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関東の諸都市・地域を歩く
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#149 長瀞秋の七草寺めぐり2018 ~秋の花と地域の姿を訪ねる~ 2018年9月16日、毎年恒例の長瀞秋の七草寺めぐりに参加すべく、秩父鉄道の長瀞駅を訪れました。下り列車は跨線橋のない島状のプラットホームに着くため、改札へは線路を横切る必要があります。構内踏切で列車が通過するのを待ち、レトロな雰囲気の簡素な駅舎へと進みます。駅前からは宝登山神社まで参道が続き、国道の信号に面して大鳥居が佇みます。駅前広場の松と駅前の町並み、参道の風景、そして背後の宝登山の山並みがやさしく寄り添います。まずは宝登山麓の不動寺へ、初秋とは言えまだ緑濃い参道の坂をゆったりと進んでいきます。
宝登山神社前のロータリーを通り、西南方向の坂を登った先に不動寺が佇みます。かわいらしい撫子の花の他、境内に接する山の斜面には紅白の彼岸花もたくさん咲いていまして、秋の風情を感じさせました。参拝からの帰路、宝登山神社へもお参りしました。森の中の石段を進んだ向こうに、銅葺き入母屋造の簡素な佇まいの社殿が鎮座していました。秩父神社、三峯神社とともに秩父三社の一つとして知られる古社です。言い伝えでは、日本武尊が山に登ったときに山火事に遭い、その際に巨犬が現れて火を消したとされ、「火止(ほど)神社」と呼ばれたとのことです。ロータリー脇の小道を入り、穏やかな集落の中を北へ歩きます。路傍にはコスモスや柿の実、色づく前の栗のいがや、穂を垂れ始めた水田などがありまして、移りゆく季節を目で実感することができます。町立第一小学校脇の歩道橋で国道を越え、さらにのびやかな集落の中を進みますと、秩父鉄道の線路を越えた先に女郎花の真性寺がありました。女郎花はさわやかなレモンイエローとクリーム色をいっぱいに花に湛えていまして、明るい蒼穹に映えていました。 輝かしい日射しを受けて瑠璃色にきらめく荒川と、長瀞渓谷の清爽な風景を金石水管橋より俯瞰しました。この水道管の敷設を兼ねた人道橋は、長瀞町内において人が通行できる最上流に位置していまして、日常的な足として貴重な存在となっています。対岸の畑と集落が広がる風景も変わらない長閑さに満ちていまして、法善寺境内では、多様な種類の藤袴が秋の彩りを添えていました。再び荒川を渡り、たどり着いた多宝寺では、例年花期が早く花があまり残っていないことの多い桔梗の花が半分ほど美しい花を付けていました。秋の澄んだ空の色そのままの桔梗の花弁は、残暑の熱量を幾分か緩和させてくれるみずみずしさを湛えていました。国道を渡って西側の山並みに沿って、洞昌院へゆるやかな道のりを歩みます。沿道には酔芙蓉やススキが秋の訪れを告げていたほか、稲穂も徐々に色づいていまして、実りの季節の到来を感じさせました。
斜面に境内地を持つ洞昌院では、参道や本堂脇やその背後にまで、たくさんの萩の花があって、圧巻の秋の風光が完成されていました。白と赤紫色の花が無数に枝に着き、風にそよぐ様は、実に優雅で、しなやかな趣きに溢れています。洞昌院から次の遍照寺までのルートは山越えとなり急な傾斜を進むことになるため、ここで涼やかな萩の花を愛でながら、休息をとる人々も少なくないようでした。酔芙蓉やキバナコスモスが道端にのびやかな色を添える山裾の道路を歩きます。道沿いには高窓を擁する昔ながらの養蚕農家特有の構造を持つ家もあり、繊維産業が盛んであった地域の歴史を今に伝えています。途中で小川を越えて急な山道を登りますと、葛の寺である遍照寺にたどり着きます。かすかに甘い匂いを放つ葛の花は旺盛に棚に繁茂していまして、こうした野性味溢れる花にも秋の風情を感じた先人に思いを馳せました。 遍照寺からは山を下る道を進みます。周囲の森はまだ夏の色を残していまして、やがて訪れる落葉の時に向けて、いっぱいに日の光を受けているように感じられます。国道140号沿いをひたすたに北へ進み、樋口駅手前で荒川端へ、秩父鉄道の踏切を越えて躍り出ます。相変わらず雄大な河谷を見せる荒川の崖上でも葛の花がたくさん咲いていまして、だんだんと空がその透明度を増していくこの時期の玄趣に触れることができました。三度荒川を渡った先には、七草寺最後の訪問地となる、尾花の道光寺が境内にたくさんのススキやその中間に寄り添うように佇んでいました。
ここ数年、その美しい花々の織りなす風情を確認するために長瀞を訪れていますが、古来数々の人々が秋の訪れをもののあわれを胸に響かせた七草の色彩と風合いは変わらぬ美しさを秘めていまして、四季折々に出会う日常の何気ない風物に季節感を記してきた我が国の鮮やかな伝統に心踊らされる訪問となったように思いました。 |
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