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シリーズ・クローズアップ仙台
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#120 みなと仙台ゆめタウンの風景 ~仙台港後背地の再開発エリア~ 2020年12月26日、仙台市中心部の散策に続き多賀城市の多賀城跡周辺を散策していた私は、JR多賀城駅から仙石線で仙台方面に一駅戻り、仙台市内最東端の駅である中野栄駅に降り立ちました。駅前には南側に小さなロータリーがあり、そのすぐ前を国道45号の大動脈が貫通していました。仙台市北東部、多賀城市を経て塩竈市へと進むこの幹線道路は常に交通量が多い印象で、仙台大都市圏の態様をそれは伝えていました。
国道45号を横断して南へ、仙台港方面へと進む街路を進みました。仙台港は、この中野栄駅の地先に掘込み港として建設された港湾の通称です。1964(昭和39)年、仙台湾地域の新産業都市指定を機に、臨海工業地域として開発するために建設されました。その後、港湾法上の位置づけは変遷して、現在では塩釜港と一体となった「仙台塩釜港」の「仙台港区」となっています(2012年に仙台塩釜港は東日本大震災からの震災復興を図る上での各港の機能分担・強化のため、松島港と石巻港もその範囲に含める改正が行われています)。仙台港エリアでは、東北地方で唯一の国際拠点港湾であることのポテンシャルを活かした再開発事業が進められていまして、「みなと仙台ゆめタウン」としての整備が進捗しています。震災被災という重大局面もありましたが、港湾を中心とする臨海部は工業地域、その後背地域には流通機能や住宅地区を配置し、それらをつなぐ中央部のセンター地区には商業機能を計画的に誘致して、有機的なまちづくりが企図されています。 センター地区の西側、仙台東部道路仙台港インターチェンジに接する高砂中央公園の一角には、仙台うみの杜水族館があって、この日も多くの人々を惹き付けていました。2015(平成27)年7月に、マリンピア松島水族館の後継施設として移転開業しました。三陸の豊かな海の水産資源を展示する大水槽を中心とした展示を行っていまして、水槽の中に名産の牡蠣を養殖する牡蠣棚が再現されていたのが印象的でした。訪問時現在、水族館の立地する高砂中央公園の大部分は未だ整備中で殺風景な印象でしたが、執筆寺現在は運動広場などが順次供用を開始しているようで、スポーツやアクティビティに特化した公園として今後も整えられていく予定のようです。
1991(平成3)年から開発が進められてきた仙台港周辺エリアの再開発事業は、2011年の東日本大震災の被災によって、大きな停滞を余儀なくされました。土地区画整理事業としての「みなと仙台ゆめタウン」は、2014(平成26)年に完成の節目を迎え、それを記念する「港地繁栄」と記されたモニュメントが設置されていました。高砂中央公園から東側、センター地区と呼ばれるエリアには、三井アウトレットパーク仙台港をはじめ、カインズ仙台港店などの大規模店舗が多く立地しています。その一方で、南側に接する流通機能に特化したエリアも存在することから、広大な敷地を擁するそれらの地区と一体となっておることもあって、空閑地が幅広く確保されていて、商業地としての稠密性には乏しい印象です。貨物専用の鉄道である仙台臨海鉄道の線路に沿って歩きながら、コンベンションセンターとして供されるみやぎ産業交流センター(愛称:夢メッセみやぎ)へと歩を進めました。 コンベンションセンターの施設を概観しながら、仙台港を見下ろす展望台を中心に野球場やテニスコートなどが整備された仙台港中央公園へ。ネーミングライツが採用されるこの公園は、開園以来長らく「スリーエム仙台港パーク」として親しまれましたが、2023年4月の現公園名への改称を経て、2023年11月より「NX仙台港パーク」に名称が変わっているようです。展望台の上からは、掘込み港として完成した仙台港を正面から望むことができます。南側の工業地域エリアのクレーンや煙突のある重厚感ある風景と、北側のフェリー埠頭ターミナルのある風景が一体となって、高度経済成長期から現在までつながる開発の歴史を紡いでいるように感じられました。
観覧車がシンボルとして目立つ三井アウトレットパーク仙台港の施設を確認しながら、大型商業施設が隣接するセンター地区を歩いてJR中野栄駅へと戻りました。臨海工業地域として開発が始められた仙台港エリアは、高度経済成長期の終焉を経て、流通機能や商業機能を含めた多面的な土地区画整理事業へとシフトチェンジをしながら、「みなと仙台ゆめタウン」としての再開発が進められ現在に至っています。このような経緯から土地利用の面での一体感に乏しく、景観的にはまだ粗放的な部分が多く残されている印象です。工業・流通エアリアと、センター地区との間に、緑地帯などの緩衝的な仕掛けをつくるなど、まだ工夫できる余地もあるように、訪問時には見受けれました。 |
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