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#21 根白石界隈 〜川と、森と、大地と〜 仙台の大地は、夏のぎらぎらした日差しのもと、ただしずかに佇んでいるように感じられました。泉区の西部、七北田(ななきた)川にむかってゆったりと広がる水田や、背後の段丘上の林は、穏やかに輝いていました。この日は日曜日。目的地であった根白石まで直接向かうバスがなかったようなので、近くの団地行きのバスに乗車し、七北田川手前の鼻毛橋バス停にて下車、田園風景の中をゆっくりと歩き始めました。泉中央あたりでは河川敷が広がる七北田川も、このあたりでは、豊かな木々を両岸にふんだんに纏っていまして、水はヤナギや笹のヴェールの下を流れていきます。葛の蔓もかなりはびこっており、赤紫の花をつけている個体も見られました。川の近くの耕地には、茶豆が栽培されていました。生産調整(いわゆる減反)の結果でしょうか。
水田がさわやかに展開する小角(おがく)地区を歩きます。今年は猛暑ということもあり、冷夏だった昨年とは一転して、稲の生育も順調のようです。すでに稲穂でいっぱいです。側溝には水がさらさらと流れていきます。付近には自家消費すると思われる野菜の畑もあって、ナスやサヤインゲン、トマト、長ネギ、茶豆などの多種多様な野菜が栽培されていました。白藤観世音の前を過ぎると、七北田川が寄り添ってきて、根白石地区へと至ります。
根白石の集落は、いくつかのクランクを含む通りを中心として発達しています。バス停名にもなっている「下町」「町頭」などの字名が見えまして、この地域では抜きん出た中心性を持つ地域であったことが分かります。通りに面して、昔ながらの商家が軒を並べている場所もあり、鉤の手状の道路の景観とともに、ローカルな商業中心集落の往時を思い起こさせるような雰囲気でしたね。この日は、仙台七夕祭りが開催されており、ここ根白石でも家々の軒先に、鉢植えされた笹に七夕飾りを飾ったものが置かれていまして、市街地の豪勢なものとは一味違った、慎ましやかな七夕の美しさを演出していました。
根白石界隈は、広域中心都市仙台の都市化の波を濃厚に反映させる泉区の中にあって、ひときわこの地域の原風景を今に留めるエリアとなっているようでした。のびやかな田園風景、ゆるやかな丘陵景観、そして地域を見つめる泉ヶ岳と七北田川などの豊かな自然。仙台の、泉の貴重な資源として、今後とも大切にしていってほしいな、と心より思います。 |
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