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大阪ストーリーズ
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#27 千里中央から万博記念公園へ 〜郊外化の受け皿となった丘陵地域〜 2019年9月8日、前日より大阪市を訪れていた私は、翌日は地下鉄御堂筋線を北へ、千里中央駅を目指しました。厳密には地下鉄線は江坂駅までで、その先は北大阪急行線となりますが、列車はすべて相互直通運転を行っています。1970(昭和45)年に開催された日本万国博覧会への足として開業した同線は、我が国における代表的な大規模ニュータウンである千里ニュータウンへのアクセス線ともなって、今日における大阪大都市圏の主要な鉄道線の一つとなっています。
新御堂筋の中央を高架橋で走ってきた鉄路は、中国自動車道の手前で地下へと潜ります。千里中央駅は地下駅であるものの、ホーム上は吹き抜けのようになっていて、ホームの階上を取り囲むように飲食店などが入るスペースが配置されています。天井には井桁状の梁に照明が取り付けられて、地下駅ながら全体的には開放的な空間が確保されています。地上に出ますと、「せんちゅう(千里中央の略称)パルをはじめとした商業施設が集積した、高密度なショッピングモールが目を引く風景が広がります。大阪都心への良好なアクセス性や日常生活の利便性などから、近年は高層マンションの建設も進んでいて、千里中央エリアが近隣における商業的な中心として現在進行形で成長を続けていることが見て取れました。そうした現代的な町並みを南へ、大阪モノレールの駅へと歩を進めます。 モノレールの千里中央駅までの動線は軽やかなデザインの歩道で整えられていまして、真夏の熱量そのままの残暑の下でも直射日光に当たることなく移動することができました。大阪を中心に高度に市街化が進んだ大阪府下にあって、千里丘陵を含むいわゆる北摂エリアは、北にたおやかな山地を背にし南に低平な大地を望む、古来より人々にとって暮らしやすい土地でありました。東西を連絡する狩猟名交通路の経路ともなった要衝は、大阪大都市圏が成熟した現在では、郊外における良好な住宅地として確固たる地位を築いています。自然豊かな丘陵の地域性を残しつつも、優良なニュータウンとして開発された風景を、モノレールの車窓から概観しました。モノレール線は名神高速と寄り添うように進んでいるため、交通の要路としての地域性も濃厚に感じさせています。
万博記念公園駅前から続く歩道からは、大動脈たる高速道路と、南側一帯に開発された商業エリアである「「EXPO CITY」、そして万博そのものを象徴する存在である「太陽の塔」とが目に入る、ドラスティックな風景が目の前に展開していきます。1970年の万博の開催中、途切れることのなかったであろう喧噪は、その祭りの後、多くの人々が酔いしれたであろう感傷を溶け込ませた郊外型の園地へとその身を昇華させていたのでした。残暑の残る中、ゲートをくぐり、公園内へ。公園の中央口のゲートの上には、「自然文化園」のアーチが掛けられていました。自然文化園は、万博終了後にパビリオンの施設を撤去し、跡地に草花や樹木を植栽、森から里山、そして芝生へと移り変わる警官を整えた、同公園における中核的なエリアです。太陽の塔もこの区画に存在しています。間もなく万博から半世紀を経ようとしている時間軸のなあにあっても、変わらぬ存在感によって園内を照らす記念碑たるそのモニュメントに圧倒されました。 万国博覧会当時の出展施設であった鉄鋼館を利用し、博覧会の記念館として、2010(平成22)年に開館した「EXPO’70パビリオン」を見学した後、万博公園内を散策します。9月とはいえ、刺すような夏の日光が降り注ぐ園内は歩くだけでも汗が噴き出すような有様で、また、この日の午後には帰路に就く予定にしていたことから、およそ1時間ほどの万博記念公園での滞在となりました。太陽の塔内部の観覧は事前予約制であったため、この日は内覧することはできませんでした。太陽の塔は正面から見たフォルムはよく知られていますが、背面には過去を表わした「黒い太陽」と呼ばれる顔もあって、高度経済成長期を経て、物質的な豊かさを貪欲に求めてきた時代から、精神的な豊かさを希求する新たな局面へと遷移しつつある当時の時代背景を、それは彷彿とさせていたように感じました。
千里中央から万博記念公園へ、大阪北部における郊外の現在を概観した今回の訪問は、万博という一大エポックを受けて大都市圏郊外における良質な住宅地として変容を遂げた地域の躍動を、しなやかに体感することができる時間であったと思います。今後時間が許せば、より長い時間をかけて地域を歩くことができればと切望します。 |
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