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シリーズ京都を歩く
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18.閑寂凛烈の黙 ~2017年京都初冬の風景~ |
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第四十七段 東山周辺、初冬を装う景観(後) 円山公園の冬の風景を確認した後は、公園を北に出て、壮大な三門が秀麗な姿を見せる知恩院門前を通ってクスノキが穏やかな木陰をつくる青蓮院門跡前へ。神宮通を平安神宮の大鳥居を前方に観ながら歩き、琵琶湖疎水沿いを蹴上方面へと進みました。蹴上のインクラインや、南禅寺境内の水路閣などともに、明治期に京都が近代都市として再生しようと模索した歴史を写す遺構を訪ねることができるエリアの一つであると言えます。岡崎公園も1895(明治28)年に開催された内国勧業博覧会場の跡地に整備されたもので、平安神宮の創始も同時期です。
南禅寺境内のカエデはすっかり葉を落としていまして、冬の装いとなっていました。地面には木々を彩った錦の葉が柔らかく降り積もっていまして、穏やかな冬の日差しを受けた木の陰を映し出していたのが印象的でした。枝先には新芽が既に形成されていまして、芽吹きの季節へ供えていたのも目を引きました。三門と境内のカエデ、そして門前の松並木がつくる風景は南禅寺を象徴する風景で、四季折々にしなやかな情景をこの東山の山麓につくり出しています。南禅寺からはさらに北へ進み、「もみじの永観堂」として知られる禅林寺の門前へと移動しました。ここでも多くの木々は梢を冬の風にさらしていましたが、門前近くには鮮やかな紅葉が一部に残っていまして、豊かな暖色のグラデーションを構成していました。 永観堂前の鹿ヶ谷通を北へさらに歩き、熊野若王子神社の法へ続くゆるやかな坂道を上っていきますと、哲学の道として知られる疎水沿いの散策路の南の端へと導かれます。前述しました琵琶湖疎水の分流に沿って続く散策路は、多くの文人などの思索の場となり、やがて「哲学の道」と呼ばれるようになりました。この道を訪れる度に、東山の豊かな自然に抱かれた木々の美しさと、京都の家並みを望むのびやかな風景に癒やされます。京都という町が近代化という時代の波に対応するためにつくられた疎水は、この町が育んでいた歴史や文化としなやかに溶け込んで、新たな情緒を生んでいます。訪れたこの日の哲学の道周辺は、落ち葉の緋色の絨毯と、サザンカの慎ましやかな色合いとが落ち着いた風合いを見せていまして、冷たい初冬の空気にささやかな温もりを与えているように感じられました。
哲学の道から白川通へと降りて、白川の流れを越えて吉田山の丘陵を辿り、真如堂の名で親しまれる真正極楽寺へと進みました。真如堂へと向かう途上から振り返りますと、背後の東山の山並みが目の前にやさしくその身を横たえていまして、京都盆地の東を画するエッジとして存在し続けてきた峰々の質量を感じさせました。真如堂は紅葉の名所として多くの参詣客を集める名刹として知られますが、この日は訪れる人影もまばらで、冬に向けてその葉のボリュームを落としたカエデの寒林が、冬空の下堂塔をしめやかに覆っていました。三重塔の脇を西へ向かって下る石段沿いの木々も落葉盛んで、三重塔やその先の本堂の甍が木々の影にやさしく重なって、玄冬そして新年へと進む季節の情趣を演出していました。 真如堂境内を散策した後は、南に位置する、「くろ谷さん」の通称で親しまれる金戒光明寺へ。京都盆地を見下ろす吉田山の麓に営まれた堂宇は、法然上人が最初に草庵を開いた土地であると伝えられています。1944(昭和19)年再建の御影堂(大殿)は、冬の穏やかな光に照らされた青空の下、燦然とした姿を見せていました。開創時は京都でも郊外に位置していたこの場所も、丘陵を反映した石段を三門をくぐり参道を進みますと、現代の京都の町並みに隣り合う立地となっています。聖護院門跡を訪ね、京大病院南を歩き鴨川端へ。京都を代表する景観の一つである鴨川も平安京の時代は町外れに位置していまして、市街地に組み込まれたのは後の時代のことでした。古都のたおやかな家並みと、東山から比良山系、丹波高地へと続く稜線、そして比叡山のシルエットが穏やかに重なりある風景は、いつ訪れても極上の感慨を胸に起こさせます。
荒神口通で鴨川を渡り、京都御所東側の町並みを歩きます。幕末における尊皇攘夷派の公家として明治維新の時代を牽引した三条実美とその父実万を祀る梨木神社や、紫式部邸跡と比定される廬山寺を訪ねて、多彩な歴史を歩んだ京都の現在を実感しました。 |
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