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大阪ストーリーズ
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#28 「石切さん」参詣の風景 〜都市化の進む門前の町並み〜 2019年9月8日、千里中央から万博記念公園を訪れていた私は、モノレールと地下鉄で新大阪駅へ戻り、この年の春に延伸開業したJRおおさか東線を利用し河内永和駅へ、そして近鉄線に乗り換えて石切駅へと向かいました。生駒山地の麓に位置する同駅は、「石切さん」「でんぼ(腫れ物)の神様」として信仰される石切劔箭(いしきりつるぎや)神社へのアクセス駅の一つとなっています。駅前から続く「石切参道商店街」へと歩を進めます。
鉄道の高架脇にはめ込まれたようにしてある鳥居をくぐり、やはり線路脇に張り付くように立ち並ぶ灯籠がどこか無機質な印象を与える道路を歩きます。参道は戸建てやアパートなどが混じる住宅地域を進みますが、時折大阪の都心への眺望が一気に開けて、この地域が生駒山地の山麓における勾配のある場所であることをそれは実感させます。その遠景は、高層ビルが林立する中心部まで、建造物によってほぼ充填された、大阪大都市圏の地域性をも如実に表わしていました。やがて「ようこそ石切さんへ」のサインが掲げられたアーチをくぐり、風景は参道の商店街へと徐々に移り変わっていきます。沿線には光堂と呼ばれる本堂と府の文化財指定を受ける千手観音立像で知られる千手寺も佇みます。 神社が近づくにつれて、商店もその密度を増して、土産物店や飲食店その他の多様な店舗がそれぞれの特徴を店ながら営業していました。振り返りますと、道に張り出すような店の軒と軒とのわずかな隙間から生駒山系の山並みが見えます。この日も凄まじい残暑が続いていまして、商店街がつくる日陰が日射しを遮って、心なしかさわやかな風が吹き込んでいるような気がいたしました。神社の手前、特に多くの店が軒を連ねるクランク部分を過ぎますと、石切劔箭神社の鳥居の前へと導かれました。参道に面して多くの寄進された石柱が並んでいまして、このお社が古来より人々の崇敬を集めてきたことを物語っていました。
残暑の最中にあっても、石切さんには多くの参詣客が集まっていました。石切神社は、「お百度参り」で全国的に知られます。本殿の前、三之鳥居との間の参道に、2つの「お百度石」があって、その石の間を周回しながら、参拝をしていきます。お百度といいますが、必ず100回回る必要は無く、自身で決めた回数回って、祈りを捧げます。神社には「お百度紐」と呼ばれる、紐を束にしたものが頒布されていまして、一周するごとに紐を折ることによって、何回回ったかを数えることができるようになっています。腫れ物や病気快癒への信仰の篤い石切さんの社殿前では、たくさんの人々がお百度紐を手にしながら、お百度参りにいそしんでいました。 私もお百度紐を掲げて、酷暑の下、お百度参りを実践しました。境内は豊かな緑に包まれていますが、輝く青空から降り注ぐ強力な日射が、止めどない発汗を促します。お百度参りを終えて門前の飲食店で休憩後、南側の参詣道を辿り、近鉄けいはんな線の新石切駅方面へを向かいました。神門にあたる絵馬殿の屋根の頂点には、神社の名前を象徴する剣と矢を模した意匠があって、暑さの残る初秋の空に光り輝いていました。第二阪奈道路と近鉄けいはんな線が地下を通る地上部分にはその幅員に相当した市道があるものの、石切神社前信号から東で途切れるためか、行き交う車両は少ない印象でした。道路のある広い空間が生駒山系への視界を確保してくれているため、大阪平野をたおやかに見下ろすその山稜を美しく眺望することができました。
高架上の新石切駅からは、地下鉄中央線へ直通する列車に乗り、市街化が高度に進捗した東大阪市街地の様子を概観しました。本町駅で御堂筋線に乗り換え、新大阪駅へ。そのまま新幹線で帰路に就きましたが、時間的に間に合わないかもしれないと思っていた列車に間一髪で乗車することができ、その経験は大阪大都市圏のコンパクトさを実感させました。 |
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