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#1 泉中央と七北田 〜仙台北郊の新旧中心地〜 2002年12月28日に訪れた仙台は、この週の前半に降った雪があちこちに残る、寒々しい日和でした。新幹線で仙台駅に着き、仙山線で北仙台駅へ。この駅の至近に6年住んだ私にとって、とても懐かしい場所です。私がはじめてこの地に住み始めた93年には駅の北側には広い工場があったのですが、現在では青葉体育館と、4〜5棟のマンション群に変貌しています。北仙台駅を出て、西に70メートルほど進むと、地下鉄北仙台駅の入口があります。ここから地下鉄に乗り込み、泉中央を目指します。 黒松駅で地上に出る地下鉄は、高架上の八乙女駅を過ぎて、七北田(ななきた)川を渡り、仙台スタジアムの西をかすめながら、泉中央駅ビル“スウィング”の中へ吸い込まれていきます。駅の自動化札を過ぎ、バスターミナル横のエスカレーターを上がれば、ペデストリアンデッキ上の“泉中央広場”へ到達します。泉中央駅付近は、七北田川のつくる河岸段丘が発達しており、この高低差が巧みに利用されています。泉中央駅のすぐ西側を南北に通過し、将監(しょうげん)や泉パークタウン方面へ向かう道路は、ペデストリアンデッキ階下のフロア及びペデストリアンデッキ上の泉中央広場の双方に、段差無く接続しています。この南北の道路を、七北田川方面へ下っていくと、銀色のドームが特徴の建物「ミルポートS」があります。この建物は、1階と2階が仙台市立泉図書館、3階と4階が仙台市こども宇宙館となっており、豊富な児童書などの蔵書や、プラネタリウムなどの施設が充実し、多くの子供たちが訪れるスポットなのだそうです。
さらに川沿いに進むと、広大な公園「七北田公園」が整備されています。ここには、都市緑化ホールなどの施設も立地しますが、七北田川の自然を生かした快適な公園であり、この付近の住民の憩いの場になっています。この日は、一面の銀世界で、曇天の寒い一日。しかも、正午近い時間帯ということもあって、人影は全く見られませんでしたね。ここから、泉中央方面方向を望むと、マンションや諸施設などが整然と林立した様子を美しく眺めることができました。付近には、泉区役所をはじめ、泉警察署、紹介しましたミルポートS、仙台スタジアムなどの施設を核に、イトーヨーカドーやセルバ(複合商業施設)を中心とした多くの店舗も集積し、今や仙台市の北の副都心的な性格すら感じさせる街区へと変貌を遂げました。
しかしながら、この地域における伝統的な中心地は、この泉中央地区ではなく、泉中央地区のすぐ東に隣接する七北田地区なのです(大字では七北田のほか、市名坂なども含みます)。地下鉄が八乙女駅から泉中央駅に延伸されたのは、92年。私が93年にここをはじめて訪れた時は、ペデストリアンデッキや泉区役所(泉市役所として、七北田地域から移転、新築されたもの)は完成していたものの、核となる施設の大半はまだ無く、少々茫漠とした地域でした。20年位前の地形図を見ると、水田などの多い泉中央付近と、奥州街道沿いに街村を形成する七北田地域との差は明瞭です。旧国道4号線を南へ、仙台スタジアム横でかむり大橋を渡り、八乙女駅を右手に見ながら奥州街道に入り、七北田橋で再び七北田川を越えて、七北田の町へ歩いて行きました。 片側1車線の決して広い道ではないのですが、国道4号線に接続するこの道は車両の通行量が多く、歩行者は歩くには少々危険な面もあります。とはいえ、一部にマンションなどが林立して都市化の波が襲う中にあっても、善正寺や二柱神社などの結構や、個人商店、庭木を繁茂させた旧家なども道路沿いに並び、往時を偲ぶことができます。中でも、七北田バス停付近で発見した「明治天皇行幸記念碑」には驚かされました。銘によると、「明治14年8月14日 御小休」とあり、維新後間もなく天皇制を広めるために行われた天皇行幸が、この地域にとっていかに大きなインパクトであったのかが窺い知れるとともに、この七北田地区がこの近在で抜きん出た中心地であったことも暗示する事物なのではないかとも思われました。
その後も、都市化の進んだ部分と、街道沿いの街村の面影を残す部分とを交互に見せながら町並みは展開し、七北田郵便局の前で西に折れて、泉中央駅方向に再び向かいました。駅に向かうにつれて、高層マンションは多くなり、再び正四面体のモニュメントが特徴的な泉中央広場に戻ったのでした。 このように、仙台北部の副核は、新旧の中心地の態様をモザイク上に内在しながらも、仙台都市圏からの都市化の波を受けて現在でも成長を続けています。七北田川の向こうに、区名の由来となった泉ヶ岳のたおやかな姿が眺められました。自然豊かなこの地域、実は私のとっての「理想都市」の1つなのかもしれないな、そう思っております。 |
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