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シリーズ・クローズアップ仙台
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#106 太白山とその周辺の自然 ~区名の由来となったランドマーク~ 2018年7月16日、一番町・片平丁周辺を概観した後、県庁市役所前バス停より山田自由ヶ丘方面の宮城交通バスに乗って太白区へ移動しました。仙台市街地のバス路線は、市バスが大学病院近くの交通局から、宮城交通は県庁市役所前を拠点に、仙台駅前を経由しつつ向かうバスが比較的多く設定されている傾向があります。乗車したバスも、仙台駅西口のバスプールに入ってから愛宕大橋で広瀬川を渡り、国道286号の北側を通過する、秋保街道の旧道をバスは進みました。やがて太白団地へ向かって丘陵を駆け上ると、新興団地が開発された一角のバス停で下車し、「仙台市太白山自然観察の森」へ、標識に従い歩を進めました。
太白区東部、名取川左岸北方に展開する丘陵地は、広瀬川が峡谷を形成する青葉山丘陵の南側にあたります。その東側の八木山丘陵は、市街地に近接することもあって1960年代頃から宅地開発が進み、その開発の波は西へと進捗し、東北自動車道のあたりまでをほぼ覆い尽くす形となっています。太白団地西側の道路を歩き、東北自動車道の高架下をくぐりますと、住宅地は途切れて、緑豊かな森が残される一帯へとたどり着きます。このあたりは仙台市が自然環境保全地域に指定していることもあり、丘陵地のかつての植生が良好に保たれていまして、自然観察センターを拠点に、植物や野鳥、昆虫を観察できるための散策路などが設けられています。 コナラやクヌギなどの落葉樹が鮮やかな木陰をつくる散策路を上って進みますと、やがて周囲は人工的に植林された杉林へと移り変わります。途上に設置された案内図を頼りに山道をさらに歩いて行きますと、一対の石灯籠と鳥居があって、古社の参道の入口然とした場所へと到達しました。ここが、太白区の区名の由来となった太白山の山頂への入口となります。太白山は標高約321メートルで、仙台平野の広い範囲で視認できる、特徴的な三角錐状の山容を見せています。山頂には貴船神社が、そして中腹には生出森八幡神社が鎮座することから、それらの神社への参道を上っていく形となります。
ヤマユリがここかしこに咲く山道を進み、生出森八幡神社の横を通過しますと、徐々に山道は勾配を増して、岩場や木の根がはびこるきつい坂道を注意しながら上っていくこととなります。山は概ね木々に覆われていまして周囲への視界はあまり利かないのですが、時折木々の間から、麓の住宅団地の様子などを眺望することができます。やっとのことで急傾斜を登り切りますと、小さな鳥居がありまして、その先に貴船神社の小さなお社が祀られる山頂に到着することができました。低山故に山頂も森に包まれているため、360度の眺望を得ることはできないものの、東側の八木山方面や北側の愛子盆地方面へは部分的に視界が開けている場所もありまして、丘陵地を切り開きながら郊外化が進展してきた仙台市街地の概況を確認することができました。 山頂からの下り道は、太白団地方面へ抜けるルートを、随所に設置された標識を手がかりに下っていきました。山道は時折草で覆われるなどややあれている部分もあったのですが、太白二丁目と同三丁目とを分ける幹線道路を西へ延長した部分にあたる、東北自動車道を跨ぐ橋へと何とか至ることができました。橋は車道として供される予定で作られたものと思われますが、供用されることなくそのまま放棄されていまして、開発自体が棄却されたのか、あるいはそうではないのか、その場では判別をすることはできませんでした。太白団地内のバス停からバスに乗り仙台駅前へと戻りました。
仙台市南西におけるランドマークとして特徴的な山並みを見せる太白山は、古来から信仰の対象とされ、時代を超えて仙台地方に生きる人々親しまれる存在でした。緑豊かな山麓の景観と、その東麓のすぐそばまで進展した宅地化の態様は、高度経済成長期の激しい都市化と、その後の低成長期における環境保全の再評価との均衡がちょうどこの場所で図られたことを物語ってました。東北自動車道に架橋されそのまま供用を見ることのなかった橋の廃墟がそのことを象徴していたように感じられました。 |
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