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出雲・石見めぐり
〜島根県内の諸都市を訪ねる〜
再び出雲へ 〜神在月の雰囲気に触れる〜 浜田市街地を概観した後は、JR山陰本線で松江方面へ、出雲市駅より出雲大社方面へ一畑電鉄線で向かいました。この日は次第に日本付近に近づく台風の遠い影響で曇り空の1日で、行程の一部を予定変更しての訪問でした。出雲大社へは過去に何度か訪れていまして、勢溜(せいだまり)と呼ばれる大鳥居前に向かって表参道である神門通りを歩き、穏やかな松波に包まれる境内を進む雰囲気は、いつ訪れても荘厳で、全国からすべての神様が集まるという「神在月」(実際は旧暦で判断するため、11月中旬からの約1か月間が「神在月」にあたります)の雰囲気に存分に浸ることができました。
出雲大社参拝後は、宍道湖北岸を行く一畑電鉄線に乗り、出雲平野の田園と宍道湖を望む風景を車窓の外に見ながら、松江市内へと進みました。前日に見た夕照の湖面とは打って変わって、鈍色の空の色そのままに沈むような湖面はどこまでも平らかで、爾来雨や風や光をそのままに受け止めて受け入れてきた風土をどこか象徴しているようにも思われました。きた終点の松江しんじ湖温泉駅からバスを利用し、前日に訪れていなかった八重垣神社(八岐大蛇泰退治の故事で知られる)へ。松江市街地の南、住宅地化が進行した丘陵を越えて、さらに南の丘陵に切れ込んだ沖積低地に位置する神社は、周囲が現代的な景観に移り変わっていても、ここが数多くの神話の舞台が点在する出雲の地であることを改めて想起させました。 夜半に東京へ向けて出発する高速バスに乗り込むまでの時間を利用し、松江城周辺で開催されているライトアップイベント「松江水燈路」を観に行きました。たくさんの行灯によって照らされる道筋はまさに幻想的な雰囲気で、柔らかい光によって夜空に浮かび上がる松江城天守は、近世城下町として興隆したこの町をだれよりも長く見つめてきたやさしさを投影しているような慎ましさを醸していました。天守から眺めた市街地の夜景はどこか丸みを帯びていまして、宍道湖の辺りだけ漆黒に見えることと相まって、美しい光と影の対照を眼前に完成させていました。
山陰地方最大の経済圏と穀倉地帯をなす出雲平野周辺から、山間部が多くを占めて小規模な中心地群が河川の河口部に等間隔に並ぶ石見地域までを概観した今回の彷徨は、古代より類稀な文化をもって中央政権に対峙し、中世から近世にかけても多様な地域性を育んできたこの地域の足跡に触れることができる道筋であったと思います。そして、そうした日本の古き良き姿をとどめる地域の連続は、この場所がその場所の力で、まさに力強く存在してきた証である、そう強く認識をすることができた行程でもありました。八百万の神が集まる「神在月」に厳かに佇むような松江の街並みに、そうした思いがふとよぎりました。 |
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「出雲・石見めぐり」 −完− |
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