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東京優景 〜TOKYO “YUKEI”〜
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#59 狭山丘陵を歩く 〜東村山から西へ、里山の風景を訪ねる〜 (東村山市・東大和市・武蔵村山市・瑞穂町) 2014年5月24日、西武東村山駅西口をスタートし、この日の活動を始めました。多摩地域北部に位置し、都心方面へのアクセスも優れていることからベッドタウンとして成長を続ける東村山駅前には再開発で建設された超高層マンション「パークハウスワンズタワー」が屹立していまして、地域のランドマークとなっていました。駅前の商店と住宅とが混在する都道沿いを進み、野口町一丁目13番付近から斜めに北へ入る道へ、前川の流れを渡りますと弁天池公園に至ります。周辺は畑地と宅地が併存する風景に移り変わります。道路も北へ向かって緩やかに上りの傾斜となっていまして、丘陵南面の地域性を反映していました。
弁天池公園を回り込むように西へ、畑地やビニルハウスが続く住宅地域を進みますと、正福寺の門前に至ります。山門をくぐった先にある千体地蔵堂は1407(応永4)年建立とされる、多摩地域で唯一の国宝建造物です。流麗な反りを持つ檜皮葺のその屋根は青空に映えて、柔和な表情を見せていました。丘陵地を背に田園風景の中佇む地蔵堂は、往時はさぞ目を引く存在であったに違いありません。正福寺の北側には八国山緑地の森が穏やかに広がります。東京・埼玉の都県境をなす丘陵地は狭山丘陵の東縁に位置していまして、八国山の名前はかつてここから関東周辺の八国を望むことができたことに因みます。丘陵地の裾を洗うように流れる北川に沿って整備された北山公園には菖蒲苑があり、色とりどりのハナショウブが見ごろを迎えていました。 豊かな緑と水辺があり、畔畔茶の新芽が輝く畑地もあり、そうした田園風景の向こうに西武園ゆうえんちの観覧車も見える風景は、大都市近郊の多様な側面を切り取ったシーンそのものであるようで、興味深く目に映りました。近傍には縄文時代から平安時代までの遺構が発見された下宅部(しもやけべ)遺跡の資料を展示する展示・体験施設「八国山たいけんの里」も立地します。森と水に恵まれたこの地域は、古代から現在に至るまで人間にとって非常に生活のしやすい場所であったのでしょう。緑地の中を西武線沿いに針路を取りながら西へ辿り、西武園ゆうえんち付近の住宅地域を一瞥しながら歩いて、多摩湖の名前で通称される村山貯水池のほとりへと歩を進めました。
村山貯水池は急増する東京の水需要に対応するために、狭山丘陵内の峡谷の一部を堰き止めて建設された人造湖です。1927(昭和2)年の完成以来、現在に至るまで東京都の水がめとして周辺環境とともに保全されています。貯水池東の堤体部分は遊歩道になっていまして、建設当時に高欄や親柱、取水塔などの土木遺産を観察することができます。豊かな森に周囲を囲まれる湖面はとてもなめらかな印象で、メットライフドームの一部も顔を出していました。貯水池自体は東大和市域に存在しています。堤体を南へ横断した後は貯水池南の住宅地に沿った街路を歩き、狭山丘陵をさらに西へ進みました。貯水池を囲む豊富な森は新緑の輝きに溢れていまして、住宅地に快い木漏れ日を届けていました。 しばらく貯水池近くの道路を歩いた後は青梅街道に下って、バスを利用して武蔵村山市役所近くまで移動し、野山北・六道山公園として供される里山へと分け入りました。狭山丘陵には樹脂状に食い込む谷間が幾筋も形成されていまして、それらの谷筋は「谷津(やつ)」とか「谷戸(やと)」などと呼ばれます。武蔵村山市の西端、瑞穂町との境界を構成する「宮野入」と名付けられた谷津を辿り、谷津田と里山の風景に浸りました。谷津内には「里山民家」と呼ばれる茅葺の伝統的な民家が再現されていまして、農村の原風景を体現していました。谷津を上って丘陵の尾根筋を歩き、六道山展望台へ。緑に覆われた丘陵地の彼方には、遠く都心方面や横田基地周辺を望むことができました。
展望台からは、尾根の上をなぞるように、森の中の小路を散策しました。コナラやクヌギを主体とした森はここが農村の後背地として雑木林が形成されてきた場所であったことを示しています。現在は武蔵野台地一帯が都市化されていますが、元来集落は丘陵地の山裾に寄り添うように展開していまして、その南の台地上は茫漠とした畑地となっていました。初夏の新緑がきらめくような狭山丘陵の緑は、里山として日々の生活と密接に結びついてきた歴史を今に伝えています。林を進む山道での行程では、時折小さな祠や神社などにも出会いまして、そうした地域の歩みを感じさせました。 |
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