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#18 千代田町赤岩を歩く 〜渡船と利根大堰を巡る〜 2020年5月17日、コロナ渦の現況を鑑み緊急事態宣言が続く中、地元太田市近傍を巡るフィールドワークは、少し足を伸ばして、太田市の南東、千代田町の赤岩地区周辺を訪れました。近世以降日本における物流の中心は河川や海洋と行き交った舟運でした。河川交通の大動脈であった利根川の河岸として発達した赤岩では、利根川ではわずかとなった渡船が現存し、対岸の熊谷市葛和田地区の間とを結んでいます。
地区の西に隣接するなかさと公園に自家用車を止めて、初夏の日差しと緑がまぶしい公園内を歩いて、利根川の堤防上に出ます。堤防の上からは雄大な利根川の流れを背景に、赤城山や榛名山、浅間山をはじめ、秩父や関東山地、日光方面などの山並みを広く望むことができます。赤岩の渡し(赤岩渡船)の場所まで歩く中途では、眼下に麦の植えられた水田や緑に囲まれた集落景観をたおやかに眺めることができました。渡船場からはいったん離れて、赤岩の町並みを散策します。舟運から鉄道、自動車交通へとシフトするにつれてローカルな中心地のひとつとしてその役割を変えた赤岩の家並みは、料亭や寺院などが佇んで、交通の要衝として栄えた往時の面影を静かに残しているように感じられました。 安楽寺や光恩寺といった寺院の存在も、かつての赤岩の町の大きさを物語るものです。高度経済成長期直前までは近在でも規模の大きい町場であった赤岩の町並みを抜けて、麦が色づく田の混在する路傍を通り、再び利根川の堤防上の道へと躍り出ます。空は引き続き明るい空色を呈して、眼下の集落と田園風景、背後の山並みがとてもすがすがしく眺められます。そして何より、この茫漠たる関東平野のど真ん中を、ゆったりとたゆたう利根川の流れは、何よりも存在感がありました。冬場はこの堤防上を空っ風が勢いよく吹き抜けることでしょう。家並みも風上側に屋敷林を伴っているものが多く認められます。首都圏へ生活用水を供給するために設置されている利根大堰上をゆく武蔵大橋を渡り、埼玉県側へ。堰からは武蔵水路などへ水が勢いよく吸い込まれていく様子を眺めることができました。
利根川右岸の堤防上の道を上流へととって返します。福川の合流点でやや迂回する形になりますが、概ね堤防の上を歩いて行きますと、上述の葛和田地区の渡し船の発着点へとたどり着くことができました。周辺の景観は、水田に麦が植えられた田園風景で、埼玉県北部と群馬県下が風土を一にしていることが理解されるものでした。対岸の千代田町側へ乗船の意思表示をするために、黄色い旗を揚げます。やってきた渡船に乗り込み、利根川の広い流れを渡って、赤岩へと戻りました。船から観察する利根川の水面はとても軽やかに行き過ぎて、この流れが長い歴史の中で物流を担い、人々の生活を支えてきたことを改めて実感しました。 |
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