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仙境尾瀬・かがやきの時
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#21 白砂峠から大江湿原へ 〜尾瀬沼北岸の気持ちよいトレイル〜 2020年8月15日、初秋の尾瀬を訪れました。この年はコロナ禍の影響で入山自粛が要請されかつ山小屋の多くが閉鎖を余儀なくされた影響もあって、例年よりもかなり遅い「初尾瀬」となりました。とびきりの晴天に恵まれた鳩待峠の周辺では、フジバカマなど秋を感じる花も咲いていまして、残暑の季節に一時の清涼を与えていました。山ノ鼻から入り、尾瀬ヶ原を縦断、尾瀬沼を経て大清水へ向かう、いつものコースを歩きます。今回は、#19の稿に続き、踏破したコースのうち、白砂峠から尾瀬沼北岸を歩き、大江湿原まで至る部分をご紹介します。 白砂峠から沼尻(ぬしり)休憩所へ 尾瀬ヶ原の中心とも言うべき見晴の山小屋エリアから段小屋坂の山道を越え、到達した白砂峠からは、岩の露出した山道を下っていきます。かなりの勾配の濡れた岩のある場所を降りていきますので、足下に気をつけながらの踏破となります。下った先は「白砂田代」と呼ばれる小さな湿原です。水芭蕉の季節では、おそらく人為的な結果でそこにあると思われるのですが、湿原の手前に桜の花が咲いている場所があります。
8月中旬の尾瀬は、日差しはまだ夏を感じさせる熱量はある一方で、渡る風は涼やかさに溢れていまして、季節はやはり初秋と表現することが適切であるように感じられます。白砂田代は、白砂峠から尾瀬沼へ至るルートの途上では唯一のまとまった高層湿原です。あまり大きくはない湿原の真ん中を木道が一直線に貫く風景は、これまで歩んできた広大な尾瀬ヶ原の印象とは異なり、こうした小ぢんまりとした湿原の数々が、この尾瀬周辺の風景を特徴付ける事物のひとつであることを実感させます。湿原は盛夏を通り越してまさに成熟した緑を見せていまして、池塘に映る空や周囲の森もとてもクリアなきらめきに満ちています。 白砂田代は尾瀬沼と尾瀬ヶ原を行き来するハイカーは相対的にそう多くはないため、行き交う人の量も少なめです。そのため、そこは四季折々に咲く花をゆっくりと観察することのできる場所でもあります。この日は時季的に花はあまり認められませんでしたが、チングルマやタテヤマリンドウなど季節ごとに湿原を彩る花々も随所に見つけることができます。坪庭のような佇まいを見せる白砂田代を抜けると、木道は針葉樹が主体の森の中へと引き込まれていきます。横切る小川には、初夏には水芭蕉もよく咲いているところを見かけます。尾瀬沼から流出する沼尻川のせせらぎも快く耳に入ります。
やがて針葉樹林の森を抜けますと、いよいよ尾瀬沼の湖岸が見えてくるようになります。湖岸には、沼尻休憩所と呼ばれる、小規模な建物が存在しています。尾瀬ヶ原から尾瀬沼のほとりに入る場所にあり、多くのハイカーにとって便利な休憩所であるこの施設は、2015年9月に失火で焼失してしまいました。その後再建され、尾瀬沼を間近にした、ちょっとした休息所としての役割を取り戻しています。休憩所の一帯は、「沼尻平」と呼ばれる湿原となっています。北側には天気がよければ燧ヶ岳の山容が間近に迫るロケーションです。燧ヶ岳の登山道の一つともなっている、「ナデッ窪」と呼ばれる窪地地形も明瞭に確認することができます。 沼尻(ぬしり)から大江湿原へ 沼尻平での小休止の後は、尾瀬沼北岸のルートを辿ります。尾瀬沼の北東岸には、尾瀬沼ビジターセンターをはじめ、複数の山小屋が集まるエリアがあります。そこへ向かう山道は、ほぼ全線にわたって木道が整備されていて、かつ起伏の少ないルートが続いていきます。
針葉樹がより多くつながる森の中を進む形となり尾瀬沼が標高の高い場所に位置していることを実感できます。木々の間から尾瀬沼の静かな湖畔を間近に望みながらの歩程となるのもこのコースの魅力です。ルートの途上には、小さな湿原上の草原を通過します。このような湿原を越える際には木道はアップダウンがあって、一部には木道が途切れて土がむき出しとなる場所もあるので注意が必要です。やがて、そうした湿原の中でもやや規模の大きい浅湖(あざみ)湿原に到達しますと、尾瀬沼の北東岸に位置する山小屋のあるエリアも木々越しに眺望できるようになります。 浅湖湿原を横切り森の中に入りますと、目の前に川に沿った細長い大きな湿原が見えてきます。これが大江湿原です。7月の中下旬頃には例年ニッコウキスゲがいっぱいに湿原に咲き誇る場所です。浅湖湿原からは、坂道を下る形で湿原へと進む形となります。湿原を横切る木道沿いには、三本カラマツと呼ばれるカラマツが湿原の中に立っていることが分かります。この三本のカラマツはとても目立つ存在で、まさに大江湿原のシンボルツリーのような印象です。元来た方向を見ますと、燧ヶ岳の山容を望むことができます。訪れた8月はニッコウキスゲの季節は過ぎていましたが、サワギキョウやコバギボウシなどの花々も認めることができました。木道は沼山峠から南下し大江湿原を縦断する道と合流し、南へ進むと程なくして尾瀬沼ビジターセンターや長蔵小屋などの山小屋が集まる一角へと続いていきます。 白砂峠からの急な下りを経て尾瀬沼の北側へと進むルートは、湖岸の小さな湿原をまたぐ部分で若干の上り下りはあるものの、概ね起伏の少ない、平坦な木道のある道筋です。多くの区間は針葉樹の森の中を通過するので、真夏でも比較的涼しさを感じながら歩くことができます。この日は尾瀬沼ビジターセンターから尾瀬沼の東岸を経て三平下へと進み、三平峠、一ノ瀬休憩所と進んでいきましたが、この区間については稿を改めたいと思います。 2020年8月15日・尾瀬の風景 最後に、この日も鳩待峠から尾瀬ヶ原、尾瀬沼を経て大清水へと至るルートを歩いていますので、上記にご紹介した場所以外で撮影した写真を以下にご紹介します。
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