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#6 片平界隈 〜広瀬川と青葉山に接する町〜 仙台の街中を南北に貫くアーケードの「一番町通り」は、七夕の時期ともなると、多くの人々が繰り出す、活気のある繁華街です。また、仙台における「待ち合わせ」のスポットである広瀬通一番町の水時計前(私が大学1、2年の頃は、携帯電話が普及する前で、水時計前の需要は高かったですね・・・)界隈は、週末になると多くの人々が闊歩する、まさに仙台の顔とも言うべき町といえるでしょうね。 ※2003年7月、長年親しまれてきた一番町の水時計は、老朽化のため撤去されました。これに変わる新たなモニュメントが建設される運びと聞きます。 この一番町通りを南に向かって進むと、南町通りでアーケードが終わり、古本屋がならぶ道路をさらに歩いて北西〜南東方向の五橋通りを横断すると、穏やかな木立の街路樹の向こうに、東北大学片平キャンパスの北門に到達します。
片平キャンパスは、川内地区に全学共通の教養課程及び文系学部が、また青葉山地区に理学部、工学部、薬学部が、それぞれ移転してしまった現在では、大学事務局本部や若干の研究所が立地するのみの、至って静寂で緑溢れる空間となっています。キャンパスを南北に貫く通りは赤松が両側に植えられており、また多くの桜も植えられたちょっとした公園のようになっており、付近の人々や学生が訪れる、憩いの場所です。これからの季節は、ちょっとしたお花見のスポットにもなるのです。普段から通勤途中のサラリーマンや、自転車の学生などが往来するこの通りは、藩政期は「桜小路」とよばれていたのだそうです。片平キャンパス内の建物は、空襲の火災をまぬかれた歴史ある建物で、堅牢な煉瓦造りの建物は創立当時のままのものも多く、かの魯迅が学んだ講堂も昔のまま保存されているそうです。 北門から緑溢れるキャンパス内に入り、ほどなくしてぶつかる通を西に折れると、片平丁に面して正門に至ります。この片平丁界隈の景観は、私が最も愛する仙台のまちなみの1つです。藩政時代、この片平丁には伊達藩に仕える大身侍の大屋敷が並んでいました。現在では南町通以南の街路を片平丁と呼ぶのが一般的ですが、江戸期にはさらに北へ伸びて、現在の市民会館あたりから広瀬川に沿って南東に続く街路であったそうです。その街路に面して、有力な過信の大邸宅が軒を連ねていたのです。道の片方は、広大な屋敷地、もう片側は広瀬川の河谷、という地形から、「片平丁」の名前が生まれました。伊達藩による治世が終わると、広い敷地を持ったこの界隈には、裁判所や学校、そして公園へと転用されました。現在では仙台高等裁判所や市立片平丁小学校、そして東北大学が立地し、藩政期の邸宅の緑を受け継いだ豊かな街路樹と緑地とにつつまれた、どこかかつての「杜の都」の雰囲気を感じることができる、穏やかな佇まいを見せる地域となっています。そして、これらの緑を一段と輝かせているのが、広瀬川の清流と、背後に広がる青葉山の緑です。
東北大学のあたりから望む青葉山丘陵は、伊達政宗の霊廟である瑞鳳殿(ずいほうでん)が立地することから、「経ヶ峯(きょうがみね)」と呼ばれています。堅牢な門柱と、がっしりとした鉄扉で威容を見せる東北大学の正門は、仙台開府の祖である伊達政宗の霊廟に向かってつくられているのですね。この正門前から広瀬川のつくる段丘の急坂を下ると、石造りの霊屋橋(おたまやばし)に至ります。この橋の上からは、広瀬川のつくる峡谷と清冽な流れ、段丘を覆う瑞々しい緑、その緑地が青葉山丘陵と片平地域の緑へとなだらかに連続して、本当にすばらしい景観をつくりだしております。この霊屋橋から東北大正門前を通って、片平丁を市街地のほうへ向かうルートは、八木山方面から市街地へ向かうバス通りとなっているため、けっこう車の往来は激しいのですが、この穏やかな景観がそういった喧騒を忘れさせてくれます。 正門に戻って、片平丁を北へ進むと、西側(広瀬川側)に、美しい竹の生えた公園があるのが分かります。片平市民センターと片平公園です。この片平公園からは、霊屋橋のかかる広瀬川の景観を目と鼻の先に望むことのできる、隠れたスポットです。ブランコに乗ると、広瀬川に体を乗り出すような感じになります。この界隈のこどもたちは、なんとも贅沢な体験ができるものですね。
片平市民センターを過ぎ、北へ進む片平丁は、仙台の街中散策にはまさに絶好の場所であると思います。藩政期の名残をのこす町並み、広瀬川や青葉山に隣接した雰囲気。実は、私のとってもサークル活動に参加するために日々通った懐かしい道なのですが、卒業後何度かこの場所を訪れても、その美しさは昔のままのように思います。その道すがら、路傍の建物が途切れ、一気に広瀬川への眺望の開ける場所があります。早春のさみどり色にぼやける風景、初夏の若葉色の山々、秋の紅葉、冬の木々の幹が黒々とかがやくさま、そして美しい夕焼けのもとの広瀬川・・・その場所は、四季折々に最高の姿を見せてくれていたのでした。 |
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