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シリーズ・クローズアップ仙台

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#25 若林区歴史散歩 〜木ノ下から区役所周辺、遠見塚へ〜


宮城野総合運動場から南に向かい、新寺小路から東へ伸びる道路を横断しますと、若林区木ノ下地区へと至ります。周辺は中心市街地に接する閑静な住宅地の趣で、新築された聖和学園高校や聖ウルスラ学院小学校なども立地しています。この穏やかな環境に溶け込むように、陸奥国分寺跡はあります。陸奥国分寺は、741(天平13)年に聖武天皇の勅願により全国に建立された国分寺のうち最も北に位置するものでした。1955(昭和30)年から4年間にわたり実施された本格的な発掘調査の結果、陸奥国分寺は講堂・金堂・中門・南大門・七重の塔などが配された大伽藍であったことが分かっています。慶長年間(1596〜1615)に仙台藩祖伊達政宗により薬師堂(かつての講堂の跡地に建立)・仁王門(かつての南大門跡地に建立)などが再建されまして、それが今日まで受け継がれています。陸奥国分寺跡は、1922(大正11)年に国指定史跡となり、1971(昭和46)年には周辺の国分尼寺跡や遠見塚古墳などを含めた史跡として追加指定を受けて現在に至ります。陸奥国分寺は伽藍そのものの他、七重の塔や中門と金堂とも回廊で結ばれた堅牢な施設であったことが判明しており、このように具体的に伽藍配置の詳細が判明している国分寺は全国的にも珍しいものなのだそうです。

陸奥国分寺跡・薬師堂

陸奥国分寺跡・薬師堂
(若林区木ノ下三丁目、2005.4.9撮影)

陸奥国分寺跡・鐘楼

陸奥国分寺跡・鐘楼
(若林区木ノ下三丁目、2005.4.9撮影)
陸奥国分寺跡・仁王門

陸奥国分寺跡・仁王門
(若林区木ノ下三丁目、2005.4.9撮影)
南小泉小学校校庭

南小泉小学校・杉のある校庭
(若林区一本杉町、2005.4.9撮影)

ととなりました。木ノ下から宮城の貨物線を東へくぐり、高砂堀と呼ばれる水路を南へ進みますと、若林区役所のある一角へと至ります。区の名前になっている「若林」は伊達政宗が隠居所として構築したとされる若林古城から採られたものです。この若林城の跡地は現在宮城刑務所の敷地となっていまして、住居表示も「古城(ふるじろ)」を名乗り、かつての居城跡であることを伝えています。若林区役所や関連する諸施設の立地するエリアもまた、伊達家との深いかかわりがある場所です。ここは若林区役所となるまでは養種園(ようしゅえん)と呼ばれる農園でした(現在は若林区荒井に、「農業園芸センター」として移転しています)。東接する聖ウルスラ学院の敷地も、かつて伊達家の邸宅があった場所であり、この敷地内に一本の老杉があったことから「一本杉」の地名が生まれました。この杉は残念ながら数十年前に枯死してしまったようですが、隣接する南小泉小学校の校庭には穏やかに杉が繁茂していまして、一本杉の雰囲気を今に伝えているようにも思えました。

七郷堀

若林区役所南、七郷堀
(若林区南小泉一丁目、2005.4.9撮影)

若林区役所

若林区役所
(若林区保春院前丁、2005.4.9撮影)

七郷堀沿いの緑

若林区役所南、七郷堀沿いの林
(若林区南小泉一丁目、2005.4.9撮影)
遠見塚古墳

遠見塚古墳
(若林区遠見塚一丁目、2005.4.9撮影)

養種園の跡地に建設された若林区役所の南は七郷堀が流れていまして、ゆたかな木々や緑の配された気持ちの良い親水公園になっています。先に紹介した高砂堀は若林区役所東で七郷堀が分岐した流れで、高砂堀を分けた七郷堀は仙台堀と名前を変え、東の水田地帯へと流下していきます。若林区内には按配堀や海岸に沿った貞山堀などが流れておりまして、多彩な水辺に恵まれたエリアという側面も持っています。区役所南には新たな都市計画道路「南小泉茂庭線」の一部が完成し、北の区役所と親水公園、南の若林区文化センターとが一体となった、開放的なパブリックスペースが生まれています。仙台市の都市計画総括図を参照しますと、この都市計画道路は西へ延長され、やがては広瀬川・宮沢橋の西側で国道268号線に連結する計画になっているようです。東は国道4号線仙台バイパスにつながるようで、計画どおりに建設されたとすると仙台市街地南部を東西に横断する一大幹線道路へと変貌を遂げることとなるようです。その幹線道路が行き着く先、遠見塚の地には、東北地方では最大級の規模(全長110メートル)の遠見塚古墳があります。4世紀末から5世紀はじめ頃につくられたと推定され、畿内とも深いつながりのあった有力な支配者の墳墓と推定されています。


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