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HIROSHIMA REVIEW

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#15 舟入地区の風景 〜地名に歴史を残す都心近傍のまち〜

 2014年12月30日、正午前に松山観光港を出港した高速船は、波穏やかな瀬戸内海を越えて、およそ1時間10分ほどの航海を経て広島港(宇品旅客ターミナル)へ到着しました。船上からそのままアクセスできる路面電車を利用し、市中心部の紙屋町へ。この日の夜に東京へと出発する夜行バスの出発点であるバスセンターに荷物を置き、歳末の広島の町を歩きました。

紙屋町

紙屋町交差点
(中区基町、2014.12.30撮影)
原爆ドーム

原爆ドーム(健全度調査施工中)
(中区大手町一丁目、2014.12.30撮影)
元安川沿い

元安川沿い、平和記念公園を望む
(中区大手町一丁目、2014.12.30撮影)
元安川

元安橋より原爆ドームを望む
(中区中島町/大手町一丁目、2014.12.30撮影)

 紙屋町は相生通りと理城通りとの交点にある、広島における最大の繁華街の一角を占めるエリアです。多くの自動車亜行き交う中にあって路面電車もひっきりなしに通過するようすは、広島の町を特徴づける風景です。国内の多くの大都市でモータリゼーションの進展に伴い路面電車が廃止された中にあって、広島では今日でも市民の大切な足として路面電車が機能しています。紙屋町東電停を下りて相生通りを東へ進み、原爆ドーム前へ。原爆の惨禍を伝える原爆ドームは、この日は全体を足場で覆われていました。表示板によると修繕などではないようで、ドームのひび割れや沈下量などを調べる健全度調査が行われているようでした。この調査は3年ごとに実施されているとのことです。元安川沿いに出て、水辺の美しい景観を見ながら元安橋を渡り、平和記念公園へ。穏やかな冬晴れの下、平和を希求する灯火は穏やかに灯っていました。

 元安橋から本川橋へと至る道筋はかつての西国街道に当たり、原爆投下により壊滅するまでは広島市街地における繁華街の一角を担っていました。相生通りが電車通りとなり主要幹線道路の位置づけに移ってもなお、活気のある中心商店街として栄えました。本川橋西詰から西へ延長し己斐橋へ至るルートが県道265号の指定を受けていることも、そうした歴史を踏まえているものであるのでしょうか。横川駅前から南下する寺町通りに出て、土橋電停を一瞥しながら南へ歩きます。宮島方面への鉄路を西へ分けますと、程なくして平和大通りへ到達します。市街地を東西に貫くシンボルロードは、冬のこの日も豊かな緑を宿していまして、町並みに潤いを与えていました。

本川橋

本川橋より、本川を望む
(中区堺町一丁目/中島町、2014.12.30撮影))
土橋町交差点

土橋町交差点
(中区堺町二丁目、2014.12.30撮影)
平和大通り

平和大通り
(中区舟入町/小網町、2014.12.30撮影)
舟入通り

舟入通り沿いの景観
(中区河原町、2014.12.30撮影)

 「寺町通り」の通称は平和大通りまでで、大通りを越えますと通りは「舟入通り」と呼ばれるようになります。通りの名前は道筋が横断する舟入地区に因むものです。舟入地区は本川(ほんかわ、旧太田川)と天満川(てんまがわ)とに挟まれた南北に細長い範域を持ち、かつて独立した島であった江波地区へと連接していきます。舟入の地名の由来は、藩政期に多くの船が瀬戸内海より入港してきたことによります。広島市街地は太田川デルタを南へ干拓しながら開発された歴史を持ちますが、舟入地区もそうした過程で江波島との間が陸化して形成されました。現在では中心市街地に近く、かつ路面電車や多くのバス便に恵まれた、都心へのアクセスが良好な立地であることもあり、多くの住宅やマンションが建ち並ぶエリアとなっています。

 平和大通りを過ぎて電車通りを歩きますと、沿線にはたくさんのマンションが屹立して、そうした地区の特性が実感されます。中央に複線の軌道敷、両側に片側二車線の車道を持つ舟入通りは地域を燦然と画していまして、活気ある都市交通を軽快に受け入れています。路面電車も頻繁に往来していまして、広域中心都市・広島の町の大きさを象徴しているように感じます。本川沿いに出ますと、川がより身近に迫って、広島が「水の都」であることを再認識させます。舟入通り沿いの高層建築物が目立つ景観とは変わって、低層の住宅街が中心となる近隣風景も相まって、中心市街地から離れた静かな地域の姿にも触れました。

舟入通り

路面電車が走る景観(舟入通り)
(中区舟入町、2014.12.30撮影)
本川

本川、中島神崎橋を望む
(中区舟入中町、2014.12.30撮影)
国道2号

国道2号沿いの景観
(中区舟入中町、2014.12.30撮影)
天満川

天満川の景観(新観音橋付近)
(中区舟入中町、2014.12.30撮影)
舟入本町

舟入本町電停付近の商店街
(中区舟入本町、2014.12.30撮影)


舟入本町電停
(中区舟入本町、2014.12.30撮影)

地区の中央を東西に貫通する国道2号(新広島バイパス)の往来を確認し、舟入本町電停より中心市街地へ戻り、地区の概観を終えました。電停の周辺には昔ながらの商店街もあって、古き良き住宅街が都市の成長にしたがって徐々に中高層のマンションが増えて、その姿を変えてきた地域の変遷を彷彿させていました。

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