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関東の諸都市・地域を歩く


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#106 三郷市の地域を訪ねる 〜急激に市街化が進んだ郊外のすがた〜

 2016年9月10日、つくばエクスプレスの三郷中央駅からこの日の活動を始めました。三郷中央駅は2005(平成17)年8月に、同線の開業とともに開設されました。都心へ直結する駅周辺は開発が進んでいるようで、多くのマンションが立地していました。駅のすぐ西側を流れる第二大場川に沿ってまずは南へと進みました。駅の近くは「におどり公園」として整備されてまして、駅から離れると戸建ての住宅も認められるようになっていきます。

三郷中央駅

TX三郷中央駅前の景観
(三郷市中央一丁目、2016.9.10撮影)
三郷放水路

三郷放水路
(三郷市栄二丁目、2016.9.10撮影)
中川

中川沿いから東京スカイツリーを望む
(三郷市栄一丁目、2016.9.10撮影)
二郷半領用水

住宅地を流れる二郷半領用水
(三郷市谷口、2016.9.10撮影)

 三郷市は埼玉県の東南の端に位置する人口約14万人の町です。市域は南北に細長い形状をしていまして、東は江戸川により千葉県(流山市・松戸市)に接し、西は蛇行する中川を介して八潮市にそれぞれ接しています。中央部を大場川がこれら2つの河川に並行して南北に流れて、第二大場川はその西側を流下しています。大場川は1675(延宝3)年に悪水の配水を目的として作られた人口河川で、第二大場川も詳しく調べることができませんでしたがほぼ同様の成り立ちを持つものと推測します。このように、多くの河川が通過する低地帯に位置する三郷市の地域は、常に水害の危険と隣り合わせの場所であることが理解されます。第二大場川沿いを南に歩いて程なく到達した三郷放水路も、中川流域が特に土地が低く水はけが悪いことから、排水や水質改善などを目的として1973(昭和48)年に完成しています。放水路の両岸には土手が建設されて、その上には桜並木や遊歩道が整えられて、近隣における憩いの場としても放水路は供されているようでした。穏やかに水を湛える水路の上の空は高くて、外環道の下をくぐり、中川側に設置された水門の付近からはその広々とした空の向こうに東京スカイツリーを遠望することができました。

 ゆったりと流れる中川のすがたを一瞥しながら、栄一丁目の住宅地へと進み、つくばエクスプレスの高架下を越えて北へと歩を進めます。全体として新興住宅地域としての景観が卓越していますが、寺院や神社が立地するなど、古くは中川の自然堤防上に集落が形づくられていたのではないかと類推される地域を歩いて行きます。そうした歴史を感じさせる事物のひとつが、このエリアを穏やかに潤す二郷半領(にごうはんりょう)用水の存在です。この用水路はかつて二郷半領と呼ばれた吉川市から三郷市にかけての地域の灌漑のために江戸時代に整備されたものです。水はけの悪い地域の灌漑排水整備が行われた結果、この地域は豊かな穀倉地帯へと変貌しました。用水沿いを歩いて行きますと、やがて黄金色に色づいた水田が広がる場所に出まして、そうした地域の歴史を垣間見ることができました。

二郷半領用水と首都高

二郷半領用水から首都高速を望む
(三郷市花和田、2016.9.10撮影)
水田風景

二郷半領用紙沿いの水田
(三郷市上口一丁目、2016.9.10撮影)
外環道沿いの風景

外環道沿いの流通関連の事業所
(三郷市彦倉二丁目、2016.9.10撮影)
新三郷駅前

JR新三郷駅前
(三郷市新三郷ららシティ三丁目、2016.9.10撮影)

 常磐道・首都高と外環道とが交差する三郷ジャンクション付近の流通機能が集積する一帯を概観しながら、その北側のショッピングセンターが集まる一角に進んでこの日の活動を終えました。ここから北東に位置するJR新三郷駅へはタクシーを利用し移動しましたが、同駅は操車場を挟んで上下線のホームが離れて設置されていることで知られていました。操車場は駅開業(1985(昭和60)年の翌年に廃止され、現在は上下線は統合されています。操車場の跡地は「新三郷ららシティ」として再開発され、複数の商業施設が立地し、多くの集客を得る商業拠点として機能しています。交通網の整備と郊外化により急激な人口増を見せて大きく変貌してきた三郷市の地域には、その新しい景観の中に、低平な地形を克服し水田開発を進めてきた来歴が穏やかに存立していました。何より農村的土地利用が卓越していた1956(昭和31)年に3つの村が合併して誕生した「三郷」という名前にそうした気分が多分に含まれているように思います(合併当時は村でしたが、1964年には町に、そして1972年には市へ急成長を遂げています)。

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