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新潟・天地豊穣
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#18 弥彦から三条市街地へ 〜越後平野を見通す山塊の周辺〜 2020年6月17日、新潟市巻を訪れた後は、越後平野の中部、海岸に沿って屹立する弥彦山を訪れました。田植えが終わって稲がすがすがしい緑色を呈する水田がどこまでも、どこまでも広がる風景は、我が国最大の穀倉地帯である越後平野の矜持そのもの出あるように感じます。その田園の彼方、弥彦山はしなやかな稜線を青空に溶け込ませていました。
弥彦山塊をトンネルで抜ける国道460号を進み、海岸沿いを抜ける国道402号、通称「越後七浦シーサイドライン」へ。海と平野とを分ける巨大な壁のような山脈の西側は、緑豊かな山が海に直接墜ちるようなダイナミックな奇勝が広がっていました。そして、水平線に目をやりますと、幾重にも緩やかな山並みが悠然と横たわっていました。弥彦山あたりはこの山体−佐渡島−との距離が最も近いということもあって、佐渡が本当に間近に望まれるのでした。しばらく海沿いのドライブを行った後は、弥彦山スカイラインに入り、一気に標高を上がりました。弥彦山の標高は634メートルで、それは東京スカイツリーと同じです。ロープウェイでも到達することのできる山頂からは、西に日本海と佐渡島、そして沿岸の、そして東側には広大な越後平野と背景の越後平野の、それぞれの大パノラマを俯瞰することができました。越後山脈の峰々はわずかに残雪を纏って、彼方には越後駒ヶ岳と中ノ岳の山容も見えました。 弥彦山からの眺望を確認した後は、平野側にスカイラインを下って、弥彦山をご神体とする、越後国一宮である彌彦神社へ。梅雨の間の晴れ間で、社叢は鮮やかな緑色を湛えて、背後の崇高な山並みに寄り添っていました。開業当時から寺社造り(入母屋造)の壮麗な駅舎が目を引くJR弥彦駅との間には、彌彦神社の摂社や寺院などが佇む、穏やかな鳥居前の町並みが広がります。親鸞が参拝した折、渇水を聞いて地面を指すと湧き出したと伝わる「親鸞清水」や、県天然記念物の住吉神社大欅などもあって、歴史的な事物も数多く点在してました。温泉街としての側面もあって、多くの観光客を集めるエリアとなっているようでした。
弥彦駅からJR弥彦線に乗車し、越後線との接続駅である吉田駅で列車を乗り継いで、東三条駅へ。沿線風景は、弥彦山麓の田園風景から、吉田、燕、三条と続く市街地が連なる風景へと移り変わります。特に燕と三条は中ノ口川と信濃川とが分流する間、新幹線の燕三条駅を挟んで市街地が連担していまして、燕三条駅を過ぎますと、越後線は高架上を終着の東三条駅までを進む形となります。信濃川と中ノ口川が分かれ、そこへ五十嵐川が注ぐ場所に三条市街地が発達していました。東三条駅の北側から市街地の散策を始めます。県道121号を西へ進み、市役所近くの旭町交差点へ。交差点近くには観音寺があり、このあたりから西南の一帯には多くの寺院がまとまっている印象です。そうした寺院を訪ねるうちに、「良寛の道」なる散策路を示す標識に出会いました。三条は良寛が托鉢に訪れていた町であるそうで、良案の足跡を辿る道筋として、このルートが設けられているようでした。 重要文化財の阿弥陀如来立像が安置される乗蓮寺から定明寺などを経て、北三条駅へ。高架下の散策路を歩きながら、旧三条小学校の北側あたりへと進みます。この付近一帯は藩政期初期に存在した三条藩の本拠・三条城のあった場所でした。弥彦線の鉄路の北側の地名・東裏館や西裏館も、この城の存在と関係しているのかもしれません。住宅が密集する市街地を進みますと、穏やかな佇まいを見せる八幡宮へと至りました。境内の南には堀も存在していまして、ここが城跡に近い場所であることを感じさせました。信濃川の河川敷へ出てその流れを一瞥した後は、五十嵐川右岸一帯に広がる山上の中心市街地を歩きました。雁木のある古い町並みは、多くの時間を積み上げてきた中心地としての質を感じさせました。旧丸井今井邸はその歴史を凝縮させたランドマークとして、地域を照らしているように見えました。
雁木の町並みを歩き、寺院のある町並みを進みますと、この町が歩んだ歴史の厚みのようなものを改めて実感します。高架駅の北三条駅から再び弥彦駅へと戻り、もう一度弥彦山頂を訪れました。夕方が迫る中、鏡のような日本海がこの上のないほどの輝きを見せてきらめいていました。その上にくっきりと浮かび上がる佐渡島のシルエットも、とても優美で、仲夏へ向かう季節のさわやかな熱量に満ちていました。夕闇に染まろうとする越後平野には弥彦山の影が重なって、大地と山並みに抱かれるこの地域の特徴が見事にそこに描かれているようにも感じました。 |
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