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#17 長井市・あやめ公園、静寂の初夏 〜涼やかな花菖蒲の色彩〜 2020年はコロナ過真っただ中の春から夏を迎え、各地で緊急事態宣言が発出、行動制限が課せられる異常な年となりました。感染対策に十分気を付けながら、この年の6月16日、仙台市内を訪れていた私は、午後からは自家用車で奥羽山脈を越えて山形県に入り、この日宿泊を予定していた新潟市へと向かっていました。
国道48号で関山峠を超え、山形県内陸を縦貫する国道13号へ。山形市内を通過後、新潟県北部、村上市へと進む国道113号へと進路を取りました。最上川を渡った先で北へ入り、最上川の舟運で栄えた商業都市である長井市へ立ち寄りました。長井市は山形県の内陸の南部、地元では一般的に「置賜(おきたま)地方」と呼ばれるエリアの北側に位置しています。しばしば勘違いされているかもしれませんが、県都・山形市の市街地は最上川の本流沿いではなく、その支流・馬見ヶ崎川がつくる扇状地上に発達しています。最上川はその西側をやや狭隘な峡谷を経て上流へ続き、長井市街地へつながっていきます。長井の町は最上川に野川が合流する場所に位置しています。 この日はすでに夕刻に近い時間帯となっていたため、市街地の散策などは省略し、この町の初夏をより華やかなものへとしている「長井あやめ公園」へと向かいました。あやめ公園と称しているこの公園ですが、園内に植栽されているのは花菖蒲です。例年であれば花菖蒲が最盛期を迎えるこの時期は、イベントなどが多彩に開かれているのですが、それらは時勢により中止となっていたようで、園内の花菖蒲は見事に咲き誇っていたものの、公園を訪れる人影もまばらでした。多様な花菖蒲の中には、このあやめ公園で初めて検出された「長井古種」と呼ばれる品種も含まれています。地域の人々に親しまれ、育まれてきたまさに地域の遺産とも呼ぶべき花菖蒲の花は、梅雨入り後間もないこの時期のみずみずしい夕方の空気に、これ以上ない美しさをその身に纏わせていました。
長井あやめ公園での時間の後は、新潟へ向かうべく、再び国道113号を西へ進みました。出羽山系の山々は夕日を浴びてたおやかなたたずまいを見せていまして、山麓の水田は田植えが終わり、だんだんと弱くなる残照をしずかにその水面に受け止めさせていました。 |
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