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東京優景 〜TOKYO “YUKEI”〜
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#45 東京リレーウォーク(29) 〜渋谷から新宿へ、失われた川筋を追って〜 (渋谷区・新宿区) 2011年11月5日の午前8時前、2日前の11月3日に目黒から渋谷へ到着していた続きのフィールドワークを行うため、渋谷駅東口から歩き始めました。渋谷はその名のとおり谷にできた町で、地下鉄銀座線がそのまま地下を走ると急勾配となるため高架橋で谷を横断し、デパートの3階部分にホームを持つことからもその谷の深さを実感することができます。道玄坂を上った先にある目黒川と同じように、この谷の地形は渋谷川という河川の浸食によって形成されました。渋谷川は渋谷駅の南でその姿を現して南へ流下していますが、駅から北の部分はいわゆる暗渠となっていて、その跡をたどることができます。訪問時点では東急東横線の地下化工事(地下鉄副都心線との相互直通運転のため)や、複合商業施設「渋谷ヒカリエ」の工事も行われていました。現在でも進行している渋谷駅周辺の再開発の胎動を感じながら、かつての渋谷川の流れを跡付けました。
道玄坂を東へ延長した部分である宮益坂の景観を一瞥しながら明治通りを進み、宮下公園交差点の北あたりから北北東に入る道筋が渋谷川の暗渠にあたります。現在は「キャットストリート」と呼ばれるエリアとなり、北の表参道・原宿エリアへと続くアパレルショップが集まる街を形成しています。キャットストリート辺りのかつての地名は「穏田(おんでん)」。渋谷川もこの付近では「穏田川」の名称で呼ぶことが多かったようです。葛飾北斎「富嶽三十六景」の「穏田の水車」で知られるように、穏田川には多くの水車がかかり、彼方に富士山を望むのびやかな田園風景の広がる土地でした。キャットストリートの所々で通りに沿った細い路地があるのは、穏田川の蛇行を反映したものです。ケヤキ並木が美しい表参道の北に歩る神宮前小学校の門扉には水車が象られていて、地域の歴史を今に伝えていました。 有名ブランド店を筆頭にカフェや雑貨店などが立ち並ぶ表参道は、東京を代表する繁華なショッピングエリアです。その名のとおり、明治神宮の造営に際しその参道として1919(大正8)年に完成しました。明治神宮は明治天皇と昭憲皇太后を祭神とする神社で、およそ70万平方メートルという広大な境内はその鎮座にあたり、全国から献木されたおよそ10万本を植栽した人工林によって構成されています。その多様な樹層は豊かな生態系を育み、都心における貴重な自然環境として親しまれます。渋谷と新宿という副都心に挟まれ、若者の流行の発信源として今日も多くの人出でにぎわう原宿界隈の喧騒とは対照的な森閑とした空気に触れることができました。
表参道に戻り、キャットストリートから北へ続く旧穏田川の暗渠上の道路を進みます。歩道にはかつての橋の橋柱が残されていて、ここがかつて川であったことを今に伝えています。道はやがて外苑西通りに合流し、国立競技場や明治神宮野球場(神宮球場)、東京体育館などのある神宮外苑を北へ川は続いていました。現在の渋谷区と新宿区の区境が概ねかつての河道を反映したものであるようです。その区境を辿りますと、新宿御苑内の玉藻池に行き着くように思われます。江戸時代の古地図にはさらに遡って、現在も新宿四丁目に鎮座する天龍寺の境内の池を水源として描いているものもあるようです。穏田川の最上流部は現在新宿御苑の緑地を除いては世界一のターミナル新宿駅前の一大市街地の只中となっています。新宿御苑の北側には、玉川上水・内藤新宿分水散歩道が整備されており、往時の玉川上水を忍ばせる流れが再現されています。多摩川上流羽村堰から引き入れられた玉川上水はこの散策路付近を通って四谷大木戸門(四谷四丁目交差点)に至り、そこから地下水路となって江戸市中に飲料水を供給していました。そのため四谷大木戸門には水番屋が設けられ監視を行っていました(現在も水番屋跡地には都水道局の営業所が存在します)。余剰となった上水の水はこの番屋から渋谷川に排水されていたようで、渋谷川は比較的水量の豊富な流れでありました。 谷底の町渋谷から台地を削る川筋を辿り、尾根筋の町新宿へ至る道筋は、江戸に近接する田園地帯が明治以降都市化が進み、新宿や渋谷が郊外へのターミナルとして急成長し副都心化する中で目覚ましい変化を遂げました。大都市東京の中心的な繁華街となった神宮周辺地域は、随所に昔の面影を残しながらも、常に流行の先端を行く結節点として、多くの人々を引き付けています。 |
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