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シリーズ・クローズアップ仙台
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#97 シリーズ地下鉄東西線を行く(9) 〜青葉通一番町駅から東へ〜 2015年12月21日、地下鉄東西線の諸駅をめぐりながら八幡エリアの中島丁・角五郎地区へと進んでいた私は、北二番丁から西公園通、前日にSENDAI光のページェントを見た定禅寺通を経て多くの人々で賑わう一番町を通って、地下鉄青葉通一番町駅へと至りました。駅のある青葉通一番町交差点周辺は、地下駐輪場など駅に関連する施設の工事が一部進捗中でしたが、低層棟に商業施設「シリウス一番町」の入る超高層マンション(ザ・仙台タワー)も完成するなど再開発も進んで、仙台都心における人の動きに変化が起きつつある現場を確認しました。
青葉通一番町駅からは東へ、ホームドアの設置されたホームから荒井行きの電車に乗車しました。開業間もない真新しい車両は、4カ国語で表示される液晶モニタも設置されて全体的にすっきりとした印象です。ただ、乗車した午後2時前の時間帯、都心から離れる方向の便であったとはいえ、乗客数が多い状況では内容に見えたのが気がかりでした。線だ頴娃駅から西側と比較して相対的に開発が進んでおらず、住宅地域というよりはどちらかというと卸町に代表される流通業などの産業系の土地利用がメインと目される沿線は、地下鉄の車両を埋める定員を得るにはまだ力不足であるのでしょうか。バス路線との棲み分けや、さらなる周辺地域における都市基盤の成熟が期待されます。青葉通一番町駅からはおよそ15分の所要で荒井駅へと到着しました。 東西線の東の起点である荒井駅は、仙台東部道路の仙台東インターチェンジの近く、土地区画整理が進む荒井地区の東寄りに位置しています。広大な駅前ロータリーと、モダンなファザードが印象的な駅舎があるほかは、まだまだ空き地の多い駅前は、一部で商業施設の建設も計画、一部で着工されている様子で、震災復興のための住宅地としての側面も併せ持っていることもあいまって、仙台市東郊における新たな拠点的な地域となる素地は十分に感じさせました。駅前ロータリーの中央には、「浪分櫻(なみわけざくら)」と名付けられたしだれ桜が植樹されています。東日本大震災を祈念し後世に伝えるため、津波の到達地点周辺であるこの場所に植えられたものであるといいます。厳寒のこの日、その桜は冬空にただそのしなやかな枝を身に任せていまして、来る春の輝きに備えて、静かに力を蓄えているようにも感じられました。駅構内には「せんだい3・11メモリアル交流館」も設けられており、震災を知り学ぶとともに、地域の記憶を語り継ぐ交流拠点として供されています。
荒井駅前からは、住宅地そして商業地として急速な成長を見せる荒井地区の様子を確認しながら南へ歩き、イグネの景観で知られる長喜城地区周辺へと歩を進めました。北や東に加え、西側にも大型商業施設を中心とした開発が進み、三方から都市化の波が迫る同地区も、ここだけは別世界のように古くからの農業集落としての佇まいを残していました。東西線の通るエリアでは、全国的にも高い地価上昇率を示した地区が少なくありませんでした。この地域の伝統的な景観である茫漠とした田園風景と、集約的な都市機能の配置による再開発とのバランスをどのように保つか、東西線の東側における最大かつ最重要の命題であるように感じます。今後も地域の変化を注視していければと思いました。 |
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