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シリーズ・クローズアップ仙台

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#115 仲夏の緑に包まれる青葉山を歩く ~城跡の歴史と自然に触れる風景~

 2020年6月16日早朝、仙台市地下鉄東西線・八木山公園駅に併設された駐車場に車を止めて、この日の散策を始めました。この日は梅雨の合間の夏を思わせるような陽気で、駅舎の屋上にある「八木山てっぺん広場」のデッキには朝から強い日射しが照りつけていました。丘陵地から平野にかけての一帯に市街地が広がる、仙台市南郊の風景もすっきりと望むことができました。

八木山動物公園駅屋上

八木山動物公園駅屋上からの風景
(太白区八木山本町一丁目、2020.6.16撮影)
八木山橋へ向かう市道

八木山橋へ向かう市道
(太白区長町、2020.6.16撮影)
八木山橋付近の森

八木山橋付近の森
(太白区長町、2020.6.16撮影)
八木山橋

八木山橋
(青葉区・太白区境、2020.6.16撮影)
竜の口渓谷

八木山橋から竜の口渓谷を俯瞰
(青葉区・太白区境、2020.6.16撮影)
龍ノ口渓谷上の丘陵

竜の口渓谷上の丘陵
(青葉区・太白区境、2020.6.16撮影)

 平日の朝ということもあり、多くの車両が通行する車道の脇を歩き、青葉山方面へと向かいます。八木山動物公園前の交差点から八木山橋を経て青葉山へ向かう市道は、住宅地となっている八木山から中心市街地へと抜ける最短ルートであるため、途上に建物のない山の中であるにもかかわらず、交通量の多い道路です。青葉城址への入口から大手門前までの区間は土日祝日に限り八木山方面への一方通行が実施されますが、この日は平日であったため、中心部方向へも比較的多くの車両が通行していました。ベニーランド前からゆるやかな坂を下り、青葉山を深く浸食する竜の口渓谷に架かる八木山橋へと至りました。6月の仙台を訪れるのは大学卒業後は記憶を辿ってもおそらく初めてで、初夏を経てだんだんと色濃くなる木々の緑はとても鮮やかで、鮮やかな日射しを受けた木漏れ日はしなやかな輝きを湛えていました。物々しい鉄格子に覆われた八木山橋から竜の口渓谷を覗きましたが、この後青葉山公園南のテニスコートを経て渓谷入口に行って、現在は渓谷入口は閉ざされており、渓谷へは侵入できないことを知りました。崩落の危険があるためとのことです。20数年前の学生時代は徒歩で渓谷へと向かうことができ、その偉容を確認したものでした。

 八木山橋を越えるところへ戻り、仙台城の本丸跡へと歩を進めます。平日の早朝という時間帯もあってか、普段の休日であれば少なくない観光客が訪れている伊達政宗騎馬像前も、人影はまったくありませんでした。私が覚えている限り、人が一人もいない本丸跡は記憶になく、それは新鮮な光景でした。この日は前述のとおり雲一つない夏のような青空に恵まれたため、北から泉ヶ岳、七つ森へと続く山並みから、市中心部の市街地景観と広瀬川が蛇行する風景、そして経ヶ峯の断崖や台年寺山の丘陵地を経て太平洋沿岸へと展開する眺望を、くっきりとした視界のもと、一望することができました。青葉山と広瀬川の緑も極上のきらめきに包まれていまして、まさに現代の「杜の都」を体現する鮮烈さと清冽さに溢れていました。本丸跡には藩政期に存在していた御殿の礎石跡が復元された一角があって、往時を偲ぶことができます。

宮城県護国神社

宮城県護国神社
(青葉区川内、2020.6.16撮影)
伊達政宗騎馬像

伊達政宗騎馬像
(青葉区川内、2020.6.16撮影)
仙台城本丸から泉ヶ岳を望む

仙台城本丸から泉ヶ岳を望む

(青葉区川内、2020.6.16撮影)
仙台城本丸から七つ森を望む

仙台城本丸から七つ森を望む
(青葉区川内、2020.6.16撮影)
仙台城本丸から仲の瀬橋を望む

仙台城本丸から仲の瀬橋を望む
(青葉区川内、2020.6.16撮影)
仙台城本丸から仙台市街地を望む

仙台城本丸から仙台市中心部を望む
(青葉区川内、2020.6.16撮影)

 本丸からは北側の市道仙台城跡線へと降り、東日本大震災による被災から復元された巨大な石垣の下、青葉山の森に覆われる歩道を歩きます。路傍には門の跡を示す石垣の張り出しなどがあって歴史を感じさせますが、相変わらず通過車両も多くて、落ち着いた歩行というわけには行かないかもしれません。大手門跡の脇櫓の場所から、緩やかに下る坂の向こう、大橋を望む風景は仙台市内においても指折りの佳景であると思います。大橋に向かって坂を歩きますと、右手に五色沼、左手に仙台国際センターがあって、一帯は文教地区として穏やかな佇まいを見せています。仙台城の二の丸跡には東北大学川内南キャンパスが、三の丸跡には仙台市博物館が、それぞれ立地しています。本丸の西側における原生林は、現在は東北大学の植物園となっていますが、訪問時は感染症拡大抑止対策のため閉園中でした。

 三の丸の東側には堀が残されていまして、長沼と呼ばれます。長沼と広瀬川戸に挟まれた一帯は、住所表示としては「川内追廻(かわうちおいまわし)」地区です。戦後の引き揚げ者のために住宅地が形成され、長らく住民が暮らしていましたが、市の青葉山公園整備計画に基づき集団移転が長年にわたり協議されてきた場所です。訪れた時には、川内追廻地区の住宅はすべて撤去され、重機におよる土地整備工事が進められていました。計画では、この場所には(仮称)公園センターと広場などが整備されて、青葉山の歴史的な自然環境と一体化した公園として生まれ変わることとなります。

仙台城本丸下の石垣

仙台城本丸下の石垣
(青葉区川内、2020.6.16撮影)
仙台城・中門跡

仙台城・中門跡
(青葉区川内、2020.6.16撮影)
大手門脇櫓

大手門脇櫓(復元)
(青葉区川内、2020.6.16撮影)
五色沼前から大橋方向を望む

五色沼前から大橋方向を望む
(青葉区川内、2020.6.16撮影)
三の丸・長沼

三の丸・長沼
(青葉区川内、2020.6.16撮影)
川内追廻地区

川内追廻地区・公園整備中の状況
(青葉区川内追廻、2020.6.16撮影)
竜の口渓谷・閉ざされた入口

竜の口渓谷・閉ざされた入口
(青葉区川内、2020.6.16撮影)
大橋から望む広瀬川

大橋から望む広瀬川
(青葉区川内/大手町、2020.6.16撮影)

 川内追廻地区の整備が進むエリアの南にはテニスコートがあり、その南には前述した竜の口渓谷へとつながる入口があるはずでした。渓谷のある方向は草が生い茂り、ゲートが閉ざされていまして、立ち入り禁止となってから長い時間が経過していることが推察されました。国際センター前に戻り、石造りの欄干が風格を感じさせる大橋へと進みました。橋の上からは、緑と水とがみずみずしい広瀬川の流れを間近にして、仲夏の鮮やかな自然に彩られる仙台の美しさに改めて触れることができました。


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