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シリーズ・クローズアップ仙台

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#77 新坂通周辺を歩く 〜寺院が集積する穏やかな地域〜

 2011年5月21日、半子町の藤を見た後は、再び東へ土橋通と北八番丁の交差点へ戻り、そこを北へ折れて先にご紹介した林子平の眠る龍雲院(曹洞宗)へ行ってみました。ここから東の北八番丁(柏木二丁目と同三丁目との境界の道)の北側には寺院が集まっていて、これから進もうとしている南北の新坂通周辺や、以前ご紹介した北山地区と合わせて、仙台城下町北西の寺町が形成されています。かつては人家が少ないのびやかな台地上の寺町であったと想像される地域は、参道の両側にまで住宅が埋まって、大都市近郊の閑静な住宅街となっています。

龍雲院

龍雲院
(青葉区子平町、2011.5.21撮影)
北八番丁

北八番丁の景観
(青葉区柏木三/二丁目、2011.5.21撮影)
稱覚寺

稱覚寺
(青葉区柏木三丁目、2011.5.21撮影)
正圓寺

正圓寺
(青葉区新坂町、2011.5.21撮影)
大願寺

大願寺
(青葉区新坂町、2011.5.21撮影)
荘厳寺

荘厳寺(山門は片平丁にあった武家屋敷のものの移築)
(青葉区新坂町、2011.5.21撮影)

 龍雲院の造営は1597(慶長2)年。伊達政宗の手に拠るものです。遡って1591(天正19)年の豊臣秀吉による政宗の米沢から岩出山(現・宮城県大崎市岩出山)への鞍替えを機に、仙台進出を心に秘め、その先遣としての開山であったと伝えられています。林子平の墓は国指定史跡として佇みます。城下町周辺の守りとして主に足軽が居住したという北八番丁を歩きます。伊達政宗正室愛姫三男竹松丸(7歳で夭逝)菩提寺の江巌寺(曹洞宗)や、「北山五山」の一つとして知られ、伊達家始祖朝宗の菩提寺である満勝寺(臨済宗)など、伊達家ゆかりの寺院も多い町並みは宅地化されており元武家地としての風情はほとんど感じられません。

 杖銀杏の名があるイチョウの木がランドマークとなっている稱覚寺(しょうかくじ、浄土真宗)や2代藩主忠宗お手植えの松が見事な樹勢を見せる正圓寺(浄土宗)の結構を確認しながら、大願寺(浄土宗)門前へ。唐破風が印象的な山門は、1709(宝永6)年に造営された仙台藩四代藩主伊達綱村夫人仙姫の墓所の門を、明治時代初期に移築したものです。伊達政宗薨去の後、遺骸は経ヶ峰(瑞鳳殿)に埋葬され、原野であったこの地で葬礼が行われました。境内には葬礼後空の棺を焼いたものを埋めて円塚とした「灰塚」が残されています。北山から新坂町にかけてのこのあたりは、仙台城下町において伝統的に死者を弔い、見送る場所であったように思います。葛岡に移転するまでは市斎場もこの地にありました。静かな住宅地となって、さらに都市化の波が北山の丘陵を飛び越えて国見や中山方面へ拡大した現在にあっても、この地域には多くの寺院や緑が残り、そうした威風を今に残していると言えるのかもしれません。

昌繁寺

昌繁寺
(青葉区新坂町、2011.5.21撮影)
充國寺門前

充國寺門前の景観
(青葉区新坂町、2011.5.21撮影)
永昌寺

永昌寺
(青葉区新坂町、2011.5.21撮影)
新坂通

新坂通の景観
(青葉区新坂町、2011.5.21撮影)
知事公館

県知事公館・正門
(青葉区広瀬町、2011.5.21撮影)
青葉山眺望

県知事公館から広瀬川、青葉山を望む
(青葉区広瀬町、2011.5.21撮影)

 大願寺の門前を東へ進み、突き当たった南北の通りは新坂通です。北山の輪王寺門前から南へ、途中東北大学星陵キャンパス(大学病院・医学系キャンパス)で現在は分断されているものの、広瀬川端の宮城県知事公館前まで続く通りです。1695(元禄8)年に通りの南端から澱橋方面へ、角五郎へ続く坂道がつくられて「新坂」と呼ばれたことから、その新坂へ至る道という意味で「新坂通」の名称が生まれたものです。周囲の町名「新坂町」も通りの名前からの命名です。新坂通に沿って並ぶ永昌寺(曹洞宗、政宗の生母義姫(保春院)の灰塚がある)や充國寺(浄土宗)、昌繁寺(浄土宗)、荘厳寺(浄土宗)などが寺町としての情緒を醸し出していました。

 新坂通を南へ進み、東北大学医学部キャンパス内に「狼(おいぬ)坂」と刻まれた石柱を見つけました。八幡太郎源義家が後三年の役のための奥州下向の折、万民を苦しめていた狼を退治し埋めた場所と伝えられているとのことです。キャンパスを縦断し、繁華な北四番丁(国道48)号を渡り、再び新坂通を歩いて知事公館前に到達しました。公館の正門は仙台城にあった門を移築したものとされ、仙台城の建造物の唯一の遺構です。公館の敷地内からは広瀬川や眼下のへくり沢の谷間、対岸の青葉山の緑などを美しく眺望することができました。


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