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仙境尾瀬・かがやきの時
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#18 山ノ鼻から竜宮へ 〜尾瀬ヶ原ハイクのハイライト〜 2018年5月20日、毎年恒例の尾瀬散策を敢行しました。山ノ鼻から入り、尾瀬ヶ原を縦断、尾瀬沼を経て大清水へ向かうルートを辿りました。例年は6月初旬から中旬にかけて見頃を迎える尾瀬ヶ原のミズバショウですが、この年はやや早めにその時を迎えていたようでした。尾瀬の入口の鳩待峠へ到着した朝は、山々は雲覆われていまして、周囲の草木にはうっすらと雪が積もっていました。#16の稿にならい、本稿ではその続きのコースである、山ノ鼻から竜宮にかけてをご紹介したいと思います。 山ノ鼻から牛首分岐へ 鳩待峠から山ノ鼻へ下る山道は、いつものとおりたおやかで、心躍るような新緑の中を歩く道のりでした。テンマ沢湿原では、ミズバショウの花がまさに見頃で、訪れる人の目を和ませていました。この日は天候の回復が緩やかで、山ノ鼻へ至る行程の中途までは至仏山の山容を窺うことができませんでしたが、山ノ鼻に近づくにつれて急速に日射しが森に注ぎ始めて、オオカメノキなどの花を豊かに照らすようになってきました。少しずつクリアな青空が見えるようになった頃、尾瀬ヶ原への入口である山ノ鼻から尾瀬ヶ原へと歩を進めました。
山ノ鼻は尾瀬ヶ原の西端にあたり、ここから東方へ、竜宮から見晴へ続く木道を軸として、我が国でも有数の高層湿原がひろがっています。尾瀬ヶ原は大きく分けて3つの部分に分かれていまして、それぞれ西から上田代、中田代、下田代と呼ばれます。田代とは、簡単に言えば湿原のことで、尾瀬周辺には大小様々な「田代」が存在しています。山ノ鼻から上ノ大堀川までが上田代、そこから沼尻川手前までは中田代、その東が下田代というくくりです。上田代と中田代は、集水域を同じくする猫又川や上ノ大堀川、下ノ大堀川などが穏やかに流下する一帯に広がる湿原で、視覚的には一体に捉えられます。山ノ鼻近くは木々と森林が混交していますが、川上川(ヨッピ川)を渡ったあたりから一気に視界が広がり、それはいよいよ尾瀬ヶ原に来たという感慨に浸れる風景です。天気がよければ正面に燧ヶ岳の男性的な山容を、背後には女性的なたおやかさを見せる至仏山を、それぞれ見通しながらの歩行となります。 湿原を取り囲む山々もとても穏やかな稜線を描いて湿原に寄り添います。それらの山肌はまさに今新緑の季節を迎えていて、若々しいさみどり色に輝いていまして、朝早い時間帯では霧がかかったり、朝日を受けてきらめいたりしている風景は、筆舌に尽くしがたいしなやかさに溢れています。ミズバショウは主に湿原を横切る河川沿いに群落をつくっていまして、みずみずしい純白の仏炎苞がいっぱいに並ぶ様子は、まさに尾瀬ヶ原のハイライトとも言えます。小さな水たまりのような池塘を湛える湿原はいまだに芽吹きの季節を迎えておらず、枯草色のままであるのとは対照的です。
木道はやがて、南側から張り出した特徴的な尾根筋である「牛首」をまわるように進みます。牛首の近くには池塘がまとまっている場所があり、風が弱い時には、水面に燧ヶ岳が映る「逆さ燧」を監察することができます。やがて、上田代と中田代を分かつ上ノ大堀川を渡りますと、牛首分岐のポイントに到達します。まっすぐ竜宮、見晴へと進むメインルートから、ヨッピ吊橋を経て東電小屋方面へと進む木道が分岐する地点です。小休止できるベンチも用意されているので、ここでは多くの人々が休憩をしています。 中田代の湿原と至仏山を望むスポットへ 牛首分岐を過ぎますと、湿原はさらに壮大に、目の前に展開していきます。周囲の山々はより鮮やかに、そして湿原はさらに茫漠さを増しているように感じられます。拠水林を伴わない源五郎堀などの小河川も湿原には多くあって、そうした流れの傍らには決まってミズバショウが生育していまして、湿原を彩っています。季節が進みますと、湿原自体も青々とした風景に変化していきまして、尾瀬ヶ原はやっと遅い春の扉を開けて初夏への階段を上っていきます。
牛首分岐に到達した辺りからは天候も徐々に回復してきていまして、背後の至仏山はほぼその全容を目の前に見せてくれるようになっていました。竜宮へと進む手前、下ノ大堀川沿いに咲き乱れるミズバショウを、至仏山をバックにして眺望できる場所へと進む木道が分岐しています。私は尾瀬を訪れる際にはこの場所を必ず訪れるようにしていまして、そこは尾瀬の観光ポスターにもしばしば採用される、よく知られたスポットです。青空を映す川面を、清冽な水がふんだんに流れ下り、その岸辺にミズバショウが美しく咲き、そして彼方には穏やかに残雪を纏った至仏山が在る。四季折々にそれぞれの容貌で迎えてくれる、この下ノ大堀川沿いの観賞スポットですが、ミズバショウの季節が最も尾瀬らしい眺望を見せてくれているようで、この日もこの上のない鮮烈さと清純さを持って、山上の晩春の佇まいを表現しているようでした。 下ノ大堀川の観賞スポットでの休憩の後は、木道の主要路へと戻り、竜宮方面へと再び歩を進めます。その間も、湿原は目の前に快く展開して、のびやかな開放感に包まれながらの踏破を続けていきます。木道は水を蓄えやすいためか、木道の周辺にもミズバショウやリュウキンカ、ショウジョウバカマなどの可憐な花を多く見かけることができます。タテヤマリンドウなどの初夏の花を見かけることもあります。尾瀬ヶ原では多種多様な花が咲いて、季節ごとにそれを楽しむことを目的に訪れる人も少なくありません。山ノ鼻のビジターセンターに、見頃の花の情報などが掲示されていますので、確認してから湿原へと進むとよいと思います。
竜宮小屋は、只見川の上流部にあたる沼尻(ぬしり)川がつくる拠水林を背にする場所に立てられています。小屋へ達する手前、南の山側から流れ出る川がいったん地下へ戻り、木道を越えた先で再び地上へ出る、「竜宮現象」と呼ばれる事象を観察できる場所があります。さらにその近くには、富士見峠から下ってきた道が、ヨッピ吊橋まで続く道と合流する交差点があり、多くの人々が行き交う場所となっています。沼尻川は群馬県と福島県の県境を構成しています。豊富な森を伴った沼尻川は、新緑の季節、そして紅葉の季節と、それぞれに極上の色彩を見せてくれていまして、たくさんのハイカーたちを迎え入れています。 2018年5月20日・尾瀬の風景 ルート紹介として、山ノ鼻から竜宮までの風景を記してきましたが、この日は尾瀬ヶ原から尾瀬沼を経て大清水までの踏破を行っています。以下に、その過程で撮影した写真をご紹介します。
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