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関東の諸都市・地域を歩く


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#1 水戸市街地を歩く 〜たおやかな丘の町〜

水戸の中心市街地は、那珂川のつくる河岸段丘上に、たおやかに展開しています。梅の開花がはじまった偕楽園からは、段丘崖に沿った緑の向こう、千波湖の水面を美しく望むことができます。紅梅、白梅が春の薄い青空にやさしい春色を届けるのを見届けてから、水戸市街地の散策へと出かけました。

偕楽園前から、北西へ住宅地を歩き、県立歴史館へ。この歴史館は、市街地内にあって、とても広大なスペースがゆたかな木立を含む公園として整備されています。公園内には旧水海道小学校本館の建物や旧水戸農業高等学校本館など、寄棟の歴史的建築物が移築されていまして、公園の美観をいっそう引き立てています。水海道小学校の建物は、1881(明治14)年に建築されたのですが、寄棟の建物の中央にバルコニーを含む張り出し部を備え、その上に円筒型の尖塔を突き出させるという洋風の容貌を見せています。

偕楽橋から見上げる偕楽園

偕楽橋から望む偕楽園
(水戸市常磐町一丁目、2004.2.14撮影)
偕楽園から望む千波湖

偕楽園から望む紅梅と千波湖
(水戸市常磐町一丁目、2004.2.14撮影)
歴史館内、旧水海道小学校

歴史館内、旧水海道小学校
(水戸市緑町二丁目、2004.2.14撮影)
末広町の景観

末広町の景観
(水戸市末広町三丁目、2004.2.14撮影)

大工町の大通りを横断します。水戸の市街地の道路は、直線があると時折鉤の手のようなカーブがあり、また直線が延びるという形になっているようですが、この曲がった部分は水戸城の掘割があった場所を反映しているようですね。こういった部分は「りょうもうWalker」でご紹介している館林市街地にも見られる特徴ですね。

東原から上水戸、新荘付近には、市立第一中学校から水戸商業高校、水戸女子高校などが建ち並ぶ、ちょっとした文教地域で、共通した街灯がつけられていましたね。水戸商業の巨大な建物に度肝を抜かされましたが、付近にはちょっとした雑木林も見られます。このあたりが水戸城下の西の外れだったのでしょうか。

保和苑の庭園の緑や、水戸八幡宮あたりも、ちょっとした市街地ですね。道路は交通量が多いですし、道に面して高層マンションなども多く、現代の都市的ななかにあって、明治大正期の和風・洋風建築を髣髴とさせ近代遺産とでも呼びたい穏やかな商店が多いのに驚きました。桂願寺の西側には、水戸藩士の共同墓地が佇んでいまして、そこへの門前町のような機能をもった地域なのだと直感しました。

末広町一丁目交差点から、大工町へ向かいます。大工町交差点も、上述したクランクを反映して微妙に道路がカーブを描いています。歩道橋から眺めますと、密度の高い市街地が展開していまして、高度成長期に最も成長した街区の1つであろうことが容易に推察できました。古めかしいけれども味のある商店が建ち並ぶ中で、東京三菱銀行のモダンな建物があるなど、町並みのちょっとした変化が楽しいですね。千波公園となっている、西の谷の切れ込んだ場所の竹林があるのも、段丘上の市街地であることを実感します。泉町、南町と商店街が駅前まで続くにつれて、街路は徐々に下りの勾配を強めて、水戸中央郵便局前から、三の丸一丁目交差点までの間で一気に国道は段丘を駆け下りていきます。この付近は水戸駅の設置に伴って発達した新しい市街地なのでしょうね。

大工町交差点、西方向

大工町交差点、西方向
(水戸市大工町二丁目、2004.2.14撮影)
泉町一丁目交差点付近

泉町一丁目交差点付近
(水戸市泉町一丁目、2004.2.14撮影)
万代橋方向を眺める

万代橋方向を眺める
(水戸市金町一丁目、2004.2.14撮影)
NTT塔(左)と芸術館の塔(右)

NTT鉄塔(左)と芸術館の塔(右)
(水戸市金町一丁目、2004.2.14撮影)

南町三丁目から、ちょっと北へ折れて、万代橋方向へ歩いてみました。この街路は、梅香トンネル・梅香高架橋の新設により、中心市街地を経由せずに南北の移動ができるルートとなったのですが、気象台の横からは、那珂川のつくる段丘の様子を一望できまして、なかなかの眺めでした。市街地北側の段丘崖は豊かな緑地となって、その崖下に穏やかな住宅地を作り出しています。水戸芸術館の塔も燦然と屹立しています。

駅前は、ペデストリアンデッキが広く整備されています。市役所のある駅の南側は、段丘上の城下を「上町」といったのに対し、「下町」と呼ばれた城下町の一部だったそうですが、駅舎や線路が並ぶ向こうに、下町の市街地の様子も眺めれます。中心市街地が細かいブロックで住居表示がなされて、高密度の商業地・業務地区を形成しているのに対し、茨城県庁が移転した駅南側の台地上は、いまだ「千波町」「元吉田町」など、昔ながらの地番を残す地域となっていて、高度経済成長に伴って住宅地化・市街地化が進んだ地域であることを暗に示しています。市街地をショートカットしてこの地域へつながる梅香ルートの完成、県庁の移転、下町地域から千波地域方面の市街化の様子を考えるにあたり、中心市街地が今後どのような位置づけになるのでしょうか。千波湖のほとりからは、丘の上の水戸の中心市街地はとてもたおやかに見上げられます。


千波湖と水戸市街地

千波湖と水戸市街地
(水戸市千波町、2004.2.14撮影)
三の丸一丁目交差点より西方向

三の丸一丁目交差点より西方向
(水戸市三の丸一丁目、2004.2.14撮影)

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