬周辺では、観光シーズン中は指定車両以外の通行を禁止する「マイカー規制」が行われています。開催期間は例年5月中旬から10月中旬までで、ハイカーが集中する5月から7月にかけてと10月中は毎日、またそれ以外の期間では週末を中心に設定されています。例年のとおり国道沿いの戸倉で自家用車を降り、乗合バスで登山口となる鳩待峠(はとまちとうげ)へと向かいました。約20分の所要で到着した鳩待峠は、雲ひとつない晴天の下、鮮やかな新緑に包まれていました。とはいえ、標高1600メートルの高地ゆえ、午前7時の山は気温も低く、冷んやりとしています。初夏の時期とはいえ、まだまだ厚手のフリースや手袋などの防寒対策は必要です。タオルを首筋に巻いておくと、外気が防寒着の中に入りにくくなって、保温効果が高まります。さわやかな朝の空気と輝きに溢れた緑に囲まれながら、尾瀬散策をスタートさせました。鳩待峠からは尾瀬ヶ原へ向かって緩やかな下りの山道を進んでいきます。 鳩待峠〜山の鼻 2007年6月16日午前7時、山道は緑に溢れていまして、快い空気に包まれていました。鳩待峠からは尾瀬ヶ原へ降りるルートのほか、至仏山へと向かう登山道や、横田代を経てアヤメ平、富士見峠方面へ向かうルート(鳩待通りと呼ばれるようです)も分岐しています。大半のハイカーは尾瀬ヶ原へと下る山の鼻への山道を進みます。ヴァーチャルツアー#1でも記載しておりますとおり、基本的に木道が整備されておりまた比較的傾斜も緩やかなため、歩きやすい山道です。緑が目に鮮やかな沿道では、ムラサキヤシオやオオカメノキ、ニリンソウ、シラネアオイなどの花々が咲いておりまして、快適な山歩きを楽しむことができます。視界が開けますと至仏山も望むことができるのも心躍らされます。これから歩く行程を考え、自分のペースを感じながら、長時間歩くことに慣れることにも努めましょう。また、観光シーズンとなっていることから早朝といえども入山者が多い場合があります。時にはパックツアー等の観光客がゆっくりと長蛇の列をなしている場面に遭遇することもあります。お互いに譲り合いながら、木道を進んでいきましょう。 山道を軽やかに下っていきますと、熊に人間の接近を知らせるために鐘が設置されている場所に到達します。この付近はちょっとした湿地帯となっており、ミズバショウも群生しています。この日はすでに葉が大きく成長した後で、花を残している株はわずかでした。しっとりとした水の溢れる景観と、緑の木々とがコラボレートする風景は、山の鼻へと進む途上にあって心癒される場所のひとつといえるかもしれません。新緑の森に朝日が差し込むさまはえもいわれぬほどの美しさとさわやかさです。やがて川上川のせせらぎが聞こえますと、山の鼻はまさに目と鼻の先です。雪解け水をいっぱいにふくませた川上川を橋で越えますと道は平坦になり、程なくして尾瀬ヶ原の玄関口のひとつ、山の鼻へと到着します。山の鼻にはビジターセンターのほか、数軒の山小屋やキャンプ場があります。尾瀬ヶ原に入りますと次に山小屋のある竜宮までは木陰もない、ベンチ以外には休憩する場所もない、トイレもない湿原の中の木道を進むことになります。山の鼻で十分な休憩をとり、準備を進めましょう。ビジターセンターでは見られる植物の名前や木道の状況、熊などの出現情報等が提供されている場合がありますので、情報収集も忘れずに行いましょう。 <参考> 鳩待峠〜山の鼻 約3.3km 鳩待峠出発 7:00 山の鼻到着 7:46 (私が当日実際に歩いた時間です。参考にしてください)
牛首分岐から竜宮までは、尾瀬ヶ原の只中、まさに高層湿原のど真ん中を進む恰好となります。視界も360度開けていまして、さみどり色の湿原と山並み、背後の至仏山といまだに雲の取れない燧ケ岳などを交互に眺めながら、爽快な風景の中を散策しました。池塘は青空そのままの水色を輝かせ、その水面いっぱいに初夏の日光を照り返しています。ヒメシャクナゲなどの花々もそれぞれの輝きをほころばせています。湿原を取り囲むゆるやかな稜線の山々もその緑色にいっぱいに光を照り返していまして、長い冬を越えて躍動を始めた、まさにいのちのかがやきを漲らせています。 ミズバショウの咲く水路の彼方に至仏山を望む、尾瀬の観光ポスターの定番の風景が見られる中田代(下ノ大堀川沿い)へは、竜宮の手前、木道を北へつけられた木道をそれて向かいます。いつ訪れても、至仏山と湿原、そしてゆるやかな流れとがつくる風景がさわやかな場所ですね。この日はミズバショウのほか、庭木のカイドウ(海棠)に似た花をつけるズミの花が見頃となっていまして、尾瀬を代表する大パノラマの風景をさわやかに彩っていました。中田代でしばし風景に見とれた後、群馬・福島県境となる沼尻川の拠水林に佇む竜宮へと入りました。竜宮からは富士見峠から降りてくるルートと、ヨッピ橋へ向かうルートが分岐しています。ここは森に囲まれた木陰の下、数軒の山小屋がありますので、トイレ休憩のほか、軽い食事などをとることができます。各自のプランに合わせながら、適宜休息をとると良いと思います。尾瀬のトイレは自然保護のため、環境協力金を備え付けられたボックスに投入するチップ制となっています。できる限り100円程度の協力を行いましょう。 <参考> 牛首分岐〜竜宮 約2.2km 牛首分岐出発 8:30 竜宮到着 9:05 (私が当日実際に歩いた時間です。参考にしてください) ※中田代にて10分程度休憩しています。 竜宮〜見晴
竜宮を豊かな緑に包み込んでくれている拠水林を潤しているのが、沼尻川の流れです。沼尻川はその名から連想されるとおり、尾瀬沼から流出する河川で、その流れは只見川の源流となり日本海へと注ぎます。県域のほぼ全域が利根川水系である群馬県内におけるわずかな例外のひとつが尾瀬周辺であるわけですね。沼尻川は群馬県と福島県の県境ともなっています。沼尻川から見晴の間に展開する湿原が下田代と呼ばれます。尾瀬ヶ原は山の鼻から牛首分岐付近の上の大堀川までが「上田代」、竜宮までが「中田代」、そして見晴までの「下田代」と3つのエリアに分けられます。その中でも下田代はこの3つの湿原の中で面積が最大なのだそうです。しかしながら、竜宮から見晴までの距離が山の鼻〜竜宮のそれと比べて短いためルート上からの眺めはこれまでの行程と比してやや小ぢんまりとした印象を受けます。 緑と川のせせらぎが快い拠水林を越えて、下田代へと進んできます。燧ケ岳は徐々にまとった雲を振り払い始めました。青空も引き続き極上の透明感でもって湿原の緑を照らし出しています。途中、チングルマの群落に出会いました。純白の花弁を日光に透かせていたチングルマは、本当に小さく可憐な見た目とは裏腹に、れっきとした木本の植物です。平たく言えば、草ではなく「木」であるということです。花を乗せた茎のように見える部分も立派な「幹」でして、年輪もあるのだそうです。このかわいらしい花を咲かせる幹が下に掲載した写真のような大きさに生育するまでに10年前後の年月が必要であると昔教科書で読んだことがあります。つまり、一旦折れてしまうと、元に戻るまでにそれほどの歳月が必要ということです。 燧ケ岳は見晴らしに着くまでにとうとう頂を雲間から見せることはありませんでした。午前9時30分過ぎ、見晴らしに到着しました。時間的にはやや早かったものの、この先の山越えなどを考慮し、山小屋で休憩と軽食を摂ることにしました。ここ数年の定番である、山小屋で買うカップラーメンとコーヒーをいただきながら、彼方にたおやかに鎮座する至仏山の姿を目に焼き付けました。見晴で尾瀬ヶ原と至仏山とはお別れとなります。ここから尾瀬沼まではやや急な坂を含む山道となります。ごみはこの年もすべてリュックサックに入れました。
<参考> 竜宮〜見晴 約1.6km 竜宮発 9:09 見晴到着 9:32 (私が当日実際に歩いた時間です。参考にしてください) 後半へ続きます。 |
|||||||||||||||||||||
←#3のページへ |
#5のページへ→ |
このページの最初にもどる 仙境尾瀬・かがやきの時にもどる
地域文・その他の目次のページにもどる トップページにもどる
Copyright(C) YSK(Y.Takada)2008 Ryomo Region,JAPAN |